その5
私たちは3人で行動する事が多くなって、彼はすっかり私たちの中に馴染んだ。
私は彼と話していても平気な事に自分でビックリしていた。でも、2人っきりにはなりたくない、彼は私が欲しいものを持っているし、上手く言えないけど人を安心させる雰囲気があって、2人で話したら何もかも言ってしまいそうで怖かった。
私の椿への想いは誰にも知られたくない。
たまに椿が私と彼が2人一緒の授業のときは何を話しているの? とか聞いてくるのだけど、私は変にごまかして曖昧な事を言ってしまう……正直に別々に座っていると言えばいいんだけど……。
椿と2人っきりで行動していたときが懐かしい、2人に戻りたいとたまに思うけど、今の3人の関係は凄く好きだ。壊したくない、私が我慢すればいいのだろう。
私は自分の部屋で物思いに耽って、そんなことを考えていたら家のチャイムが鳴った。
今日は珍しく家に私1人……めんどくさいな~と思いつつ部屋から出て玄関に向かい、玄関のドアを開けると椿が立っていた……ちょっと様子が変かも?
「どうしたの?」
「……」
「家にくるの珍しくない?」
「……」
玄関に立って何も言わない椿を強引に私の部屋に通して、私は黙って何か言うのを待つ事にする。
少し時間が経つと、椿が話しだした。
「なきざ~隆君私の事どう思ってるかな」
椿はちょっと前から青木の事を隆君と呼び始めていた。彼女がそう言うたびに私は嫉妬している……バカみたいだ私。
「嫌いではないと思うけど」
椿が笑顔で答える。
「だよね」
何でそんなに嬉しそうに言うの……。
「私、好きなんだ」
「……そっか、うまくいくと良いね」
「ありがとう。でも告白する気はないよ」
「そうなんだ。言えばうまくいくと思うけど」
口では調子いい事言って、心の中では椿がふられる事を祈ってる私がいた。なんで、こんな考えをしてしまうんだろ……自分が嫌になる。
「まだ勇気ないよ。でも、なぎさには知ってて欲しかったの」
「……」
その後は、上手く返事ができていたか不安なんだけど、普通に今週の授業の話をして、椿は笑顔で帰って行った。
はぁ~3人の関係が壊れる時が来てしまったのかな、ひとりぼっちになってしまうのかも……私はどうしたら良いかわからなくなっていた。