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#4 笑顔の少年

まだ日は高いのに、城の陰になった裏庭はひやりと冷たく、芝に降りた朝露は乾ききっていない。刈り揃えられた芝が歩くたびに足首を濡らして革の靴を湿らす。見馴れている城の庭のはずなのに、まるでまったく新しい場所であるかのように、よそいきの顔をして私のことを緊張させた。 早く裏門まで行ってしまおうと足早に裏庭を横切る。既に人払いが済まされているのか、裏門には兵士が二人と私付きのメイド、それに貴族らしい男の子しか居なかった。

「リズ様、護衛の方になります。」

「え……? その子が、護衛なの?」

メイドのもとに着くと、男の子が恭しくお辞儀する。

しかし、私は思わず目を丸くしてしまった。

だって、いかにも貴族か富裕層民といった格好に身を包んだ彼は、お世辞にも頼れる護衛にみえなかったから。

私と同じくらいしかない、男性にしては小柄で華奢な体躯、意志の強そうな琥珀色のアーモンドアイ、その瞳を縁取る長い栗色の睫毛。同じ色の短く切り揃えられた癖毛、色白の小さな卵形の顔に品よくそれらのパーツがならんでいる。

どことなく幼さの残る彼からは、清らかな美しさが滲み出て、周囲の空気を華やがしている気さえする。それほどに、可憐な少年だった。

「お初お目にかかります、レザンナ姫。護衛を務めさせていただきます。その他、御入り用のことがございましたら、私に申し付けて下さい」微笑んだことで少し崩れた顔に、ドキリとする。

これだけで胸を騒がせる初な少女が浮気をしようとしているなんて、やわらかな光で彼女を包む太陽さえ知らないことだった。

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