表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/152

第66話 優衣、仕掛ける

【ハーモニー社・社長室】

   

真彩、PCに向かって真剣な顔で作業している。

優衣、心配顔で真彩を見ている。


優衣「あのー、ホントに大丈夫?」


真彩、PC画面を見ながら、

真彩「うん。大丈夫」

と、即答する。


優衣「あのー、死にかけたんだからね?! もうちょっと入院してても良いと思うよ?」


真彩「うん。でも、元気だから。肺の方も大丈夫だったし……」

と言うと、優衣に微笑む。


優衣「それにしても、また悠ちゃんに命、救けて貰った訳だ。これで何回目?」


真彩「あぁ……うーんと、三回目? 四回目? 分かんない」


優衣「そんなに命救って貰って……こんな奇跡みたいな事、無いよ? 悠ちゃんいなかったら、マーちゃんはもうとっくにこの世に居ないんだよ?!」


真彩「はーい。解ってまーす」


優衣「だからさぁ、もう悠ちゃんと仲直りしたら?」


真彩「あぁ、それとこれとは別だから……」


優衣「はぁ? ホント、ゴンタだなぁー。何でそんなに頑なで強情なの?!」


真彩のスマホに受信音が鳴る。


直ぐにスマホを手に取り、応答する真彩。


真彩「もしもし……あぁ、先輩お久しぶりです。あ、はい、元気です……はい……はい……そうなんだ……えっ? 今晩ですか?……あぁー、じゃーはい。七時(夜)に改札前ですね。はい、分かりました。じゃー、後程……」


真彩が電話の相手と話している間に、優衣、真彩に分からない様にこっそり自分のスマホをいじっている。

   

優衣「先輩って、ひょっとして、大学時代の元カレ?」


真彩、PC操作しながら、

真彩「うん。ドイツから帰って来て東京勤務になったって。で、今、休暇で京都にいるんだって……」

と、包み隠さず優衣に言う真彩。


優衣「えっ、まさか復縁迫って来るとか?」


真彩「あぁ、そうかもね。そう感じた。お持ち帰りされちゃうかもね」

と言って、冗談を言う真彩。


優衣「あの、悠ちゃんの事は? 悠ちゃん、本当にマーちゃんのこと愛してるよ?!」


真彩「私のこと本当に愛してたら、取っ替え引っ替え色んな人と付き合わないでしょ?! それに、悠斗の結婚相手は、やっぱり紗季さんがベストだと思うし……」


優衣「あの、取っ替え引っ替えって……悠ちゃん優しいしハンサムだから、周りが放っておかないんよ。紗季さんとの結婚も、悠ちゃんは断ったはずだよ?」


真彩「うん……でもねー……紗季さんと悠斗の相性、めちゃ良いんだよね……」

   

優衣「悠ちゃん、前に、マーちゃんと結婚するって言ってたじゃない?!」


真彩「それは、何年も前の事でしょ? もうとっくに別れたんだから……それに、兄妹なんだから結婚なんて有り得ない事だし……」


優衣「もう、何でそんなに強情なの? もっと素直になんなさいよ!」

と、優衣、怒った様な口調で言う。


真彩「えぇ?……私が強情???」


真彩と優衣、ちょっと気まずい空気となり、しばらく沈黙が続く。


     ×  ×  ×


真彩、PC入力の手を止め、優衣を見る。


真彩「あの、じゃー、優衣ちゃんには本当のこと言うよ」


優衣「えっ???」


真彩「悠斗の女性関係がどうのって、そんな事で悠斗を嫌ってる訳じゃないから。この前の『ストーカー美紀』の件も、池もっちゃんが教えてくれたんだけど、別に何にも思わなかったから……」


優衣「えぇ?」


真彩「勿論、兄妹だからっていうのがネックなんだけど、それ以前に、私、捨て子だからさぁー、何処の馬の骨か知れない奴だから、上流階級の血筋の良いお坊ちゃまとは不釣り合いなんだよね……」


優衣「はぁ? 何言ってんの?!」


真彩「だって、自分の本当の親が、例えば、恐ろしい殺人者だとしたら、子どもはそのDNA受け継いでる訳だよ? もう、想像しただけで怖くなって……考えたくないけど、頭によぎるから……」


優衣「でも、ちょっと考え過ぎじゃない?」


真彩「それにね、子どもを捨てる様な、薄情な親のDNA受け継いでるんだよ? 自分もその内、そうなるんじゃないかって思っちゃって……」


優衣「いやいや、考え過ぎだってば!」


真彩「それにさぁー、前に言った様に、前世では私、悠斗の正室だったけど、悠斗には側室が何人もいて、私は寂しい惟いで死んだから。だから、現世で、もし悠斗と結婚したら、浮気ばっかりされて、悠斗の愛人に悩まされる様になるんだよ?……嫌だよ、そんなの」


