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スノーベリー:あのひとに捧げたい
茹で上げた途端の白玉のように輝く
スノーベリーを
あのひとはどのように活けるのだろう?
葉は一枚一枚丁寧に取り除き
水盤に剣山を置き樹氷のように立てるのだろうか
花瓶に深く挿して雪玉の重さに枝をしならせ
お正月のまゆ玉飾りのようだろうか
フラワーアレンジではわき役の枝ものも
和服のあのひとの生け花では
主役になるのかもしれない
あのひとの手にかかったスノーベリーは
水を得た魚のように生き生きと
たとえ脇役であろうとも
その存在感を主張する
その純白さは唯一無二
私の恋心のように
傷つきやすく柔らかく
でもけがれのない私を
あのひとに捧げたい
家元の長く骨ばった繊細な指は
私を水盤の上に操る
私を愛でてくださいますか……?