嘘つき
休日、ブーブーと鳴り続けるスマホで目を覚ました。
朝早くから迷惑だ。
おはよーと聞き覚えのある声がする。友達の晴だ。
部活に遅れたら許さないとのことだ。外を見るとまだ薄暗い。
僕は朝が嫌いだ。朝早くから寝癖を直し学校へ行く準備をしなければならないからだ。
だが、部活だけは楽しくやれていた。僕の生き甲斐と言ってもいいぐらい部活でやっている陸上が大好きだ。そんなことは考えてる暇はない。とにかく時間がない。僕はご飯を食べ、制服に着替えて駅まで向かった。ちょうどいい頃に電車がきた。いつもと同じだ。毎日同じことを繰り返している。とても平凡な生活だ。
学校までは電車で1時間ほどで着く。おはようと部長が挨拶をしてくれる。なんだかんだこんな日常をずっと繰り返していたのだ。あの子に出会うまでは。
あの子に会ったのは去年の8月だ。友達の美紅の紹介で初めて存在を知った。写真を見せられたのだ。正直顔は好みではなかった。この子とはなにもないだろうと思った。だが、美紅の紹介ということもあり話してみることにした。
「はじめまして!!僕は陽斗って言います!よろしく!!」
「こんにちわー!はじめまして!維里菜って言う!!よろしくね!」
これがきっかけで維里菜と話すようになった。
ある日、維里菜と2人で会うことになった。場所は維里菜の最寄りの駅にした。僕は集合時間より30分早く着いてしまった。
暇をしていると1匹の子猫を見つけた。僕は子猫を追いかけてしまった。気づいた頃にはここはどこかわからなかった。維里菜に連絡をして、なんとか合流することができた。思っていたより身長は低くとても可愛らしかった。もうこの時点で好きになってしまっていたのかもしれない。可愛らしい見た目とは真逆に大人っぽい性格をしていた。いわゆるギャップもえだ。すごい可愛かったんだ。特になにもせずに世間話をしてその日は解散した。
それから2ヶ月間学校帰りに維里菜の地元に行ったり、電話をしたりして距離が縮まっていた。
その日も学校帰りに地元に行き2人であるきながら話した。蛍光灯で照らされているアピタという文字のまるが消えていた。アヒタだね。なんてろくでもないことを話していた。そんな時間がずっと続けばいいのにと思った。帰りたくなかった。にこにこ笑う維里菜の横顔を見ると好きだと確信した。
帰り際の駅前。僕は「維里菜の事好きになっちゃったんだ。もしよかったら俺と付き合って欲しい。」と顔を赤くしながら思いを伝えた。「維里菜でよければ!」と嬉しそうにはしゃぐところを見ると全てが愛おしかった。初めて直接告白されたの事。なんて答えればいいかわからなかったけどこれでよかったかな?なんて可愛すぎた。帰りの電車に乗ったとき
「バイバイ!彼女」
「うぅ、死ぬ。大好き!」
カップルだななんて思いながらニヤニヤしていた。
その日も夜中まで電話をした。
「おやすみ!またね!笑 またねはまた会おうねって言う意味で大切な人にしか使わないよ!」
「なにそれ笑 またね!!おやすみ!!」
2ヶ月記念の時にOpen When letter というものを渡した。
会いたくなったとき、喧嘩したとき、ハグをしたくなったとき、
辛くなったとき、僕の事を嫌いになったときなど。
今はそれを渡したことに後悔をしている。
初めて喧嘩したのは10月31日だ。維里菜は友達と栄ハロに行くと行っていた。僕は男が来るなんて知らなかった。12時を回ったときに連絡がきた。
「まだ外にいる。友達が忘れ物して勝手に入っちゃって警察に捕まっちゃった。」的なことだった。僕はそのときその友達が男とは知らなかった。気をつけて帰っておいで。でそのときは済んだ。次の日詳しく話を聞くと男友達2人と女の子の友達で行ったとのこと。僕は以前付き合ってた人に浮気をされていた。それもあって信用しきれてなかったのかもしれない。そのせいで言いすぎてしまった。大好きな人を傷つけたくなかった。本当にごめんね。なんとか、仲は戻ったと思っていた。
その1ヶ月後に僕の恋は終わった。
維里菜から好きかわからなくなったとのLINEがきた。
