表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアルで美少女受肉した親友がVtuberを始めるようです  作者: 畑渚


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/26

劇物だった……

「どうだい?君にとっては良い条件だと思うけどね」


 身を乗り出してきたココ先生は、こちらの瞳を覗き込むようにじっと答えを待っていた。


「それは、そうですけど」


「だろう?じゃあ決まりだね」


「いや、待ってください」


「なんだい?」


 俺は一番の疑問点を、何も隠さずに真っ直ぐ伝える。

 これは俺なりのココ先生への誠意である。


「ココ先生側のメリットがないです」


「あー、それを言うかい」


 指摘しなければ、楽して金ももらえてウハウハな関係を築けただろう。

 しかし世の中は等価交換を基本原則とし、Win-Winな関係を目指すべきだ。

 富を集中させるなという話ではない。ただ両者にとって良い関係でないと、長く続く縁にはならないということだ。


 俺はココ先生という良縁を、逃すつもりはなかった。


「先生は今まで自分自身をプロデュースしてきたはずです。SNS運用や企業とのやり取りを吸収させてもらえるとなれば、明らかに俺の差し出せる対価が低すぎる」


「はぁ、たまに君の自己評価の低さに心配になるよ」


「謙虚さを忘れては、波に喰われますから」


「まあそれを踏まえたうえで改めて問おう」


 びしりと指を差しながら、ココ先生は再び同じ言葉を言った。


「僕のプロデュースに興味はないかい?」


「変わらないじゃないですか」


「僕は一度決めたことは貫き通す女だよ」


「じゃあせめて俺を選ぶ理由を教えてください」


「そうだね、まず第一に、君は十分魅力的なプロデューサーだ。特にその目がいい」


「目ですか?」


「物事を俯瞰して、演者のパラメーターや市場情勢、その他諸々を含めて計算できるその目さ」


「俺は俺が思うがままに突き進んでるだけですよ」


「それが当たるのだから君はすごいんだよ」


「まぐれですけどね」


「運も実力のうちさ。それで2つ目。それは僕が今からやろうとしていることに人手が欲しいからだ」


「やろうとしていること?」


 ココ先生は、俺が前のめりになったのを逃さず、肩に手を置いた。


「私もね、Vtuberになってみようと思うんだよ」


 その後先生の口から語られたのは、想像を絶する規模の計画だった。


 こんなことができるのは大企業の箱くらいだろう。

 これを、個人で?そんなことが許されるのか?


