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第75話 松田と光の不倫

【ハーモニー社・社長室】


朝、社長室の応接セットの所で、営業部1課の石川光と向かい合って話をしている真彩。


真彩、光をじっと見詰めている。


光、うつむいた状態で、ポケットからハンカチを取り出し、涙を拭く。


そして、光、真彩の言う事に頷いている。


真彩は、神妙な面持ち。


真彩(心の声)「辛いなぁ……」


真彩、目からも涙が零れ落ちる。




【営業部・企画課】


昼過ぎ、社内アナウンスが流れる。


(女の声)「営業部企画課・松田課長、社長室にお越し下さい。営業部企画課・松田課長、社長室にお越し下さい」  


松田、自分の名前を呼ばれ、PC操作していた手が止まる。


松田(心の声)「んん?……何だろう?」

   

何故、自分が社長室に呼ばれたのか、訳が分からなかったが、スッと席を立ち、社長室へと向かう松田。

 



【社長室】


社長室では、真彩が自分のデスクで、眉間に皺寄せ、紙媒体の資料に目を通している。


ドアをノックする音。


真彩「はい、どうぞー」


松田「失礼します」

と言って、会釈して社長室に入る松田。


真彩、松田を見る。


真彩「どうぞ、お座り下さい」

と言って、松田を応接ソファに座らせる。


真彩も、応接ソファに、松田と向かい合って座る。


松田、未だ、何故、自分がここに呼ばれたのか分かっていない。


真彩が話し出す。


真彩「松田課長は大阪に来て二年ですね?」


松田「あぁ、はい」


真彩「生活は不自由していませんか?」


松田「あぁ、いえ、大丈夫です。楽しく過ごしてますし……」

   

真彩、松田の言葉に反応する。


真彩「楽しく過ごしてますか……」

   

真彩、沈んだ声で言う。


真彩「東京のご家族の所には帰れてますか?」

   

松田、真彩の質問にドキッとし、

松田「えっ? あぁ、はい……」    

と、適当な返事をする。 

  

すると真彩、松田の目をじっと見る。


松田、真彩に見詰められて、心の中を見透かされている感覚に陥る。


少し、沈黙の時間があり、真彩がまた話し出す。


真彩「そうですか……残念です。松田課長は、奥さんとお子さん達を捨てるおつもりですか?」


松田「えっ?……」


真彩の発言に驚く松田。


松田「いや、そんな訳ないです!」

と、直ぐに否定する松田。


真彩「では……石川さんを捨てるんですか?」


真彩、核心を突いた言葉を発する。


松田「えっ?!……」


松田、真彩の言葉にフリーズし、一気に顔色が変わる。  

  

真彩「このままだと、奥様から離婚を言い渡されるかもしれませんね」


松田「?……」


真彩「そうなると、可愛いお子さん方と会えなくなり、高い弁護士料払って慰謝料、養育費の請求され、最悪、裁判沙汰になり、この先の人生かなり大変になるかもしれないですけど、松田課長は、その覚悟はお有りですか?」


