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【ハイゴブリン・ロード“統率者”ディルコロナが討伐されました】
【アドリアンロット北部山嶺地帯北東部を完全解放しました】
【アドリアンロット北部山嶺地帯北東部を支配下に置きますか?】
イエス!
もちろんですとも!
……いやー危なかったですね。
最初に数で負けているのに、メンバーを突っ込ませたのは完全に悪手でした。
手持ちのドラゴンも結局、使い切れていないし。
パーティ枠には余裕があるので、一体ずつでも打ち込んで行くのが良さそうですね。
特に毒の吐息と猛毒の吐息はアンデッドには無効ですので、突入の際の露払いに最適です。
さてあれだけの激戦だった割に、私のレベルはひとつしか上がっておりません。
まあ最初の取り巻きを全滅させた時点で優勢に傾いていたので、それだけの相手だったということでしょう。
苦戦は私のミスだった、と。
さてさて、まずは新しい支配地の掌握ですが、その前にクリエイト・アンデッドを試しましょうか!
遂に使えますよ、今回はなかなか良い手駒が手に入りました。
ハイゴブリン・ロードのドロップ品をひとつ選択すると、……あ、全部じゃないと駄目ですかそうですか。
ケチっては使えないようなので、全部指定していざ、
「クリエイト・アンデッド!」
むくり。
《ハイゴブリンロード・レブナント“統率者”ディルコロナ
Lv60↓ 剣9↓ 盾4↓ 魔法剣3↓ 火魔法7↓ 闇魔法3↓ 疾走3↓ 士気高揚5↓ 統率9↓》
レブナント、と名前について、ステータスに下方修正がかかっていますね。
ロードは無表情で無言です。
確かレブナントは「戻る」とかそういう意味で、ファンタジー用語的には「死体が起き上がった」状態を示す言葉ですね。
用法はともかく、稀にゲームなどでも見かける単語です。
このまま使ってもいいのですが、パーティから外すと消滅してしまうのが難点です。
いくら強くても、今回のようにパーティメンバー総入れ替えなどができないのは不便ですし、ロストするのはもったいないですよね。
あとこの支配地の管理を任せるのに適任そうなので、住人コレクションに加えましょう。
ぽちー。
パーティから外れたロードは、しばし戸惑った後、玉座に戻ってちょこんと座りました。
あ、やることが何もないですね。
住人を増やさねば。
私はボス戦の取り巻きたちのドロップ品を順番にクリエイト・アンデッドしていきます。
あれから増援が更に一回あったので、ナイトが二十四体、ソーサラーが八体、ヒーラーが八体、アーチャーが十四体ですかね。
いきなりヤツハカ村を上回る大所帯です。
しかし悲しいかな、こいつらは戦闘しか能のない近衛兵ばかり。
おっと、ここが支配地なら住人召喚陣がどこかにあるでしょう。
レベルアップ分の召喚を済ませておきましょうか。
住人召喚陣のある部屋は地下だったようで、玉座の裏から階段を降りたところにありました。
【スケルトンを召喚しました】
労働者ゲットです。
しかし一体では心もとないですね。
やはりここは、ヤツハカ村から何体か移住させた方がよさそうです。
できれば行き来が楽になるように道路を敷設したいのですが、ポイントはまだネクロマンサーギルドを招致できるほど溜まっていません。
うーん。
よし、ひとまず一時間ほど休憩にしましょう。
MPの回復も兼ねて、ヨサクにロードを指導してもらいましょうかね。
手持ちのドラゴンを除いた全召喚獣を住人として配備します。
「ヨサク、ここはロードに任せるつもりです。あとでヤツハカ村から住人を何人か移住させて、支配地として整えてください」
「…………」
さしものヨサクにも難題なのでしょうか、一瞬だけ固まった気がしますよ?
そういえばゴブリンの従属志願がありませんでしたね。
奴らは小規模な集落ごとにボスがいるので、今更一番上がいなくなったところで、わざわざやってくることなどないということでしょうか。
もしかして集落を回って従属を促せば、労働力が手に入るのかもしれませんね。
ま、ここがアンデッドによる無法地帯であっても私は困らないので、そこまでの手間はかけませんが……。
それより時間がありません。
どうも掲示板を見るに、支配地について考察が始まっていますよ!
あ、カナコさんが私は恐らく支配地漁りをしている、とか書き込んでます。
なんてことを!
まったくその通りなんですけどね!?
さあさあ、アドリアンロット北部山嶺地帯北東部も支配下に置いたので、今度は南東部を切り取りに行きますか。
おっと地名が長いですね、変えておきましょう。
えーと、ヤツハカ城でいいですね。
時間は惜しいですが、一度村に戻って何人か住人を連れて城に戻りますか。
その頃には夜が明けているでしょうから、少し仮眠を取ってから、南東部の探索に行きましょう。
実は疲労がないという事実を知っている、その事自体が私の他のプレイヤーに対する強力なアドバンテージですよねえ。
◆
配備していた召喚獣をパーティと控えに回し、ヤツハカ城を後にします。
そしてやって来ましたヤツハカ村。
まーたなんか発展してませんか、地面が綺麗に均らされてますよ?
そういえば建築大臣がいましたね。
彼女の仕業でしょうか。
発展する分には、まあいいでしょう。
さてまずやることは、帰り道で狩った魔物をクリエイト・アンデッドで住人にすることですね。
やはり一旦、全召喚獣を配備してからドロップ品を選択、呪文を唱えていきます。
「クリエイト・アンデッド、住人ぽちー」
これで三体のグリズリー・レブナントが住人に加わりました。
周辺の森で狩りでもして、ドラゴンインファントの食料を確保して欲しいところですね。
ちなみにジャイアントビーは恭順している連中は友好的な魔物として判定されて、向こうが自主的に立ち去ります。
あれを攻撃したら、多分関係が悪くなるんだろうなーというのは想像に難くありません。
そうでないジャイアントビーと遭遇した場合は普通に戦闘になります。
しかし本物のジャイアントビーがこれだけいるのですから、今更、レブナントのジャイアントビーを住人として配備する意味を見いだせません。
それにドロップ品を全てクリエイト・アンデッドに供してしまうと、現金収入がなくなるため、一部は残していくことも考えなければなりません。
よってジャイアントビー・レブナントは作らないことにしました。
空は既に白み始めており、夜が終わりかけていますからね。
じゃあ、あとのことはヨサクに任せて、私はちょっと寝ますかね。