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木蓮:シトラスノートの香る夜に
ほのかにふわり香った
レモンにも似た爽やかなシトラスノートの
君の洗い髪
それは微かに甘い木蓮の香り
白い鳩が群れをなしてとまっているような
あの裸樹の下で
僕の身体に降りかかった
あの香りが僕の指を震わせる
君の髪に
君の躰に
触れてもいいだろうか
これ以上、君との距離を詰めても……
付き合い始めてもう2か月
いや、まだ2か月
君は僕を部屋に上げて
手料理をふるまってくれ
「待ってて」と言って席を外した
戻ってきたのは木蓮の女神……
純白の肌
黒い後れ毛
香るのはほのかなシトラスノート
ああ、君に
まっさらな君に手を触れてもいいのだろうか
惑う僕に君は
そっと寄りかかった
白く優美な曲線のフォルム
湯上りの君の熱が急速に移りこむ
ソファの上の二つの躰の間で
恋人つなぎをしてみたけれども
この手が離れた瞬間
それが僕の箍の外れる時……