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黄水仙:黄金色に輝く恋のカケラ
昔ワーズワースという詩人が
はぐれた雲のように彷徨って
この花の群落に出会ったらしい
無数の黄水仙の花がいっせいに首をもたげ
風に揺らめくさまはひどく神秘的で
詩人の魂もまた
その幻想の中でともに息づき始めたのだろう
人を詩人に変えるきっかけは
とてつもない孤独だったり
逝ってしまった伴侶だったり
若き日の苦い恋だったり
詩は感情の発露だろう
とどめておけない想いを形にして
自分をそっと慰める
そんな人々の心の内を
俯きかけて打ち明け話を聞いてくれ
黄金色に輝かせる
ひとつひとつの黄水仙が
辛い恋のカケラを秘めているとしたら
黄水仙はもしかしたら
いつの日か恋に命を落とした詩人なのかもしれない