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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
アンデッド村開拓記編
113/151

102

「杏奈さんが死んで、お父さんは悲しんでいたよ。私も。……そちらのお母さんのことは知らないけど」


「そうですか……」


「こっちの私とは親しいみたいだけど、どう。リアルの話はしたりしないの?」


「しませんねー。そっちはどうでした。二年ほどは一緒にこのゲームしてたんですよね、しましたかリアルの話」


「……しなかった」


「じゃあやっぱり、適度に距離を置いていたようですね」


「そうだね。そのくらいが丁度良かったと思ってたし、今でも良かったと思う」


「……」


「でも、もう少し知っておきたかった。杏奈さん……私と半分、血の繋がったお姉さんのこと」


「そう、……ですか」


「ゲームクリアしたらひとりぼっちでしょ? たまには会いに来てあげるよ」


「それはありがたいですね」


「じゃあ始めようか、魔王ツヴァイとして、ヒントは先にあげないと死に戻っちゃうね」


「ああ、こっちは負ける気はないんですけどね。でも先に聞いておかないと万が一がありますからねー」


「うわあ。勝てる気でいるんだ。まあアインスを二度も下したらその自信も仕方ないけどね」


「そっちは完全にネクロマンサーにメタ張ってますけど、勝ち筋は完全にゼロじゃないと思ってますよ」


「どうかな。……ヒントは今のファナには大したことはないのだけど……ルフレミラントに直行せずに南に逸れると、トロールの集落がある」


「トロールの集落……支配地ですか?」


「平たく言えばそう」


「そんな飛び地、あっても持て余しそうですが……ああでも手に入るなら手に入れておくのも、悪くないですねえ」


 支配地はダンジョンの奥などにも存在しているらしく、既に攻略組『エクソダス』も支配地をひとつ手に入れています。

 みっつの支配地、それもアドリアンロットとメオントゥルムを繋ぐ道路と宿を整備した経済圏をもつ我らが『グレイブキーパー』が一歩も二歩も先を進んでいますが。


 ……トロールテイマー・レブナントに牧畜をさせるのも悪くないですね。


 そんな考えも浮かんだところで、ツヴァイからユニオン戦の申請がありました。


「ユニオン戦ですか? 野良試合ではなく?」


「ドラゴンブレスが乱れ飛ぶと互いに相打ちに終わるだけだと思う」


「あ、確かにそうですね。メンバーは固定の方がいいですか。これ勝ったらユニオンポイントがもらえますよね?」


「もちろん。メンバーはそちらに合わせる」


「ではベストメンバーを選ばせてもらいましょう」


 スペクター・ヴァイカウントのヨサク、スペクター・フェンサーのムラマサ、スペクター・ガーディアンのササキ、デュラハン・デュアルライダーのセルフィ、フライング・ドラゴンクロウのグラインダー、レイス・ソーサレスのマドカ、スペクター・バンカーのロビンをパーティに選びます。

