第139話 不思議な世界
【高槻レオマンション・806号室・悠斗の部屋】
大きな悠斗のベッドに横たわっている、悠斗と真彩。
真彩「おやすみ」
と言って、隣に居る悠斗に言う真彩。
そして悠斗も、
悠斗「おやすみ」
と言って、真彩を見て言う。
仰向けの二人、手を繋いだまま、目を瞑る。
しかし真彩、しばらくして目を開け、悠斗の方を見る。
真彩(心の声)「私、やっぱり、その内、悠斗に捨てられるのかな?」
悠斗を見ながら、ちょっと寂し気な顔の真彩。
真彩(心の声)「悠斗を信じたいんだけど……でもなぁ……」
真彩、しばらく、悠斗をじっと見ている。
真彩(心の声)「でも、近い将来、捨てられたとしても、今迄、私の事を沢山愛してくれたから、もう、一生分の愛を貰ってるから、我慢しないとなぁー。私、悠斗に愛されて幸せ過ぎたから、これ以上、欲張っちゃーいけないよね。私への愛の有効期限、そろそろ切れるんだろうなぁ」
そんな事を、一人であーだこーだと考えている真彩。
すると、悠斗、パッと目が開く。
真彩からの惟いを感じた悠斗。
真彩、悠斗の目が開いたので驚く。
直ぐに目を瞑る真彩。
悠斗「んん? どうした?」
と言って、真彩の方を見て、真彩の頬っぺたを触る悠斗。
すると真彩、目を瞑ったまま、
真彩「どうもしないよ」
と言う。
悠斗「?……」
真彩「おやすみ」
と言って、悠斗の質問に答えない真彩。
悠斗「何考えてんの?」
悠斗、身体を持ち上げ、目を瞑っている真彩の顔を覗く。
悠斗「ねぇ、何考えてんの? またなんか変な事、考えてない?」
真彩「何にも考えて無いよ」
悠斗「嘘だ。教えてくれないと、こちょわすぞ」
と言って、真彩の身体をくすぐる悠斗。
悠斗は、真彩の弱点を熟知している。
真彩、しばらく我慢するが、脇や、足の裏が弱い真彩は、ギブアップする。
真彩「参った。言うから」
と言って、目を開ける真彩。
悠斗「もうー、ゴンタだなぁー、素直に言えば良いのに」
と言って、微笑む悠斗。
真彩「あのさぁー、また女の人に言い寄られてない?」
悠斗「えぇ? んーん」
と言って頭を左右に振る悠斗。
真彩「そっか……」
悠斗「えっ? 何でそう思ったの?」
真彩「実は、今朝ね、また前と同じ夢を見たから……」
悠斗「えっ? 例のやつか? 俺が真彩とお腹の赤ちゃんを捨てて、知らない女性と手繋いでどっかに行ったってやつ?」
真彩「うん。やっぱり正夢になるのかな?……って思って……」
悠斗「あのなぁー、俺がそんな事する人間じゃないって、解ってるだろ?」
真彩「うん。でも、同じ夢をまた見るなんて、何でかな?……って思っちゃって。やっぱり近い将来、そうなるから心の準備をしろって事なのかな?……って思って」
悠斗「で、心の準備してたの?」
真彩「うん。自分に言い聞かせてた。もう直ぐ、悠斗の愛の有効期限が切れるから、ガンバレ真彩って」
悠斗「はぁ? もう、ホントに困った奴だなぁー。勝手に愛の有効期限なんて、作るなよ。もし仮に作るんだったら、この世での修行を了えて、ご霊界でも一緒なんだから、数字じゃなくてINFINITYだよ。無限大の記号にしてくれる?」
真彩「そんなこと言っても、やっぱり怖いし、寂しいもん。悠斗がどっかに行っちゃったら……って考えたら、辛くなって……」
悠斗「もうー、そんな事、考えるな! 俺と真彩は一心同体だろ?! 俺は『一生、真彩を愛します』ってみ仏様に誓っただろ? 嘘つく訳ないだろ? 真彩が自分自身でそういうマイナスなこと考えて引き寄せてるんだから、そんな事、もう二度と考えるな。俺を信じろ!」
真彩「そうだね、うん、悠斗を信じる。不安になっちゃってゴメン」
と言って、ウルウルした目で、悠斗の目をじっと見る真彩。
悠斗(心の声)「もうー、真彩、可愛すぎる。俺がお前を捨てる訳ないだろ」
悠斗、真彩を抱き締める。
そして、悠斗のおでこと真彩のおでこがくっついたまま、目を閉じる二人。
その体勢でウトウトとなり、ノンレム睡眠寸前、悠斗と真彩の前頭葉に、同じ映像が映る。
(映像 始まり)
千年程前の時代。
高貴な家柄の悠斗。
真彩は悠斗の正室で、二人は愛し合い、とても仲が良かった。
しかし、二人の間に、子どもが出来なかった。
跡取りが必要な為、周りの策略により、側室を何人か悠斗にあてがえる事となる。
