その31
あいつからの返事が来ないまま数日が経っていた。午前の授業が終わり、昼休みになって、2人で学食に向かおうとしていた時、椿の携帯が鳴った。
携帯を見ていた椿が、本当にすまなそうに言う。
「ごめん」
「どうしたの?」
「あの、今メール来て、田崎くんが一緒に昼食べないかって」
学年と学部が違う事もあって、大学内にいてもなかなか時間が合わないのを、私は知っていた。
同じ大学なのに、昼休みも一緒に居れないのが多い! と椿が愚痴ってるのを、耳がたこになるほど聞かされていたから私の返事は決まっている。
「あ~うん。気にしないで良いよ」
「ありがとう。明日は一緒に食べれるから」
「別に気にしないでいいから、彼氏優先しなよ」
「うん。でも、ごめんね」
何か謝られると余計惨めな気分になる。
椿と別れた後、他の友達とも上手く連絡が取れず。あ~1人でお昼どうしようと思いつつ、ひとまず学食へ移動していると、後ろから声をかけられた。
「よ!」
声の方に振り返ると、あいつが立っていた。
「あ! よ! じゃないよ」
なんだか、久しぶりに会った気がする。いつもは、大学に行けば、話しはしなくても学年も学部も同じだから、一度はどこかですれ違ったりして会っていた。ここ最近、会えなかったのは、避けられているんじゃないかって不安だった。
あ、そうだ。この前の事を謝ろう。いつもメールで直接言う事って無かったし。
「この前の事とか、いつもごめん」
「え! 何か珍しいなどうした。体調悪いのか?」
「く~人の素直な気持ちを! よく言うわね」
「俺の素直な気持ちだったんだけど」
「そういう事は素直じゃなくていい!」
むかつく事言われたけど、いつもの彼だ。ほっとした。
良かった嫌われたわけじゃなかったみたい。
そして、疑問に思っていた事を質問してみる。
「ねえ。最近、大学休んでた?」
「なんで?」
「見かけなかったし」
「あ~ちょっと体調悪かったから」
「ええ!」
「なんだよ。そんなびっくりする事?」
「もしかして、あの時も具合悪かった?」
「いや、あの時はべつに」
「そっか~でも、ごめん」
「謝る事無いけど」
「でもね……」
何でだろうか、凄い落ち込む。
「あ、言ってくれたお見舞いに行ったのに」
「良いよ。悪いし」
「だって、私たち……」
って、なんなんだろう? 友達なんだから気にするな! みたいな事言おうとしたんだけど……違う気がした。いや、ほんとに違うのかな……あ~わけわからない。
「ん? どうした?」
「いや、何でも無い。弱ったあんたを見たかったって話し」
「ひど! まあいつもの事か」
「私そんな酷くない!」
「無自覚って怖いな」
「……」
話しの流れで、彼と一緒に話しをしながら昼ご飯を食べて、午後からの授業は別だったので別れた。彼は、私が椿と一緒に居る事を心配してくれてたらしい。嬉しかった。
昼休みが終わって、椿と合流したら、椿がぽつりと言った。
「ねえ。何か良い事あったの?」
「え? 何も無いけど?」
「最近ず~と元気ない感じだったのに、雰囲気変わった」
「そ、そうかな」
「昼休み中に何があったの??」
何かって言われても……あいつと会って話したくらいだけど……なんだろう、こ、混乱する。私はその混乱から逃げるように、椿に話しをふる。
「何も無いって、そっちこそ嬉しそうだと思うけど」
「少しでも会えると嬉しいよやっぱり」
「はいはい」
「自分でふっておいてその返事は無くない?」
「はいはい」
「もう」
あいつの事を考えると、何か落ち着かない。あれ……自分がわからない。ほんとにどうしてしまったんだろう。