優衣「でも、前世と現世は違うでしょ?!」


真彩「輪廻転生だよ? 前世での因縁、引き継いでるから……」


優衣「えぇー……」

優衣、不服そうな顔をする。


真彩「優衣ちゃんは、何不自由なく幸せな環境で育ったから、私の気持ち、分からないよ……」


優衣「……」

優衣、真彩の言葉に、黙り込んでしまう。


真彩「あっ、ゴメン……嫌な言い方したね……ゴメン……」


優衣「ううん……」

優衣、首を左右に振る。


真彩「まぁ、メルヘンで例えると、童話に出て来る哀れな乞食の女と、王子様なんだよね。悠斗の結婚相手は良い所のお嬢さんって決まってるんだよ。それに紗季さん、悠斗の許嫁だし」


優衣「えっ?……許嫁?」


真彩「うん。だから、私が悠斗の近くに居たら邪魔なの」


優衣「えぇー?」


真彩「だから、悠斗のこと拒絶してるのに、あのバカ、面白がって私に近付いて来るから、ホント、困ったもんだよ」

と言うと、真彩、またPC画面を見ながら入力し始める。


優衣「面白がって……って……」

   

優衣、真彩をじっと見る。


優衣「今の時代に許嫁って……昭和初期の時代か?」


真彩「あぁ、小さい頃、悠斗と私がいっつもくっついてたから、世間体気にする親戚は良く無いって思ったみたい」


優衣「いや、それは全然知らなかった……」


真彩「あぁ、パパの方の親戚だから、優衣ちゃんは知らないよね。ママの方は誰もそんなこと言わなくて、むしろ冗談で結婚させてあげたいって言ってくれてた」 


優衣「あぁ、そう言えば、叔父さんの方、世間体気にする、うるさいおばちゃんとかいたんだったね……」


真彩「うん。だから、私にも許嫁がいて、和くんなんだよね……」


すると優衣、驚いた表情になり、

優衣「えええええっ?! MZC社の、叔父さんの秘書してる尾形さん?」

と言って、開いた口が塞がらなくなる。


真彩「うん。和くん、パパの親友の子だから、昔から家族ぐるみの付き合いしてて、気心知れてるし……」


優衣「マジか……」


真彩「和くん、私の生い立ち知ってて結婚して欲しいって言ってくれて……親族が決めた相手だし、しょうがないかな?……って。年貢の納め時は、最終的に和くんのお嫁さんになるかも?」


優衣「そうだったんだ……」


真彩「もうどうでも良いんだよね、私の人生なんて。川に落ちた葉っぱみたいにゆらゆら流されて、川の流れに身を任すって感じかな? もし誰かが拾ってくれたら、その人が伴侶って事なのかも?」


優衣「川の流れに身を任せて、自分の意志ってものはないの?!」


真彩「意志か……無いかも? 兎に角、自然の流れに任せるって感じ? ケセラセラですわ。悠斗には赤ちゃんの時から沢山の愛を貰ったから、もうその思い出だけで生きて行けるし……」


優衣「思い出だけで生きて行くなんて、そんなの辛いよ……」


真彩「所詮、人間は一人で生まれて一人で死んで行くんだよ? 修行する為に生まれて来たんだから、どんな試練も、頑張って乗り越えないとね!」

と、真彩、自分に言い聞かす様に言っている。


真彩「私は、生まれた時からそういう運命の人間なの。幸せを求めちゃいけないの。こうやって生かされてる事だけで感謝なんだもん……」


優衣「……」

淡々と言う真彩に、優衣、何も言えず。

   

真彩、優衣の顔を見て、

真彩「さてさて、巡回に行って来ますわ。頑張らないとね!」

と、微笑む。


優衣「……はーい、行ってらっしゃい」 


真彩、椅子から立ち上がり、タブレットPCを持つ。

そして、一人、社長室を出て行く。


真彩が社長室から出て行ったのを確認してから、

優衣「ふぅ……」

と、溜め息をつく優衣。


優衣(心の声)「悠ちゃんに送りますか‥‥‥」


優衣、スマホのボイスメモに録音した真彩との会話を、悠斗に送信する。


すると、悠斗から直ぐに電話が掛かって来る。


優衣「はい……うん……うん、七時に高槻駅改札前。悠ちゃん、頑張ってよ! 大チャンスだからね! マーちゃん、強引にね! 今日を逃すと、また中々チャンスやって来ないから。んん?……あぁ、いえいえ、どう致しまして! グッドラック!」


電話を切ると、優衣、不敵な笑みを浮かべる。


優衣(心の声)「あっ、『強引にね!』って……私、犯罪に加担してる?……まっ、良いか。こうでもしないとマーちゃんを囲ってる頑丈な壁、壊せないから……あっ、鍵を開ける前に壁、壊しちゃうか……強硬手段だ。仕方ない。マーちゃんの為だし……」

   

優衣、満足気な顔をする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