不本意の悠斗だったが、どうしても跡取りが必要だったので、周りに従わざるを得なかった。
そして、側室の一人が懐妊する。
真彩は一途に悠斗を愛していたが故に、ショックのあまり、湖に身を投げ、自ら命を絶った。
悠斗、真彩が自死したという事を知り、泣き崩れ、後悔の念に駆られる。
そして、生気を失い、その後、気が狂った様になる悠斗。
悠斗、愛する真彩を死なせてしまったのは、自分のせいだと、自責の念に駆られる。
その後、真彩を供養する為に、地位、名誉、家、全てを捨て、寺に出家する悠斗。
(映像 終わり)
悠斗と真彩、同時に目が開く。
そして、しばらく無言で見つめ合う。
悠斗「同じ夢を見た?」
真彩「多分……」
そして、
悠斗「だから俺は、真彩しか興味ないのか……」
と、納得した感じで言う悠斗。
真彩(心の声)「私が死んだ後、悠斗が出家したなんて……」
悠斗「俺達、強い絆で結ばれてたんだな」
真彩「うん。いつの時代か分からないけど、前世でこんな事あったなんてね……」
悠斗「身近にいる人達は、前世から繋がってる人達だって言うけど、やっぱり真彩は、前世でも俺の奥さんだったんだな」
真彩「あぁ、それは、ママに教えて貰ってたから知ってたけど……」
悠斗「えっ?……そうなの?」
真彩「うん。悠斗が高貴な位の人で、周りには側室が何人もいて、私は正室なんだけど、辛くて、寂しくて、悲しい惟いしてた……って」
悠斗「そうなんだ……」
真彩「ママ、それしか言わなかったから……悲しい惟いがこういう事だったんだ……」
悠斗「……」
真彩「ママは全部見えてたのかもしれない。前世で私が自死したって事も……」
真彩、神妙な顔をする。
悠斗「怖いな、因縁って……」
真彩「うん……」
悠斗「真彩は実際、何度かそう成りかけたからな」
真彩「うん……」
悠斗「あの時……真彩が川で溺れた時、もし翔ちゃんが助けてくれなかったら、真彩はもうこの世に居なくて、また俺、歎き苦しんで、生きる気力無くして、前世と同じ道を辿ってたかもしれない」
真彩(心の声)「あぁ、そっちか……悠斗の脳にはそっちの方が印象深いんだ……台所で包丁を手首に当てた時の方かと思ったけど……」
悠斗「真彩が生きててくれて、本当に良かった。有難いよ」
真彩「……」
悠斗「解っただろ?」
真彩「えっ? 何が?」
悠斗「俺は本当に真彩しか愛せないって事が。真彩、俺の言葉、信じてなかったから」
真彩「えっ?……あぁ、ゴメン。信じるって言いつつ、信じて無かったんだね。だって、悠斗の周りには悠斗の事が好きな女の子が沢山いるから。悠斗、誰にでも優しいし」
悠斗「俺の心と身体は、真彩に支配されてるから。俺は、本当に、真彩しか愛せないからな」
そう言って、微笑む悠斗。
真彩「解ったよ。嬉しいよ。でも、悠斗がそんなに惟ってくれてたなんて、ビックリ。悠斗の前世からの愛、大事にする。もっと感謝する」
と言うと、真彩、悠斗にキスして抱き着く。
悠斗も真彩を強く抱きしめ、愛撫する。
悠斗「ヤバイね、俺達。千年の恋ジャン」
真彩「うん。悠久の流れを感じるね」
悠斗「不思議な世界だな。この世の中は……」
真彩「うん……不思議……」
【カフェバー「Route72」】
真彩と親友の紀香が、カウンター席で話をしている。
紀香「へーぇ、そうなんだ。でも、夢の謎が解けて良かったね。もう、これから嫌な夢、見ないんじゃない?」
真彩「うん。脳が納得したから、もう見ないと思う」
紀香「ねぇ、前にさぁー、悠斗さんと波長、周波数が合うから、通じ合ってるって言ってたけど」
真彩「うん」
紀香「具体的にどんな感じになるの?」
真彩「えぇー、言葉で言うのは難しいなぁー。心で感じるから。うーん、悠斗が出す周波数をキャッチするんだけど、悠斗からの、とっても温かい愛情が伝わるんだよね」
紀香「へーぇ、何か不思議」
真彩「ラジオの周波数合わせたら声が聞こえる感じって言ったら、分かり易いかな?」
紀香「成程。そういう感じか」
真彩「携帯も電波使ってるから、電話掛けたら繋がるでしょ? それを、心で念じたら電話掛けなくても相手の心が伝わるって感じ」
紀香「ふーん、凄いなぁー」
真彩「宇宙は振動してるからね。共振するのかな? 知らんけど」
紀香「何か、よー分らんわ。でも、真彩の言う事は信じてる」
真彩「アリガト」
と言って、紀香に微笑む真彩。




