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第100話 真彩の出生の秘密

【真言密教寺院・真正寺】


真正寺の本堂・御宝前では、大僧正が様々な印を結び、周りの僧侶達が読経している。

   

亜希、大僧正である父親のサポートを、細々としている。


小さい頃から真正寺で修行し、僧侶の位を持っている悠斗と真彩も、読経しながら時に印を結び、祈っている。


僧侶達「のうまくさんまんだ ばあさらだあ せんだん まかろしゃだや……」

と、一生懸命唱えている。

   

護摩壇の炎が勢いよく上がる。

その炎を、真彩、じっと見ている。


すると、過去の出来事が鮮明に、真彩の頭に走馬灯の様に映し出されている。




(回想始まり)


真言密教寺院・真正寺の廊下で、亜希(42歳)と、智之の妹・池田由紀(43歳)が話をしている。


由紀「さっき、真彩ちゃん、きちんと挨拶してくれたわ。大きくなったねー」


亜希「子どもの成長って早いですよね」


由紀「純真無垢で、清楚で綺麗なお嬢様って感じだった。天使かと思った」


亜希「天使ですか?……案外、そうかも」

と、由紀の言葉を否定せず、微笑む亜希。


由紀「うん」

と、大きく頷く由紀。


亜希「由紀さん、真彩に会うの久しぶりですもんね。今日で三回目ですよね?」


由紀「そうねー、一回目がお堂に捨てられてた真彩ちゃん見た時で、二回目がシカゴに遊びに行った時で……今日で三回目だね」


亜希「由紀さん、イギリスの生活、長いですもんね……」


由紀「そうね、真彩ちゃんの成長ぶりを間近で見たかったんだけどね。もし、イギリス行きの話がなかったら、私が真彩ちゃんを育ててたわ。ホント、可愛かったから……」


亜希「あのー、由紀さんがもしイギリス行きの話が無くて、真彩を育てたいって言っても、私、絶対に真彩を自分の子にしたいって思ったから、渡しませんでしたよ?!」

と言って、笑う亜希。


由紀「あぁ、そうね、亜希さん、外ではずーっと真彩ちゃんを抱っこして、離さなかったからねー」

と言うと、由紀と亜希、笑う。


由紀「でも、亜希さんが育てて正解だったと思う。あんな良い子に育ったんだもん。はぁー、亜希さんが羨ましいよ」


すると、誰も居ないはずの暗い部屋から、「ドサッ……」と物音がした。


亜希「?……」

   

亜希、笑顔が消え、緊張した面持ちになる。


襖を開けると、真彩(13歳)が放心状態で立っている。

真彩の足元には、落とした本が何冊か、ばらけてある。


真彩「私、捨てられてたの? ママは本当のママじゃないの?」


亜希、動揺している。


亜希「あぁ……真彩、話、聞いてたの?」


真彩、黙って頷く。


由紀「あぁ……」

由紀も亜希と同じ様に動揺している。


すると真彩、部屋から飛び出し、走り出す。


亜希、思わず、「真彩ー!」と叫ぶが、真彩、立ち止まらず、そのまま走ってどこかに行く。


     ×  ×  ×


真正寺を出て、泣きながら無我夢中で走っている真彩。




【真正寺近くの公園】


公園に着き、

真彩「はぁ、はぁ、はぁ……」

と、息を切らしている真彩。


真彩、頭が混乱し、パニック状態。

何が何だか分からず、呆然としている。


ベンチに腰掛け、亜希と由紀の会話を思い出し、真彩、号泣する。


     ×  ×  ×


亜希と悠斗が、真彩の目の前に現れる。


悠斗「もうー、探したぞ!」


亜希「真彩、家に帰ろう?」


亜希、しゃがんで、真彩にボディータッチしながら、真彩の顔を下から見上げる。


真彩「ほっといて! 他人なんだから」

と、真彩、怒った口調で言う。


悠斗「あのなー、血が繋がって無くても俺達は家族! 真彩は俺の妹。母さんは真彩のママ。父さんは真彩のパパ!」


真彩「違うよ。他人だもん……」


亜希「真彩……真彩はママの子だよ。誰がなんて言ったって、真彩はママの子どもなの!」


悠斗「帰ろう?」

しかし、真彩、首を横に振る。


悠斗「じゃー、どこで寝るんだ?!」


真彩「ここで寝る」


悠斗「学校はどうするんだよ」


真彩「もう行かない!」


悠斗「何言ってんだ?!」


亜希「真彩、お願いだから、一緒に家に帰ろう?」


真彩「嫌だ。帰らない。もうあの家には帰らない」


悠斗「しょうがないなー」

と言うと、悠斗、嫌がる真彩を肩に担ぐ。


真彩「止めてよ! 下ろして!」

   