距離を置くことも考えた。まずは維里菜のお母さんに気持ちを伝えることにした。そしたら、維里菜は僕の気持ちを聞いて泣いてしまった。2人で話し合うきっかけを維里菜のお母さんはくれたのだ。2人で泣きながら何時間も話し合い、もう一回付き合うことになった。そのときにこの人とは結婚するんだと思った。
いくら恋人でも何回かは嫌いになるときが来るときがあると思う。家族でもあるのだから。誰にだっていつかはきてしまう。それをどう乗り越えるかだと僕は考えるようにしていた。
ある日、僕は部活、勉強、バイト、恋愛なにもかもが嫌になってしまった。維里菜に距離を置きたい。自分勝手でごめん。と伝えた。すると維里菜は「わかった。陽斗がまた戻ってきてくれるまで待ってる!ゆっくりでいいよ。」と。
なんて優しい人なんだ。天使だ。と僕は感じた。
大好きだよ。
それからずっと友達と言う関係が続いていた。
12月、維里菜とクリスマスプレゼントを交換すると約束した。
だが、維里菜に似合うものが見つからずクリスマスに間に合うことができなかった。「ごめんね。」と僕は謝った。「全然いいよ!」と言ってくれたね。僕が維里菜に似合うものを見つけたのは4月だった。遅すぎた。なにもかも遅すぎたんだ。
4月に入ったあたりから維里菜の態度が少しずつ冷たくなっていることに気づいていた。「好き」が減り「うん」が増えていく。
僕は寂しかった。4月30日突然来週の遊びを断られた。2週間前から遊ぼうと約束していた。「友達のファッションショーが入ってるの忘れてた。ごめん。」とのこと僕は友達より下に考えられていると感じた。
次の日、僕は余分なことを聞いてしまった。
「俺は友達より下なの?」
「なにそれ笑友達じゃないってこと?」
と返信がきた。もうこの頃に維里菜の心の中には僕はいないとわかった。とても辛かった。
5月1日の朝。僕は学校に行く途中だった。
1件のLINEの通知がきていた。維里菜だった。
「ごめん。もう限界です。連絡切ります。」
僕は理解できなかった。1度LINEを閉じまた学校に着き見直した。夢かと思った。頬をつねっても痛い。現実だった。最悪だ。
もう維里菜に連絡をしようとしたときにはLINEもインスタも全てブロックされていた。そのときに維里菜との思い出が全てよみがえった。記念日に歌詞動画を作ってくれたこと。一緒にホラー映画を見に行ったこと。維里菜の弟と一緒にサッカーをしたこと。妹を抱っこしたこと。カラオケで勝負したこと。初めてお互いキスをしたこと。初めてをあげたこと。確かにそこに愛が存在していた。だが、伝えることができていなかった。
会うときも急に誘ってしまってばかりで友達と遊ぶことができなかったり、負担をかけてばかりだった。維里菜の優しさに甘えてばかりだった。いつまでたっても子供だったのは僕だった。
僕は復縁したかった。だが、案の定話すことなんてできず、維里菜の友達に連絡をした。したのが間違いだった。僕はその友達に自殺する寸前まで追い詰められた。言葉の暴力だ。でも仕方ない。それぐらい維里菜に辛い思いをさせてしまったから。
5月10日、僕は維里菜と最後に会った河川敷に行った。
ぼーっと風景を眺めていた。1度空を見上げた。すると太陽の回りに虹が2つできていた。いいことがありそうだった。
もう少し待ってみるか。待ってよかった。維里菜がきたのだ。
来るはずないと思っていた。もう二度と会えないと思っていた。僕は泣きながら話した。帰ったら終わりそうで、帰れなかった。維里菜はすごい疲れたかおしていた。泣いたんだなとわかった。
維里菜は復縁はしないと言った。涙があふれでた。
別れ際、僕はハグをしてしまった。離したくなかった。このまま時間が止まればいいのに。もう会えなくなる気がしたから。
今、彼氏がいるのかもしれない。他に好きな人ができたのかもしれない。だけど、僕は諦めないでまた付き合って見せる。永遠なんてないのかもしれない。本気で愛した維里菜だけは絶対諦めたくない。これからもずっと大好きだよ。ずっと一緒にいるなんて嘘だった。嘘つき。