裏プロローグ
「××××まだ帰らないの?」
先程まで神々が集まり会議をしていた神の間は神々がそれぞれの界に帰ったことにより静かさを取り戻していた。それに伴い散々と射していた部屋の光も消えつつあった。
闇が広がりつつある部屋の中、また美しい黒いマントを羽織った青年が一人佇んでいた。その青年が一向に帰る素振りを見せない為、唯一残っていた他の神が尋ねたのだ。
青年は目元まで覆ったフードを手でより深く被った後、口元を歪ませた。意味ありげに微笑んだのだ。
「もう少し、ここにいるよ。この子の映像をもう少し見たいんだ。」
冷ややかで艶やかな声を発した。
フードで何を考えているのかがよくわからないのがより一層青年を魅力的に魅せた。
「そう。じゃあお先にー。」
他の神も気にする事なく返事をし、この場を去っていく。神々は個性的で気まぐれなのだ。尋ねた他の神も例外ではない。神々に深い探索は通じないのだ。
青年は一人になると部屋の明かりを全て消した。深く、どこまでも落ちていく黒が生まれた。その中にいる青年はより一層妖艶で、残酷な空気を纏っていた。
青年は何かを待ち望んだかのような笑みを浮かべながら先程話題になっていた少年の動画を再び再生した。濡れた黒曜石の様な瞳を散乱と輝かせながら。
そして徐に鈍く輝く物を懐から出すと動画を映し出している鏡の様なものに勢いよく投げつけた。
パリンッガシャンッ!
投げたものは血のついた銀のナイフだった。
映し出していた器具が割れると同時に映像も割れた。まるで少年が壊れ、砕け散った様に。
青年は悲痛な笑みを浮かべながら破片を拾い、自身の皮膚をツッーと撫でた。
赤い線が浮かび、血が滲むのを膀胱と見ながら目に強い光を灯す。
その光は復讐や、殺戮を思い上がらせた。
「あの神達は何も気づかない。この転生が意図的に行われた事さえも。たかがあれだけで不幸?平和ボケした神達には困るな。あいつにはもっと苦しんでもらわなくちゃ。」
ポツポツと呟きながら血が垂れるのを見ている。その声は冷たく凍える様にあたりに響いた。
「あいつには呪いで毎年ボロボロになり、真実に近づくたびに身が滅びるほど苦しんでもらわなくては。周りの人に害されながら愚かに滅んでもらわなくては。××××の為にも。なあ、×××××。」
甘い声で軽々と、あり得ないくらい残酷な事を言いのけた青年は漆黒の、死を運ぶマントをばさりと翻しながら一人、自身の領域である夜と死の世界冥界に闇に呑まれながら消えていった。
これは千年以上前から紡がれる滑稽で残酷な神々の物語。
魂と呪いに雁字搦めに拘束された哀れな神々の、壊れた真実を再び甦らせる破滅の物語