真彩、暴れて抵抗するが、悠斗、動ぜず。

暴れる真彩を担いだまま、歩き出す。


(回想終わり)




真正寺・御宝前では、大僧正である真彩の祖父(俗名:髙橋真也)が、法要に参座している信者達に説法している。


悠斗と真彩は、その説法を真剣に聞いている。


正座している真彩の所に、賢人がやって来て、真彩の足の上にちょこんと座る。

真彩、賢人を優しくバックハグする。



法要後、本堂の前では、石田幸と、幸をサポートする女性二人が、歩きながら楽しそうに会話している。


真彩、幸に声を掛ける。


真彩「石田さん、気を付けてお帰り下さいね!」

   

すると、真彩の声に直ぐ反応して、

幸「はい。真彩様、有難うございます。お仕事大変でしょうけど、お身体にはくれぐれも気を付けて下さいね!」

と、笑顔で言う。


真彩「有難うございます。石田さんもお身体、大事にして下さいね!」


幸「有難うございます!」

 

幸と、幸をサポートする女性二人が、真彩に会釈する。

そして、階段に向かって歩いて行く。  


賢人が真彩を見付け、走って来る。

真彩、しゃがんで、賢人をハグする準備をする。

賢人、笑顔で真彩に抱きつく。


真彩「賢ちゃん、おりこうさんだったね。偉かったね」


賢人「うん」

賢人、真彩に褒められて嬉しそうな顔をする。


そこに、沙耶が笑顔でやって来て、真彩に会釈する。


沙耶「賢人、お家に帰ろう?」


賢人「はーい!」


真彩「おぉ、良いお返事だね! 賢ちゃん、偉いなー!」

  

真彩に褒められ、賢人、ニコニコ笑顔。


そして賢人、沙耶と手を繋ぎ、真彩に手を振る。

真彩も笑顔で賢人に手を振る。


同時に、法要に参座していた人達を見送る真彩。

皆、笑顔で真彩に会釈したり、手を振ったりする。


     ×  ×  ×


掃除を終え、箒を片付け、外にある手洗い場で手を洗う真彩。


真彩「ふぅ……終わった……」

   

真彩、庭にあるベンチに座り、空を見て、過去回想している。



(回想始まり)


【中村家・真彩の部屋】


亜希、真彩の部屋をノックし、ドアを開ける。


亜希「真彩、お腹空いたでしょ? 何か食べないと……」


真彩「要らない!」


亜希「おやつに、真彩の好きな紅茶のスコーン作ったよ? 一緒に食べよ?」


真彩「要らない」


真彩、上布団を頭から被る。



     

【中村家・台所】


亜希は買物に行き、家には誰もいない。


シーンと静まり返った家の中、真彩、夢遊病の様な症状で、朦朧としながら台所にやって来る。

   