真彩、首を傾げて松田の顔を見る。


松田、真彩の言葉に呆然としている。

頭が真っ白な状態の松田。


松田、言葉が中々、出て来ない。


松田「……えぇ……」


真彩「石川さんには奥さんと別れると仰ったそうですが、本当にそうされるんですか?」


松田「……あぁ……いえ、あの……妻と離婚する気はないです……」

と言うと、松田、下を向く。


真彩「離婚する気は無いんですか……では、何故、石川さんに嘘を言ったのですか? ずっと騙すつもりだったのですか?」


真彩の言葉に、下を向いていた松田が顔を上げ、

松田「いや、騙すだなんて……」

と言った後、言葉が続かない松田。


真彩「日本では、既婚者が異性と関係を持つと不貞行為とみなされますが?」


松田、真彩の言葉に項垂れる。


真彩「石川さんは、貴方と本気で結婚出来ると思ってますよ?」


松田「あぁ……」    


真彩「奥様は、三人のお子さんの面倒を一人でみてるんですよ! 貴方が快楽に溺れてる間も。奥様は貴方の不倫、未だ知らないと思います」


松田「?……」


真彩「今なら引き返せますよ?」


松田、真彩の言葉に茫然となっている。


真彩「私は、皆んなが不孝になって欲しくないです。今ならやり直せると思いますが?」


松田「?……」


真彩「情にほだされると、正しい判断が出来なくなりますね。これは、誰にでも起こり得る事です。でも、松田課長には、心立て直して頂きたいです。お願いします……」

と言って、真彩、松田に頭を下げる。


松田「?……」


松田、真彩に頭を下げられ困惑する。


     ×  ×  ×


松田が社長室を出るや否や、優衣が部屋に入ってくる。


優衣「どうだった?」


真彩「うん。松田課長に判断を委ねた。多分、石川さんとは別れると思う。奥さんと別れる気は無いみたいだから……」


優衣「奥さんと別れる気ないのに、石川さんには奥さんと別れるって言って、嘘ついたの? 酷っ! そんな人だったんだ、あの人って……」


真彩「うーん……『情に棹させばながされる』って事かな? 足元救われちゃったね」


優衣「?……」


真彩「石川さんとの関係を続けたいから、つい、嘘ついちゃったんだろうね」


優衣「もうー、女性からしたら許せないね!」


真彩「うーん……でも、男性からも許せないって事、あるからね……まぁ、どっちもどっちでしょ。喧嘩両成敗じゃないけど、お互い傷付いた訳だ……」


優衣「……」


優衣、サイフォンに入っている珈琲を、自分のマグカップに注ぐ。


優衣「ねぇ、あの二人が不倫してるって、何で分かったの? 噂が立った訳でもなく、この事、社長と私しか知らないと思うんだけど?」


真彩「あぁ、営業部通った時に、二人でアイコンタクトしたから……」


優衣「えっ? アイコンタクトしただけで不倫してるって分かったの?」


真彩「うん、何か、そう感じちゃって……」


優衣「はぁー、真彩様の前では悪いことは出来ませんねー。私も気を付けよっと……」


真彩、優衣の顔を見て微笑む。


優衣「でも、何とか皆んなにバレない内に解決への道が付いて良かったね」


真彩「うん……でも何かさ、結局、不倫して傷付くのは女じゃない? 女って損だなって思った」


優衣「ホントだよね……それに、もし噂でも立ったら、会社に居づらくなって、辞めたくなるもんね」


真彩「この前、友達が言ってたんけど、『噂の広まる量』ってさー、『重要度×あいまいさ』だって。噂話とか都市伝説って、ちゃんと法則があるみたい。まぁ、法則って程の事でもないと思うけど」


優衣「という事はですねー、あいまいさを掛けなければ、唯のニュースって事だよね?」


真彩「そうなるね。だから、あいまいさが、噂にとって重要って事だよね……」


優衣「そのあいまいさを膨らませるのが、人の言葉だよね?」


真彩「うん。その人の今の感情が、あいまいさの中に加わって、噂が変な方向に行っちゃうんだよね。悪の感情が強い人は、掛けるあいまいさの数値が増える訳だ。怖っ……」


優衣「そうなるね……怖っ……」


真彩「人の言葉って、やっぱり怖いね。人を喜ばすのも、人を怒らすのも言葉だもんね。気を付けよ……」


優衣「だから、上に立つ人の言葉って、とっても重要なんだよね。重んじるって漢字、使うし」


真彩「私も言葉にはホント、気を付けないと……ってなったら、ジョーク言えなくなるなぁー」


優衣「マーちゃんは大丈夫だよ。ちゃんとわきまえてるから。ジョークも、人を傷つけないジョークだし、むしろ喜ばせてるから……」


真彩「おぉ、優秀な秘書様にそう言って頂けると、とっても嬉しいです」


真彩、秘書の顔を見てニッコリする。

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