 タツヤをメンバーに入れたい気持ちはあるのですが、どうせ魔法乱舞でボロボロにされるなら、少しでも合体数の多いメンバーにすべきでしょう。


「ではこちらはこれで」


「概ね想定通り。こちらはこれで」


《デビルサモナー“魔王”ツヴァイ

 Lv32 鎚5 火魔法15 地魔法5 飛行 知力強化2 精神強化2 即死耐性2 悪魔同化》


《レッサーデーモン

 Lv32 爪9 尻尾9 飛行6 地魔法7 水魔法7 火魔法7 風魔法7 全魔法耐性9》


《ケルベロス

 Lv32 牙7 爪7 尻尾5 火の吐息5 毒の吐息5 敏捷強化7 火耐性5 毒耐性5 闇耐性5》


《マンティコア

 Lv32 牙7 爪7 尻尾7 毒5 飛行5 毒の吐息5 毒耐性5》


《バジリスク

 Lv32 牙6 爪6 地魔法10 石化の魔眼10 斬撃耐性5 衝撃耐性5 地耐性9》


《オルトロス

 Lv32 牙6 爪6 火の吐息4 毒の吐息4 敏捷強化4 火耐性4 毒耐性4 闇耐性2》


《ダークトロール・テイマー

 Lv32 鞭8 調教7 鼓舞7 狂乱9 筋力強化7 生命強化6》


《ドレイク

 Lv32 牙7 爪7 火の吐息7 飛行7 生命強化5 火耐性5》


 ……うわあ。

 本当にネクロマンサーにメタ張ってますよこの魔王。

 夜目や暗視がないのは、そもそも悪魔だからアンデッド同様、見えるということでしょう。


 しかしこれは不利ですね。

 レベル、スキル数は多分こちらと同等なのでしょうけれど、向こうはこちらに合わせて好き勝手いじってきている様子。

 アインスはまだ勝てるように穴を用意してくれていましたけど、ツヴァイは完全に勝たせる気がないようですね。


 まあそれでも、ほんの少しだけ勝機があるとすれば……。


 余り気は進みませんが、試すだけ試してみますか。


【これよりユニオン戦『グレイブキーパー』VS『魔王軍』を開始します】

【バトル、スタート!!】


「全員、散開! シャドウリープ!」


「読めてる。インフェルノ!」


 ゴウ! と地獄の炎が私たちのいた場所を襲います。

 魔法に弱いスペクターやレイスが、余波だけでHPをゴリっと削られるのですから堪りません。


 敵が前進してきます。

 いずれも魔法攻撃能力を持つ魔物ばかり。

 いや、ダークトロール・テイマーは周囲の魔物を強化するために入れられているようですね。


 なんというか、


「大人げないですよ香奈美ちゃん。ドラゴンテイル!」


 尻尾にSPを4点注ぎ込みます。

 更に杖にSPを2点。


 これが意味するところは……以前のユニオン戦でルリさんに仕掛けた戦法のさらにえげつないアッパーバージョンです!


「エルダー・リッチ同化!」


「ぬ、悪魔同化!」


《レッサーデーモン“魔王”ツヴァイ

 Lv32 鎚5 火魔法15 地魔法5 飛行 知力強化4 精神強化4 即死耐性2 全魔法耐性3》


 案の定、魔法能力と魔法耐性しか伸びていません。

 はいまず尻尾!


 シュルン、べち!


「痛っ」


 そして杖!


 シュッ、ガス!


「!?」


 さらに尻尾! 杖! 尻尾! 杖!


「て、痛い、ちょ、待って!」


 バリバリの魔法戦で押し切るつもりだったツヴァイは、まさかの近接戦闘に対応できません。

 というか近接戦闘用の鎚で防御を試みるも、杖はともかく、鞭のようにしなる尻尾を防ぐことはできないのです。


「いいえ待ちませんよ! リジェネレイト・アンデッド!」


 メニューから戦闘不能になっている味方を復活、軒並み減っている味方のHPバーが不安ですが、敵を釘付けにしておいてもらわなければ、こちらの邪魔になりますからね。

 ツヴァイは私ひとりで仕留めます。


「く、ファイヤ、アロー!」


 隙をついての魔法攻撃。

 さすが魔王ツヴァイ、そのくらいはするでしょうとも。


「レジスト・ファイヤ、レジスト・アース!」


 杖と尻尾の連撃の合間に、私も防御を織り交ぜてツヴァイのHPを削ります。


「リペア・アンデッド!」


「痛っ、もうなんなの!! ファイヤストーム!」


 自分ごと薙ぎ払うように火炎の竜巻が私たちを襲います。

 しかし残念ながら、エルダーリッチはスペクターでもレイスでもないので、魔法に弱いなどという弱点はありません。

 むしろ精神強化が上昇するため、魔法には多少の耐性がつくほどです。


 とはいえ、渦中にいればダメージを一方的に受けるので、一旦、下がりましょうかね。

 向こうも仕切り直したいようですし。


「シャドウリープ!」


 まあ仕切らせてなんか、あげませんけどね!


「ちょ、しつこい!?」


「逃しませんよ~」


 鞭のようにしなる尻尾は回避するしかありません。

 鈍重なハンマーで防げるのは杖の方だけ。

 二回に一回、ほぼ確実に攻撃が決まるのですから、ダメージによる痛みと硬直で魔法を唱える隙をほとんど与えません。


 おっとしかし味方は劣勢ですね。

 さすがに魔法に弱い面々に対して、魔法攻撃の手厚い魔物を当ててくるだけのことはあります。

 スキル数も変わらないとくれば、単純に相性差が大きく出ますね。


「リジェネレイト・アンデッド!」


 杖と尻尾による連撃の合間に、魔法で味方を支援していきます。

 ちょっと忙しいですが、これができなければ負けてしまうのです。


「っらっせぇい!!」


「わっ!?」


 キレたツヴァイがハンマーで杖を跳ね上げ、そのままハンマーによる追撃を敢行してきました。

 ようやく気づいてしまいましたか、接近戦なら分があると。


 実のところ杖のスキルレベルはエルダーリッチと同化しても第四段階、尻尾が第五段階ではあるものの、ふたつ合わせても純粋な戦闘能力では鎚の第五段階といいとこ五分でしょう。

 どうしても使い慣れない尻尾では攻撃回数というか攻撃の間隔が長めになってしまいますからね。

 そこを杖で補っていたのですが……ツヴァイが鎚を振り回して来たら厄介なことになります。


「ドラゴンスケイル!」


 とはいえ、ここまで来て負けるのは有り得ません。

 とっくに勝敗分岐点は過ぎているのです。


 もうちょっと気づくのが早ければ、味方が敵を釘付けにしている間にツヴァイのHPを削りきれなかったでしょうね。


「……はい尻尾」


「く、しまった!」


 シュルリとハンマーの間を抜けて、ツヴァイの頬を張り倒します。


【ユニオン戦は『グレイブキーパー』の勝利です】


 いやあドラゴンテイル、強いですね。

 尻尾スキルをくれたアインスには感謝しかありません。


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