第1章 第15話 無人
「さてと、ついたか。」
目的の体育館を目指して徒歩5分歩き、今、俺達は体育館の目の前にいる。
特に変わった様子はなく、この訳のわからない世界になるまえの状態のままだった。
「きゅい?」
ライムが体育館の前で立ち止まった俺を心配したのか、可愛らしい声をあげながら右肩に乗って来る。
「あら?ライムちゃん可愛いね、ユウト君のことが本当に好きなんだね」
体育館の周りを確認してくるからここでまっててね、と言って行ってしまったユキナが帰って来たようだった。
「そんなもんなのかね?」
「ライムちゃんは優徳君のことを好きだと思うよ、人として」
「人して?あぁ、そうだな」
「ありがとうなライム」
ライムの頭を撫でる?
半液体生物のスライムに頭があるか知らないがまあ、頭でいいだろう。
「きゅいきゅ!」
「クイック?」
「きゅ!」
「わかった、わかった、ごめんごめん」
少しふざけてみたら触手で叩かれてしまった。
「優徳君、速く」
ライムとじゃれついていると、いつの間に移動したのかユキナが体育館の入り口の前に立っていた。
「すまない」
「優徳君、それじゃあ開けるよ、いい?」
「ああ、かまわない」
そう言いながら、俺は手に持った木の棒を握る力を強める。
「3、2、1…………Go!」
ユキナの合図とともに俺たちは扉を開け、中になだれ込む。丁度中央まで走り、回りを確認して状況確認をする。
「モンスター無し!人、見た限りいないぞユキナ」
「こっちもモンスターも人もいなかったよ」
どうやら、ここにも誰もいなかったようだ。人もモンスターも。
「どうやら、いないようだな」
「そうだね」
「とりあえず、食堂に戻るか」
「うん、それがいいと思う」
そして、俺たちは何もいなかった体育館をでて、食堂へと向かうのであった。




