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トライアルズアンドエラーズ  作者: 中谷干
Vol.01 - 復活
16/74

01-016 復活

「どうかしたんですか?」

 難しい顔で考え込む様子のナオに、ケイイチが恐る恐る声をかける。


「おじさんが現れた」

「へ?」

 ケイイチは、ナオの言う意味がよく分からずに呆けた表情になる。

「今現在の監視映像」

 ナオはそう言って、リアルタイム映像から切り出したスナップを、ケイイチにARで投げてよこした。


 その中身を確認して、ケイイチの目が見開かれる。

「これってどういう……」

「わからない」

「蘇った、って事ですか?」

 ナオは黙って首を横に振る。

「亡霊とかそういう……」

「そんなものはいない」

 言いながら、ナオはどんな可能性があるか考えていた。


 6時間前に死んだのは、博士(おじさん)だと確定している。

 遺体は間違いなく警察にある。

 それに、博士はプライベート持ちだ。今こうして監視映像にはっきりと映っている事から考えても、これは博士とは別人と考えて間違いない……と思う。


 ――でも、じゃあ、別人だとして、狙いは何だ?

 ここまで外見をそっくりにして、服装も同じにして。

 やっている事は、博士と同じ、アンドロイドの破壊。

 例の切断デバイス含め、博士が使っていたのと同じ機材一式を持ち、博士と全く同じ手順で今まさにアンドロイドを破壊している。

 一体、これは何者だ?

 何がしたい?


『私はこれを壊さなくてはいけないんです』


 博士のその言葉と、どこか狂信的な目が脳裏をよぎる。

 電脳を破壊しないといけない。

 その執念が、博士を蘇らせたとでも言うのだろうか。


『またお目にかかりましょう』


 あの言葉は、こうなる事を予見していた、という事なのだろうか。


 ――わからない。

 わからない以上、ここで監視映像を眺めていても何も始まらない。

「とりあえず現場行く」

 ナオはソファにかけてあった白衣を手に取り、いそいそと現場に向かう準備を始めた。

「助手は帰りな」

 さすがにこれ以上、ただの素人であるケイイチを巻き込むわけにはいかない。ナオはケイイチに今日のバイトは終わり、とばかりに帰宅を促すが、

「あの……」

「ん?」

「一緒に行ってもいい……ですか?」

 ケイイチは、恐る恐るそう言った。

「なんで?」

「えっと、気になるというか……」

 この緊急時につまらない事を言うと容赦しないよ、とでも言わんばかりのナオの鋭い問いに、ケイイチはしどろもどろになりながら答える。


 正直、ケイイチ自身も、自分がなんでそんな事を言い出したのか分からない。

 自分のような素人がいたところで邪魔にしかならないだろうし、また数時間前のようなとんでもない場面に出くわす可能性もある。

 それでも、ケイイチは行かなくてはいけない気がしていた。

 尊敬する博士に関わる事の顛末を知りたいという気持ちもある。

 でも――一番強い気持ちは何かと言われたら、それは多分、今さっき博士の死の現場を見て倒れたこの小さな女性を、一人で行かせるのは人として間違っている。そんな幼少期から培った無駄な正義感に突き動かされた、というのが正しいのかもしれない。


「中途半端な好奇心は危険」

「そういうんじゃないです」

「ふぅん」

 ナオはじっとケイイチの目を見る。

 ケイイチは、その目を真っ直ぐに見返す。

「危ない目にあうかも」

「大丈夫です」

 ナオはそれ以上何も言わなかった。

 ケイイチはそれを許可と受け取り、黙ってナオに付き従い、現場へと向かった。

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