そして、真彩、調理台に置いてある包丁立てをじっと見る。


真彩、包丁を手に取る。

そして、手首に包丁を当てる。


軽く包丁を引く。

血が少し出る。


もう一度、手首に包丁を当てる。

また血が出る。


真彩、何かに取り憑かれているかの様。


今度で最後とばかりに、手首に包丁を強く押し当てる。 


そして包丁を引こうとした時、後ろから悠斗の手が真彩の手を掴み、真彩のリストカットを阻止する。


悠斗「何やってんだ!」

と、真彩を怒鳴る悠斗。


真彩、ボーッとした顔で、ゆっくり悠斗を見る。

自分が今、何をしていたのか分かっていない状態の真彩。


悠斗、真彩から包丁を取り上げ、シンクの中に置く。

そして、真彩を椅子に座らせ、真彩の傷付いた手首に、何枚かテッシュを乗せる。


そして悠斗、急いでリビングの棚に置いてある救急箱を取りに行き、真彩の手当てをする。


悠斗、泣きながら、真彩の傷付いた手首をガーゼで止血し、そして消毒する。


真彩は、意識があるのか無いのか、茫然とした状態。


悠斗「何やってんだよー。死ぬなよ。死んじゃーダメだろ」


悠斗、包帯を巻きながら真彩に言ってるのだが、真彩、無反応。


悠斗、涙が止まらず。


そこに、亜希が、

「只今ー!」

と言って、買物から帰って来た。


亜希、悠斗が泣きながら真彩の手首に包帯を巻いてる姿を見て、唖然とする。


亜希「えぇー?!……」


亜希、目の前の状況に力が抜け、膝がガクガクし、そして、泣き出す。


亜希、シンクの中にある包丁を見る。


亜希「あぁ……」

亜希、ショックを受けている。


亜希、悠斗に包帯を巻いて貰っている真彩を、後ろから抱き締める。


     ×  ×  ×


亜希、この日はどうしても外せない用事があったので、真彩を監視する様に悠斗に頼んだ。


悠斗が、真彩の部屋に、雑炊とお茶を持って行く。


真彩、上布団を被ったまま、ベッドで横になっている。


悠斗、雑炊を真彩の机の上に置き、真彩をベッドから起こして食べさせようと試みる。


悠斗「美味しいぞ、ほらっ、食べよう?」


真彩「要らない……」

と、真彩、蚊の鳴くような声で言う。


悠斗「お前なぁー、餓死する気か? もう、まる三日、何も食べて無いじゃないか!」 

 

真彩、何も言わず。


仕方ないので、上布団をめくり、真彩の横に、一緒に横たわり、真彩の反応を見る悠斗。


すると真彩、身体を翻し、悠斗を背にする。


悠斗「あのさー、真彩……真彩は俺の大事な大事な、たった一人の妹なんだよ。俺は、真彩が他人だって思った事、一度もないんだからな!」


真彩「……他人だよ。だって、血が繋がってないもん……」


悠斗「だから何だって言うんだよ。血の繋がりが何だって言うんだよ。そんなのどうだって良いだろ」


真彩「良くないもん。だって、血が繋がってなかったら、赤の他人だもん……」


悠斗「あのなー、何度も言ってるだろ? 俺達は家族なの! なぁ、こっち向いて?!」


しかし、真彩、悠斗に背を向けたまま、動こうとはしない。


仕方ないので、悠斗、無理矢理、真彩の身体を仰向けにする。


すると、真彩、涙目で悠斗を見る。


悠斗、じっと真彩を見る。


そして、悠斗、真彩の腹を触る。


悠斗「こんなに痩せちゃって……ぺったんこじゃないか……」

と言って、悠斗、真彩をじーっと見詰めている。


すると悠斗、真彩のおでこにキスをする。


悠斗、真彩に、

悠斗「真彩……俺の事、好き? 嫌い?」

と、真彩に訊ねる。


すると、真彩、

真彩「……嫌い」

と、答える。


悠斗「えぇ? ホント? 俺の事、嫌いなの?」

と言って、悠斗、悲しい顔をする。


すると真彩、

真彩「……嫌いじゃない」

と、言い直し、悠斗の目をじっと見詰める真彩。


悠斗「じゃー、俺の事、好き???」

と、言葉を替えて聞く悠斗。


真彩「……」

真彩、言葉には出さないが、頷く。


悠斗、また、真彩のおでこにキスをする。

そして、唇にも優しくキスをする。


真彩、悠斗をじっと見詰めている。

 

すると悠斗、

悠斗「あぁー、ダメだ、我慢出来ない」

と言って、真彩を抱き締める。


悠斗「真彩、好きだ。大好きだ」


真彩「?……」


悠斗「妹としてじゃない。女として、真彩が好きだ」

   

悠斗、また真彩の唇にキスをする。


悠斗、行動がエスカレートし、真彩の首筋を愛撫する。


そして、悠斗、真彩の胸を触る。


悠斗「真彩……大好きだ。もう我慢出来ない。真彩を俺のものにしたい」

   

真彩、悠斗の言葉に驚く。


悠斗「良いか?」

悠斗、真剣な顔で真彩をじっと見詰める。


真彩「……」

真彩、何も言えず。


悠斗「あぁ……真彩、好きだ。大好きだ。愛してる」

と言って、真彩を抱き締める悠斗。


そして、悠斗、真彩の上パジャマを上にあげ、真彩の乳房を愛撫する。


真彩の目に溜まっていた涙が、零れ落ちる。


(回想終わり)