「まあ、僕の貯金あってこそだろうけどね」


 それを実現する力が、ココ先生にはある。そして莫大な需要も背中にしっかりと背負っている。


 ここで日和ってしまえば、商売人失格とでも言わんばかりの好条件だ。


「もし、仮に俺が断ったら、その計画はどうなるんですか?」


「もちろんやるさ。君以外のプロデューサーを探してきてね」


「んぐぐ」


 当たり前の回答だ。あくまで今近しい間柄だからこそ、誘ってくれたに過ぎず、本来は全てココ先生の力で成し遂げられるものだ。


「どうだい?まだ『やらない』なんて腑抜けた答えに付き合わないとダメかい?」


「……っ!」


 ココ先生の瞳を見る。そこには、絶大なる力と自信、フォロワー30万という肯定感が光をもって宿っている。

 しかしその瞳はわずかに揺れ動いていた。


 そうだ。飄々としているようで、ココ先生は実直な計算家でもある。これだけ大規模のプロジェクトに不安がないわけがない。


 そんなココ先生が、ただ仲良くしているからなんて理由だけで、こんなプロジェクトで俺に助けを求めるわけがない。


 信用だ。俺はこんななりに、ココ先生に信用されているんだ。


 じゃあそれに応えるのが、男ってもんだ。


「ココ先生」


「決まったかい?」


 俺は手を差し伸べる。その意図を理解したココ先生は、喜んで俺と握手を交わした。


「っと」


「な、なんだい……案外力強いね君」


「ただもう一つ交渉したいんです、ココ先生」


 握手した手を離さずに、言葉を紡ぐ。


「そちらの大船に乗るんだ。こちらの舟にも乗っていただかないとね」


 その内容を細かに説明したあと、ココ先生はくつくつと笑った。


「まったく、これだから君は、僕の見込んだ面白い男だよ」


 法的拘束力のない、ただの口約束だ。


 だが、ココ先生との縁が切れない限り続く、魂の契約だった。



<=>



「というわけで、ココ先生のプロデューサーも兼任することになった」


「何やってんのお前!?」


 さらりと打ち明けたら、光は目を飛び出んばかりに大きく見開いてそう叫んだ。


「お前俺のプロデューサーじゃなかったのかよ!」


 ぐわんぐわんと肩を握って揺さぶる光をなんとか制止する。まあ混乱もわからんでもない。


「だが決まったことなんだ」


「やっぱ仁って年上のお姉さんが……」


「断じて違う」


「信用なんねぇ……」


 うるせえ俺は女の子らしく華奢で、美人3割可愛い7割くらいの美少女のほうが好きだ。


 閑話休題。


「とにかく、落ち着いて聞いてくれ。別にお前のプロデュースをやめる気もない」


「俺一人の時ですらアップアップしてるのに、二人もとなると手が物理的に足りないんじゃないか?」


 そりゃ俺だってタコになれるなら成りたいさ。


「まず一つ。ココ先生のプロデュース開始はまだ先だ」


「そうなのか?」


「あの人もあの人で多忙なんだ。俺に会うまでは自身のVtuber化なんて机上の空論だった」


「まああの人気じゃな」


「だから3カ月待つことにした。仕事を落ち着けるために」


「なるほどね」


「他人事じゃないぞ。その3カ月の最後を飾る仕事こそが」


 俺は光を指差す。


「お前のVtuber化だ」


「ま、待ってくれよ」


「金の話をしたいのか?」


「そうだ!まだクラファンが終わってないじゃないか」


「こればっかしは、終わらせる、と言うしかない」


「なっ!?」


 ここに来てのノープラン宣言に、光は絶句する。


「ただ何もなしに終わらせられるとは思ってない」


 俺は怪しい笑みを浮かべて、光の肩に手を置く。


「コラボ配信をしよう!」


 あとは野となれ山となれ。



<=>



「はーいぴょんぴょ〜ん。うさぎの惑星から来た宇佐宇佐子だよぉ」


<うぉぉぉ!>

<うさぴょーん!>

<宇佐ちゃん愛してる〜!>


「おっと惑星間恋愛は条約により禁止だよ〜」


<ごめんよ〜>

<こらっ!ダメだぞ!>

<抜け駆けは許さぬ……>


「さぁ今日はうさぴょんトーーーーク!対談配信の日だよぉ!」


<どきどき>

<wktk>

<本日の犠牲者>


「本日の対談相手は〜〜!じゃん!HIKARIちゃんだよ〜!」


「あ、はい。オネガイシマス」


「HIKARIちゃん、ほら、自己紹介できる?」


「あ、んん゛。俺はHIKARI。Vtuberになるためにクラファン中。よろしく」


<俺っ娘!?>

<宇佐ちゃん浮気!?>

<緊張してるのかな>


「今日はHIKARIちゃんとたくさん盛り上がっちゃうぞ~~!」


「お、おぉ~~~!」



<=>



「げ」


「げ?」


 配信を終えた光はげっそりとした顔で部屋から出てきた。


「劇物だった……」


「ほんとに知らずに了承したんだな」


 このコラボを取り付けてきたのは紛れもなく俺だ。こうなる未来もまあ想定内っちゃ想定内だ。


「なんだあのマシンガンのような口は」


「全Vtuberが教科書にすべきトーク力だろ」


「てか視聴者もおかしいだろあんな質問」


 うさぴょんトークというコーナーは、その八割くらいを視聴者からきた質問を返す形で進んでいく。


「ついてるんですかって質問来た時は何ていうのかヒヤヒヤしたよ」


「ヒヤヒヤしたのはこっちだよ!まあ宇佐さんが上手く誤魔化してくれたけど」


 宇佐さんは演者のケアもできる口の上手いお姉さんなのである。


「もう二度とコラボしない?」


「いや、んん……その、そんなに悪くないが……」


 おそらくこいつが見ていたのは、宇佐さんの視聴者数だろう。自分個人では集められない圧倒的な数が、画面の向こうからHIKARIを値踏みしていたのだから。


「しかし面白いことを考える人も居たもんだ」


 Vtuberにとって怖いのが、配信の平坦化だ。

 常に新鮮な視点を入れなければ、配信が腐っていってしまう。そしてそのままいつものメンバーのみの平坦な配信になるのが、なによりも怖い。


 そこに宇佐さんは、インタビュー形式のコーナーを付け加えることで対処した初のケースである。


 古き良き企画型の配信。しかし入ってくるのは新鮮味を持ったVtuberたち。

 その化学反応を制御下に置いている宇佐さんは、唯一無二の強みを持っている。


「そして……」


 この配信の影響が早くも出始めていた。


「仁!クラファンが」


「ああ、ようやく、数字が動き始めた」


 俺達の頼みの綱が、好転し始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