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毎朝のまどろみ


ゆったりとした微睡みから自然と目覚めると俺は徐に部屋の窓に近づいていった。


ステンドグラスの様な細工がかかった美しい飛び出た窓。人が一人座れるくらいの幅の枠が縁取ってあり、そこにはボワァとあたたかな光を生み出しているランプの様な花が鉢に植えられて置いてある。

ルゥーサァーンという自然の魔力を吸収して、クリスタルの様な花弁が輝く天然のランプだ。俺はこのランプの花が綺麗でとても気に入っている。

仄かな光を宿すルゥーサァーンは人間の魔力をほんの少し流すと光が消える為、誰でもランプとして活用することができる優れものだ。

俺はルゥーサァーンを縁に置き、ずっと光を宿している。俺の部屋はとてつもなく広い為、一つ明かりがついていてもなんの支障もない。

この国には電気製品がない代わりに魔法と、不思議な植物がその役割を補っている。


俺は毎朝この縁でこの国の伝記や伝説、ファンタジーなどの本をルゥーサァーンで照らしながら読むのが日課となっている。

このゆったりとした自分だけの時間は前世に無かった為俺はこの時間をとても大切に思っている。


コンコンとドアをノックする音が響くと一人の女性が入ってきた。


「ノア様、失礼致します。」


エマだ。カラカラと紅茶の乗った台車を押しながら俺が寝ていたベッドへ近づいていった。


「ノア様、朝ですよ…また居ない。ノア様はまた窓の縁の方かしら。」


流石よくわかっていらっしゃる。俺の専属侍女なだけある。俺のエマは優秀だからな。


「あら、やっぱりここに。おはようございますノア様。相変わらず早いのですね。今日はなんの本を読んでいるのですか?」


エマが俺を見つけるとゆったりと笑いながら近づいてきた。

俺が読んでいる本は実はエマのセレクトなのだ。エマは本が大好きで実家の書籍を読み漁ったらしい。

公爵家の書籍はとても多いだろう。

そのためいろいろな本を知っていて俺にお勧めを持ってきてくれる。


「おはようエマ。今日はルエディア王国の精霊談だよ。」

「まぁ。その本は絵がとても美しい本ですよね。ストーリーも繊細で美しくとても興味深い本です。」


エマは本の感想を俺に伝えながら紅茶を俺に差し出した。ふわりと上品な茶葉の香りが漂ってきた。

エマは毎朝目覚めの紅茶を持ってきてくれる。地方の茶葉や珍しい茶葉などいろいろな種類を出してくれる為俺は密かに楽しみにしている。


「どうぞノア様。今日の紅茶はフリーギドゥスプラクラ王国の新雪に埋もれて育つ不思議な茶葉を使ったネージュティです。琥珀色の紅茶で濃厚な味です。ミルクを入れても美味しいですよ。後でお持ちしますね。」

「ありがとう。いい匂いだね。母上の国の紅茶かぁ。なんかいいね。」

「ふふ。ノア様はソフィア様が大好きですね。五歳になっても変わらなくて何よりです。」

「そりゃあね。母上はいつでも大好きだよ。」


そう、俺は五歳になった。

成長した俺の容姿は一層中性的になった。イケメンよりも綺麗という表現が合う様な容姿だ。もっと成長してもこれは変わらないだろう。せっかくならイケメンに生まれたかったが。

改めて俺の容姿を見ると輝く美しい水色がかった白銀髪に水色、青、アンバー、紫などが、角度によって違って見える綺麗なグラデーションの瞳。


「ノア様。今日はどう致しますか?ルーシェリフ様からのお茶会のお誘いが来ておりますが。」

「行くよ。そうリフ兄様に伝えて。お菓子の準備はエマに任せるね。」

「かしこまりました。」


あれからリフ兄様との交流は続いた。たまに南の庭園でお茶会を開いて会話に花を咲かしている。

他の兄様達との接触はまだないが、この宮殿には8人の王子と5人の妃がいることが分かった。


正妃アン・ベルディアノ。エマと同じ五摂家の一つの公爵家、ベルディアノ家の令嬢だ。

そして子供が第一王子のルイス兄様と第三王子のカルネリアス兄様。


第二妃クリスティーナ・フルベルナ。となりのルーインラッド帝国の王女で子供が第二王子のルーカス兄様。


第三妃マリエッタ・リルベル。東にある大きな孤島、アナトリの王女で子供が第四王子のリンドリア兄様と第六王子のジャンウェン兄様。


第四妃フレアリディ・スノールド。エルフの王国、ナートゥーラ王国の王女でエルフ。子供は第五王子のスフアリフィル兄様と第七王子のルーシェリフことリフ兄様。


そして第五妃が俺の母ソフィア・フレアルリス。精霊の王国フリーギドゥスプラクラ王国の王女。子供は第八王子の俺だけだ。


俺は五年ぶりに生まれた王子だったらしく、他の兄様達とは結構歳が離れている。

しかし、他の兄様達ともいい関係を築きたいと俺は思っている。だって王子の兄達だよ。めちゃくちゃ興味あるでしょ。俺も王子だけど。


エマが入れてくれたネージュティを味わいながら俺は窓の外眺めた。

エマが入れてくれる一級品の紅茶を飲みながらルゥーサァーンのクリスタルで照らされ読書を楽しみ、季節を味わえる豪華な景色を眺めるこの場所はとても幻想的で素晴らしい特等席だと思う。

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