真正寺の庭で、ベンチに座って空を眺めている真彩。


過去の出来事を思い出し、「ふっ……」と、微笑む。


そこに亜希がやって来る。


亜希「真彩、お疲れ様! 忙しいのに、有難うね!」


真彩「ううん……」

真彩、微笑みながら、首を横に振る。


亜希「んん? 何かあった?」

真彩の様子が変なので、気になる亜希。


真彩「何もないよ。ちょっと昔の事、思い出しちゃって……」


亜希「えぇ?……」

亜希、少し驚いた顔をする。


そして、

亜希「真彩、大丈夫?」

と、心配そうな顔で真彩を見る亜希。


真彩「あぁ、大丈夫だよ。大丈夫。あぁ、それより、石田さんなんだけど、ひょっとして認知症入ってる?」


亜希「えぇー? そんなの誰からも聞いて無いし、認知症の症状ってないけど? だってあんなにしっかりしてらっしゃるんだよ? 何度も同じ事、言わないし……」


真彩「そっか……」


亜希「ママなんかよりも、しっかりしてらっしゃるよ」


真彩「ふーん……」


亜希「えぇ? 何で認知症かも?……って思ったの?」


真彩「あぁ、会う度に私の事、『真彩様』って、様付けするから……」


亜希「?……」


真彩「それに、私に後光が射してるって言うし、目が殆ど見えないのに何で?……って思ったから。だから、ひょっとして脳に障害あるのかな?……って思ったの」


亜希「あぁ……あのね、例えば、森山さんのおばあちゃん居るでしょ?」


真彩「うん。あの元気なおばあちゃんね」


亜希「あの人も真彩の事、『真彩様』って言って、会うと真彩に合掌してない?」


真彩「あぁ、される。だからこっちも合掌して返す(笑)」 


亜希「という事なんよ」


真彩「えっ? 意味分からん……」


亜希「石田さんも森山さんも、見える人だって事……」


真彩「んん? 何が?」


亜希「見える人には見える。分かる人には分かるの。真彩に後光が射してるって……」

   

亜希の言葉に即、反応して、

真彩「んなアホな」

とツッコミを入れる真彩。


真彩「だって、ママには見えないでしょ? 私が後光射してる姿なんて」


亜希「あぁ、赤ちゃんの時からずっと見えてるよ?!」


真彩「またー、冗談言わないでよ」


亜希の言う事を、冗談だと思っている真彩。


亜希(心の声)「ホントだよ。だからママは、み仏様からお預かりした大切な子なんだと思って、真彩を大事に、大事に育てたんだよ!」


すると、

悠斗「マーヤちゃん、かーえろ?」

と、何処からともなく悠斗が現れた。


真彩「あっ、ひょうきん悠斗だ」


真彩と亜希、笑いながら、座っていたベンチから立ち上がる。


悠斗「何? 二人でニタニタしちゃって……あっ、俺の悪口言ってたでしょ?!」

と言って、悠斗、真彩の顔を覗き込む。


真彩「あの、お護摩焚いて頂いた後に悪口なんて言う? 石田さんが認知症じゃないかって心配してたの!」


悠斗「えっ、そうなの?」


真彩「ううん。そうじゃなかったって分かって、安心したところ」


悠斗「なーんだ、それは良かった。真彩は心配性だからなぁー」


真彩「悠斗がノー天気過ぎるんだよ」


悠斗「俺のどこがノー天気なんだよー」

と言って、真彩にわざと喧嘩を吹っ掛ける悠斗。


そして、悠斗、上から真彩を見下ろす。


真彩「ノー天気でしょ? 自覚無いの?」


悠斗「そんなの無いよ」

悠斗、ちょっと口を尖らす。


亜希、二人の口喧嘩に、ちょっと心配顔になる。


すると、

真彩「そんなノー天気な処が大好きなの!」

と言って、真彩、背伸びして悠斗の唇にキスをする。


すると、悠斗、笑顔になり、

悠斗「ふふっ、真彩ちゃん、大―好き」

と言って、真彩の唇にキスを返す。


亜希「もうー、誰かに見られたらどうするの?! じゃれあう喧嘩コントは家でやんなさい!」


悠斗と真彩「はーい」

と言って、微笑む二人。


そんな悠斗と真彩を見て、亜希、微笑む。

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