セアノサス:パパはアメリカ帰りのアラフォー侯爵
このリレー詩集のエピソード18「チューリップ:親として男として」の娘側の事情としてこの詩は生まれました。合わせてお楽しみください。
私のパパはカリフォルニア生まれ
水色の似合う爽やかなイケオジで
私を守るようにその腕を差しかける
昔からパパは私の自慢のパパで
腕を組んで歩くと皆から一斉に注目を浴びる
そんなパパが一番だいすき
デビュタントの春が来て
赤いドレスの私をパパがエスコート
夜会の初めは誇らしげだったのに
パパの青い瞳がだんだん翳ってく
「君はもうパパの手を離れていくんだね」
そんな呟きがパパの口から漏れた
「パパ、私はいくつになっても
パパの愛娘よ」
私はパパの腕をひきながら
にっこりと微笑んだ
貴公子が私たちのほうに歩いてくる
ああ、ダンスを申し込まれちゃう
そう思ったからパパに囁いた
「ね、パパ、次は私と踊って?」
ヴィエニーズ・ワルツが流れ出す
くるくるくるくる旋回するステップは
昔パパが連れて行ってくれた遊園地の’ティーカップ
バカなパパ
私がパパから離れるわけないじゃない
ワルツがコーダに移ったら
目が回ったふりをして
パパの胸に抱きついちゃおう
「そうだ。君はパパの自慢の娘だ」
ステップを踏みながらも
パパの言葉はどこか弱い
パパの本当の気持ち知ってる
私がパパの領地の教会に捨てられた子だということも
口さが無い召使いたちが
パパのいないところで噂話に耽るから
彼らは今でも
若くして亡くなった女主人を偲んでいるから
私……
私はパパが好き
どんなボーイフレンドより誰より好きだから
だからパパ、待ってて
この「好き」をいつか「愛してる」て
パパの目を見つめて言える日まで
その時はきっと
「一度目のお嫁さんより私が好き」って微笑んで




