その32
大学から家に帰ろうと歩いていたら、後ろから進藤が話しかけてきた。
何か前もこんな事あったな。
「青木~」
「なんだよ」
「機嫌悪いな。それはおいといて、大丈夫なのか?」
普通に返事したつもりだったのだけど、機嫌悪そうに見えるのか……。
「あ~大丈夫だけど」
「まあ、お前たちの事を俺が口出す事無いのだけど」
「じゃあ口出すな!」
「ふぅ~じゃ言うの止めるか……」
何だそのもったいぶった言い方は……。
「……そう言うと聞きたくなるのだが」
「どっちだよ」
「じゃあ聞くよ」
「俺たちはおまえの頑張りに感動したよ」
「はぁ??」
「今日、昼飯一緒に食べてるの見かけたから」
「あ~でも、普通じゃない?」
「普通じゃないね。俺も詳しく知らなかったんだけど、工藤情報によれば、鹿島さんの男嫌いは半端じゃないって」
「ん~なの?」
「青木は最初から結構普通に接してたから意識ないのだろうな……」
……次の言葉がでなくて、少しの間話しが途切れた。
その変な間のせいだろうか? 俺は、つい、ぽろっと本音を言ってしまった。
「でもさ、逆に辛いよ」
「そっか~。だな」
「まあな」
またもや沈黙。何も話さず2人で歩いていて思う。無理して話しをしないで良いのが凄く楽だった。
進藤が別れ際に言う。
「無理すんな。頑張り過ぎんなよ」
「おう。ありがと。じゃあな」
一人になって、何となく自分の事を考えながら家までの道を歩く。
離れる事も、近づく事も出来ない、今の状況に苦笑するしか出来なかった。