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学園と大人の会話

宮殿や庭園、設備などから察する通り、ルエディア王国はとても豊かで財政にも余裕がある。そしてルエディア王国は大陸の中で一番力が集中しているだろう。各国の王族が嫁いできているし、貿易や技術も盛んに取り入れている。

魔法技術が進んでいる為、人間とあまり上手く関わることが出来ないとされていた長寿種族で魔法の最先端をいく精霊の使いであるエルフとの関係を好良にし、同盟を結んだ。今や友好国だ。

そして人間ではない種族で人間に似た姿をする種族がエルフの他にもいる。吸血鬼(ヴァンパイア)だ。彼等との関係も良好だ。なぜかというとルエディア王国の学園が深く関与している。


スキエンティア学園

王族や貴族、平民など色々な身分の人が通える大陸最大の学園。各国からの留学生も多く受け入れており、この学園から他国の文化などが入ってきているのだろう。


商業技術や貿易術、対人、対話術、金銭操作などを学ぶ商業科。


王族直下の兵力で、各地、民衆の護衛、暴れる竜の討伐、地方状況把握などを行う機動隊、国家騎士団。剣技や戦闘魔術、体術などを極めた戦闘のエキスパート達の集まりである。

その国家騎士団に関与した人物が剣技を教える国家騎士団入団に最も近い、剣技や体術を学ぶ戦闘特化の科、騎士科。


魔法の造形や歴史、発動条件や詠唱、新魔法陣の考察などを行う魔法技術先端の魔術師科。


などなど色々な科がある。


そしてもう一つの学園、ウンブラ学園。

諜報技術や暗殺術、巧みな対話術など表立って推奨することが出来ない分野を学ぶスキエンティア学園とは正反対の学園。

闇に生きるヴァンパイア達にとってこの学園はとても馴染みやすく、活躍が期待できる。

スキエンティア学園が王族の所有物であるのに対し、ウンブラ学園は王の所有物だ。

つまりウンブラ学園の技術を使い、指示できるのは厳密に王の座についた王族一人なのだ。

裏から支える圧倒的な権力の塊であるウンブラ学園と表から支える圧倒的な知名度を持つスキエンティア学園は対峙しているようで、共存している。多くの交流会や生徒交換など二つの学園で学べる技術は計り知れないほど貴重であり、有意義だ。

どちらかの学園に権力が集中しないよう、両方の学園に権力のある貴族が支援をし公平を保っている。

怪しそうなウンブラ学園だが、王直属の一つとして知名度が高く留学生や新入生が後を経たないそうだ。

両方とも

俺の固有スキル暗殺は間違いなくウンブラ学園に向いている。しかし、魔法と鑑定はスキエンティア学園の方が向いている気がする。

そして俺は将来何をしたいか明白に決まっていない。そんな状態で学園に入るのはいただけないだろう。


「ノア。じゃあ、学園に行かなくても私と話し合おう。とりあえず、それでいいか?」

「それなら構いませんよ。」

「じゃあ早速話し合いを始めよう。今日話したかったテーマは勇者と聖女についてだ。」

「勇者と聖女?二つともこの世界にあるんですか?」


勇者と聖女

前世のファンタジーでは王道だった特別な職業だ。伝記にも、母やエマの話にも出てこなかったからてっきりいないものだと思っていた。


「ノアは知らなかったのか。博識だからこれくらい知っていると思っていたが。」


カルネ兄様が心外そうに俺を眺めた。俺をなんだと思っているんだ。

そうしたら後ろに控えていたフレディ将軍が前に出てきた。


「カルネ様、会話を遮るような行為で申し訳ありません。ノア様の母君はフリーギドゥスプラクラ王国の王女でありまして、勇者と聖女の信仰国ではありませんので。」

「ああ。そうかフリーギドゥスプラクラ王国にとって勇者と聖女は取るに足らない存在だろうしな。フリーギドゥスプラクラ王国の信仰は精霊王一筋だし、フリーギドゥスプラクラ王国の国民は殆どが魔法に長けている。固有スキルの存在が少ないしな。それはエルフのナートゥーラ王国もヴァンパイアのタルノスラ王国も同じだな。」

