その36
彼女から会って話しを聞いてほしいとメールが来た。
場所はいつものカラオケボックスじゃなくて、お互いの想いを最初に知った、あの公園だった。2人でベンチに座る。周りを見ても今日は人がほとんどいなかった。
だんだん暗くなってくる、空を見上げながら、彼女が話し出すまで黙って待っていた。
彼女がぽつりと言う。
「私の想いを聞いて」
「え?」
「椿に直接、伝えるつもりないしさ、あんたに聞いてもらえれば少しね」
「じゃあ、聞くよ」
彼女は区切りをつけるみたいだ。俺はまだ凄い中途半端なまま。なんだか情けない……。
「うん。ありがとう」
「あ~うん」
俺の方を真っ直ぐ見て彼女が言った。
「椿の事ほんと好きだったの」
「うん」
「でもさ、もう無理みたい」
「うん」
「ただただ椿の幸せを祈るよ」
「そっか~」
「うん」
そう言うと、彼女の瞳から涙がこぼれた。
「最近泣いてばかり」
「いいんじゃね?」
「あ~これからも上手くいくと良い。あの野郎! 椿を泣かしたらただじゃおかない!」
「……怖すぎ」
「うるさい!」
「泣きながら怒らないでも」
彼女が急に俺に抱きついてきた。
俺の胸の中で彼女が泣いていた。俺は何も出来ずにただ途方に暮れる。
……気が狂いそうだった。