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梅・御所紅:幸せであれ、僕の御所紅の君
遅咲きの御所紅の香りが
隣の君の家の庭から漂う春
君は髪を結い上げ
薄紅色の袴姿で今日の卒業式の日を迎えた
桃の花と見紛うほどに優しい色の着物に
芯の剛さを思わせる真っ直ぐな袴のプリーツ
いたずらしてからかって一緒に遊んだ
幼い頃が信じられないほどに
君は清々しくも美しく
明日からの希望の日々に
目を輝かせている
君の隣にはちゃんとエスコートしてくれる
男がいるんだね
昔は正直になれず君のこと傷つけた
高校時代は意識し過ぎて
会話さえもできなくて
そう、本当の僕の気持ちは
君は知らない
明日からは遠く旅立つ君
君の幸せを僕は祈るだけ
どうか幸せであれ
僕の御所紅の君……