「勇者と聖女の信仰国はどこです?」

「ルエディア王国も一応そうだ。あとはリズベクト王国とアナトリ国、ルーインラッド帝国もそうだぞ。正確には覚えていないが。」 

「成る程。そもそも勇者と聖女の定義はなんです?」


エマが淹れてくれた紅茶で口を麗し、カルネ兄様に改めて尋ねた。


「勇者と聖女はそれぞれ固有スキル勇者、聖女を持つものを指す。つまり生まれつきだ。この二つは血筋に殆ど左右されない存在だ。庶民や下級貴族からも生まれる奇抜的な固有スキルの持ち主。」

「分かりました。ではその勇者と聖女の何が問題なのですか?」

「勇者の固有スキルは戦闘能力の最高峰。聖女の固有スキルは治癒能力の最高峰だ。しかし、争いや災害がなくなることがない。」

「はい?」


カルネ兄様が深刻そうに告げた内容に思わず声を上げてしまった。

『争いや災害がなくならない』

それは至極当然の事ではないだろうか。

どんなに天才がいても全ての問題を解決し、再発するように予防する事のなど不可能。人一人が行える内容や範囲には必ず制限がある。どんなに世界最高峰の固有スキルを持つ二人が存在したとしてもこの世界全てを守ることなど出来るわけがない。


「当たり前では?人一人にはそれぞれ限界があるのですから。」

「何故だ?聖女の治癒の魔法で人間全員を癒し、諍いの原因を無くせばいい。災害は勇者の固有スキルで切ればいいだろう。」

「聖女の固有スキルは人間の心も変えるのですか?そこまでいったら洗脳ですね。」

「洗脳が出来る固有スキルは王族のみが持てる固有スキル、神シリーズだけだぞ?ルイス兄様やルーカス兄様だ。」

「では、聖女の治癒能力では人の心を変えることは出来ないではないですか。」

「何故だ。治癒能力だったら心の傷を治せるだろうが。」

「もしかして、心に物理的な傷が付くとでも?」

「物理的?実体があるということか。そうだ。心も体の一部だろう。心の傷が血を流し、それが原因で何らかの悪い作用が生まれ、人に負の感情が生まれるのだろう?」


そ、そんなわけないだろう。

という言葉は寸前で抑えた。

この世界は医療技術や常識が前世に比べ途轍もなく劣っているのだろう。

心は人間が具現化した存在しないもので、心に物理的な傷が付くわけでもなく、心から血が本当に流れるわけでもない。

小学校の保健の授業でも受けたら?


「心は実在しません。感情は心からではなく、脳からです。」

「?どういうことだ?」


カルネ兄様が混乱したように眉を寄せた。心の問題は後回しにしたほうがいいだろう。


「まあ、それは置いといて。勇者は災害なども切れるのですか?」


もう呆れながらカルネ兄様に尋ねた。


「切れるのではないか?最高峰の戦闘スキルだぞ?何でも切れるだろう。」

「勇者のスキルは魔法を切れるのですか?」

「ああ。そうだと聞く。だから切れるだろう?魔法も災害も同じだ。」


魔法と災害が同じ。


「そんなわけないでしょっっ!」

「え…」


思わず叫んでしまった。

俺は咳払いをし誤魔化すとカルネ兄様に災害の説明をしていった。


「カルネ兄様。災害とは自然が巻き起こす現象です。魔法とは別物です。」

「魔法は自然なものに干渉するだろう。だから同じではないのか。」

「魔法が引き起こす災害は別ですが、雨などによる災害は違います。雨は魔法でできているのではなく、空気中の水分が雲になってそして液体化して降ることです。空気中にある魔力を使い雨や水を生み出すのは出来ますが、それによって引き起こされる現象は人為的であり、災害とは呼びません。つまり、雨など自然の災害は世界の気候常識に従って考えるべきです。それを人為的に止めるには気候の常識、つまり世界の仕組みを変えなければいけません。そのような絶大な作用を戦闘能力では出来ません。そもそも災害は敵とかではありませんので、戦闘能力で解決とかありえない。」


俺は捲し立てるようにカルネ兄様に説明をした。


「…の、ノアはすごいな…本当に五歳か?」


カルネ兄様は汗を流しながら相打ちをうっている。

その様子を見て俺は我に返った。


「や、やってしまった。」


フレディ将軍も俺を驚きながら見ている。

天才児か?非凡か?

いや違う俺はただの


「五歳です!」

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