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眩しい陽の光に思わず目を細めてしまいました。
行き交う人々のざわめきが耳に心地よく、おまけに何やら美味しそうな香りが鼻孔をくすぐります。
まるでお祭りのようですね。
いや実際にはお祭り騒ぎ、といったところでしょうか。
なにせ今日が『幻想と召喚の絆』正式サービス初日。
平日の真っ昼間から、沢山のプレイヤーがログインしているのだから、この賑やかさも当然のことでしょう。
……かく言う私も、今日という日のために一月前から有給休暇の申請を出す抜かりのなさ。
サービス延期になったらどうしてくれようかという不安はこうして無事に解消され、ログインしている訳であります。
さてさて、笑顔満面のプレイヤー諸氏を眺めに来たわけではないので、私も早速、人混みに突入してきます!
いざ、鎌倉!
◆
……いやー、リアル身長準拠のアバターにしたのは、やっぱり間違いだったのではないでしょうか。
現実に戻ったときに若干の違和感があるかもしれません、なんて警告にビビってしまったのは、我ながら小心者としか言いようがありませんね。
ともあれ人混みをくぐり抜けて、なんとか目的地である召喚士組合にやって来ました。
街に数ある召喚士組合の中でも、……うわガラガラですねえ、営業してるのここ? って言いたくなるようなボロい店構えですが、これから私がながいことお世話になる予定の組合なんですよ、これでも。
人気がなくて正式サービスでは実装されなくなったとか、ないですよね?
不安になってきました……。
「頼もうー」
「……」
受付のオジサンはちらりと視線だけをこちらに向け、訝しげに私を見て……無言。
相変わらずの接客態度に、ちょっと安心しました。
NPCが配置されてるってことは、正式サービスでボツになったとかじゃ無いようですね。
「初めまして。私はファナと申します。こちらのギルドに登録したいのですが、手続きお願いしてもよろしいでしょうか」
「……ん」
頭の天辺からつま先まで、二往復くらい私を見てから、オジサンは一枚の羊皮紙をカウンターから取り出して、私に差し出しました。
レベルの低いうちはひとつのギルドにしか登録できないので、既に登録済みのギルドがないかチェックしたのでしょう。
ちょっとデリカシーにかける態度ですが、これが改善されることはないんでしょうね……。
【ネクロマンサーになりますか?】
もちろん、イエス!
さあ、白骨と腐肉のファンタジー、開幕ですよー。
スマホのフリック入力で時間のあるときにちびちび書いているものです。
更新ペースは遅いうえに分量も少なめですが、小説を書く楽しみを味わうために、戻ってきました。