#8 砂糖菓子はお好き?
馬車に揺られ、数分。裏通りで降り、表通りに出た私は、本来の目的を忘れてしまうくらい驚いていた。
「すごい……!!」
「リズ、城下に来られるのは初めてなのですか?」
「ええ。他国や郊外に行くときに通ったりはするけど、こうして歩くのは、初めて」
「そうなんですか。じゃあ、少し街を探索してみますか?」
「いいの!?」
「はい、勿論。だって、今日はリズのために来ているのですから」
「……! そう、そうね。そうよね。私の私用での外出だものね」
初めて出歩く城下は活気があり、人々の喧騒と美味しそうな香りで賑わっていた。
色とりどりの布が並ぶ仕立て屋に、小さく可愛いものが飾られた雑貨店。なかでも目を引いたのは―――……。
「リズ? 菓子屋が気になりますか?」
「え……。あ、あの、えっと」
戸惑っているうちに、レオンの服の裾を掴んでいた手を握られ、菓子屋の扉をくぐっていた。
お店の中はふわふわした飾り付けとお菓子の甘い香りですごくきらきらして幸せな空気が満ちていた。
ガラスの器に盛られているのは、パステルの砂糖衣をまとったアーモンド、クマやウサギの絵柄の銀紙に包まれたあれはきっとチョコレートだろう。
お城にもケーキやチョコレートは山程あるし、もっと贅沢な作りだけれど、ここにあるのは、小さくて、可愛い。
「どれか気に入りましたか? せっかくですし、少し買っていきましょう。」
「……! そうね。えっと、でも、どうしよう……」
だって、こんなに沢山ある中から選べるかしら。マジパンで作られた花籠は繊細だけど、きっと、もったいなくてたべれない。計り売りのカラフルなキャンディも可愛いし……。やっぱり、クマのチョコレートにしようかしら。