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ヒイラギナンテン:鳴り響く魔除けの鈴はあなたの言葉
疲れ果てていた仕事帰り
植込みに目を止めて
ふと立ち止まった雑居ビルから
出てきたのがあなただった……
あなたは彫刻のような横顔で
それは澄んだ瞳をしていて
私は一目で目を奪われた
急に上を向いたせいかくらりとして
あなたは「貧血ですか?」と近づいた
心配げな瞳
突然の優しさ
そんなあなたを前にして
私の瞳からはからずも
涙が一粒溢れて落ちた
あなたは目をしばたたかせて
そして私をそっと片手で支えた
身体がふっと軽くなる
細いくせに無駄のない強い腕
私の涙は止まるところを知らない
「辛かったんですね」
それは植え込みのこの
ヒイラギナンテンを思わせるかのように
鳴り響いた
それはきっと魔除けの鈴
あなたの言葉
やさしい言葉