将来やりたい無茶苦茶な計画
その後、俺は挨拶をするとそそくさと帰った。
そして自身の部屋のテーブルに着き、将来について考える。
最初はフレディ将軍から聞く冒険者の物語を聞き冒険者に憧れた。しかし、俺の固有スキルや王族という特殊な立場が裏目に出る気がする為ただの冒険者はなる意味がない気がする。
魔法を生かすには魔術師になるのがいいだろうが暗殺のスキルの意味がなくなってしまうし、色々なところを周りたい俺の夢が叶わない。
世界を回るには商人などが面白そうだったが、スキル二つを無駄にしてしまう。
ヴァンパイアの国やエルフ、精霊の国。
魔法に呪い、魔道具に神。
前世にないものがてんこ盛りなのだ。やりたい事を全て達成しなければ勿体ない。王族の立場なのだから。
前の縛られていた俺とは違う。
ちなみに大人しく王子として生きてゆく将来はない。
ひとつ、とても無謀で無茶苦茶で反逆罪をも問われるような計画が思い浮かんだが恩を仇で返すようで躊躇われる。
将来、どうしようか…
「ノア様。スフアリフィル様とルーシェリフ様がお訪ねに来ましたが、いかが致しましょうか。」
エマがフィル兄様とリフ兄様の来訪を告げた。
「ノアー。久しぶり!急に訪ねてごめんね。驚かせたくて。」
「ノア久しぶり。元気だったか?」
「全然いいですよ!久しぶりです兄様達。元気ですよ。フィル兄様は体大丈夫ですか?」
「ああ。平気だよ。あの後ノアが治療してくれたからね。」
三人でテーブルに着きお菓子と紅茶を楽しむ。
カップに触るととても温かく、俺の手が冷えていることに気づいた。
「あの、兄様は将来何をするか考えてますか?」
「俺ー?俺はエルフだし植物が好きだから自然について研究するよ。」
「僕は芸術の才があったので、魔法を込めた作品を生み出そうと思う。」
二人はキッパリと断言した。はっきりと将来が決まっているようだ。それに比べて俺は…
「ノアは将来について悩んでいるの?」
フィル兄様は勘が鋭く、俺の葛藤などすぐ見破られてしまった。
「は、い…ある事はあるのですけれど、家族の為に何もできない事で、自己中心的で、」
「自己中心的。難しい言葉を使うね。でもやりたいことはあるんでしょ?五歳でそれは凄いじゃん。僕は部屋を冷凍漬けにして閉じこもっていたよ。ははっ。」
「そうだよー。五歳であるのは凄いよ。ノアはノアが思っている以上に凄いよ。だから大丈夫。」
「それに、ノアの人生はノアのだ。家族は所詮他人。やりたい夢があれば切り捨てていいよ。家族のつながりは絶対に消えないんだからノアのやりたい事をやりな。」
「俺はノアに切り捨てられても離れないかなねっ!」
「ああ、僕もだ。」
二人の言葉がストンと胸の中に落ちた。
ああ、俺はこの言葉が欲しかったんだ。
俺の人生は俺のだ。俺が主導権を握れ。俺が導け。
ああ、ずっと求めていただろう自由を。
「ありがとうございます。兄様達。俺やってみます。」
「うん。俺はいつでもサポートするよ!」
「僕にいつでも頼れ。全て受け入れるから。」
二人は優しげに微笑んでくれた。
もう将来は決めた。揺るがない。
二人が帰ると俺は早速将来やりたい事をまとめた。
俺は自分の組織を作る。
王に忠誠を誓うのではなく俺に忠誠を誓う仲間を集めて、前世の記憶を使いこの世界を巡り、進化させる。
俺がやりたい事を何でもできるような大きな力のある少数人精鋭組織を作る。
俺はまずスフアリフィル学園とウンブラ学園、両方に入学をしたい。どちらも王族である事を隠して。
普通、両方の掛け持ちは難しいし情報管理的にも怪しまれる。特にウンブラ学園は王族ではなく王の学園だ。そこに侵入したら国家反逆を疑われても仕方がない。しかし、魔法と暗殺、鑑定を磨くには両方に入らなければ。それに、其々の得意分野を持つ仲間も欲しい。だからまずは学園に通じる太いパイプと、護衛と頭脳が必要だ。
組織の名前はこの国の言葉で個性を指すインディビジュアリーと自由を指すリーベルタースを合わせて、
『イビジュベルース』
広まってしまったら短縮して隠語としてビルスとも呼ぼうかな。
「エマ。紅茶ありがとう。あのね、あと…」
「先程の将来のことですよね。大丈夫です。内容は立場上聞きませんがいつでもエマはノア様の侍女で味方です。」
エマが強く微笑みながら断言する。
「最高の女性だねエマは!」
俺も心から笑った。
さあここからがイビジュベルースのスタートだ。




