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カルネリアス様

俺は今、猛烈に混乱している。なぜかというと


「ノアぁぁぁぁ!頼む!頼むからぁぁ!」

「カルネ兄様煩いですっ!」


第三王子のカルネリアス兄様に泣きつかれているからだ。

遡る事約一時間前


***

「ノアはとても賢いから勉強好きで魔法好きのカルネリアスと気が合うかもね。」


ある日、ルイス兄様とお茶を飲んでいるとルイス兄様が突然第三王子であるカルネリアス様について話し出した。カルネリアス兄様はルイス兄様と同じ母を持つ王子で、眼鏡をかけていて美形でとても博識なのだとか。俺はまだ会った事がない。


「カルネリアス兄様は確か学園で研究をしていると。」

「ああ。カルネリアスは将来スキエンティア学園の教授になりたいらしくてな。とくに魔法が好きで魔法の才能にも秀でている。主に魔法の研究を行なっているそうだ。私もたまに訪れる。」

「へぇー。凄いですね。確かカルネリアス兄様は俺の十一個上の十六歳。ルイス兄様と同い年だったはず。」

「そうだよ。ルイスがカルネリアスより少し早かったんだ。」

「凄いですね。カルネリアス兄様は十六歳なのに研究なんてできて。ルーカス兄様も貿易に関わったり、新しい商売を考えたり。ルイス兄様は父上の仕事を支えて。」

「ノアはまだ五歳なのにすごいと思うけどね。今、ちょうどカルネリアスは学園から帰ってきているからケント宮殿にいるよ。今日でも会いに行くといい。」

「そうなんですか。」


返事をしたところでルイス兄様の部屋の扉が空いた。

ボタボタボタ…パタタ…

そして入ってきた人物はなんと…

「報告に来ました。」

「帰りましたぁー。」


真っ赤な血に染まったオーウェンさんとルーカス兄様。お互い夥しい量の血を身体中に纏いながら平然とつまらなそうに歩いてくる。そして俺を見つけると二人は途端に笑顔を浮かべてUターンをする。


「失礼しました。ごゆるくりと。」

「お邪魔しましたぁ。」

「いやいやいや、待ってください!」


俺は慌てた二人を引き止めた。

二人はバツの悪そうな顔をして視線は明後日の方向を向いている。


「なんですか、その流れてる血は…」

「人の血じゃぁないから安心してねー。」

「竜の血です。ちょっと楽しくなりすぎて悲惨な状況になってしまいましたが。」

「オーウェン、笑いながら竜を殴ってるんだもんー。返り血浴びながら笑ってて不気味だよぉー。」

「ルーも微笑みながら殺したたけどな。」


開き直った二人は笑いながら訳を話す。

暴走した竜、竜は邪素に当てられることによって暴走するのだ。

邪素に当てられ、凶暴化した動物を主に魔獣という。ルーカス兄様とオーウェンさんはおそらく邪素に当てられた竜を倒しに行ったのだろう。

もしかしなくても二人は戦闘狂だったとは…


「うーんじゃあ会ってきます!」


二人が無事であることを確認して、安心すると俺は会っていない兄様残り三人のうち一人のカルネリアス兄様に会うことにした。初めて行くケント宮殿へエマとフレディ将軍と向かい、カルネリアス兄様が今いると言われたバルコニーへ向かった。

バルコニーは色とりどりの花が咲いていたがどれも魔力を帯びているためカルネリアス兄様の研究対象なのかもしれない。さまざまな魔力が飛び交い、南の庭園とは一味違った場所だ。


「誰だ。」


バルコニーの方から男性の凛とした威圧感のある声が響いた。声がした方を見るとオリーブ色の長い髪を垂らし、深緑の瞳をお洒落なメガネが縁取っている切れ目の顔が整った青年がいた。青年は豪華な白衣に似た形のマントを羽織っており、虫眼鏡に似た物を手に持っていた。間違いなくカルネリアス兄様だ。


「初めまして、カルネリアス兄様。第八王子のノア・ヴィルディストです。」

「ああ、末の弟か。初めまして第三王子のカルネリアスだ。して、ここには何用だ?すまないが私は忙しく、案内は別のものに頼んで欲しい。」

「いえ。話し合いをしたいと思いまして。ルイス兄様がカルネリアス兄様とは気が合うと。」

「ルイス兄様が!それは誠かっ!」


ルイス兄様の名前が出た瞬間カルネリアス兄様はとても興奮し、俺に詰め寄ってきた。


「え、は、はい。ルイス兄様です、第一王子の。」

「君だったのか!()()ルイス兄様が認める才能だなんてノアは相当優秀なのだろう。失礼した。此方に茶会用の場所がある。そこで話そう。コンディルス嬢、紅茶を頼めるか。」

「かしこまりましたカルネリアス様。」


俺はカルネリアス兄様に案内してもらい、エマは紅茶を淹れに行った。

エマが紅茶を持ってきて一息つくとカルネリアス兄様が話し出した。


「ノア。改めて私の紹介をしよう。私は第三王子で十六歳のカルネリアス・ヴィルディストだ。今はスキエンティア学園の高等部の生徒として寮で暮らしている。スキエンティア学園の魔法科専攻でな、よく魔法科の研究室で研究をしている。スキエンティア学園の魔法科は魔法研究省の世界最大の研究所、イグノタム研究所と繋がりが強く、備品がとても良く揃っている。」

「成る程。イグノタム研究所は各国の優れた教授レベルの人達や高位魔法師の人が中心の魔法に関する最大で、最先端の研究所ですよね。イグノタム研究所はルエディア王国の魔法研究省の所属でしたっけ。」

「ああ。ノアは博識だな。魔法研究省の省長はいま、私と同じ歳のスランディリル家当主が務めている。最年少で特位魔術師の称号を得た天才だ。」


この国の行政機関の省庁は何個かあり、それぞれの省庁にはそれぞれの才能に秀でた化け物級の人々が務めているらしい。

そのなかで群を抜いて有名なのは魔法を主にする省庁、魔法研究省の省長オリヴァーシルブ・スランディリル。

五摂家の一つで、北の領地セプテントリオを統治するスランディリル公爵家の若当主。歳はカルネリアス兄様が言った通り、十六歳。齢十四歳で特位魔術師の称号を得て、十五歳で当主となった魔法の天才児。魔法研究省の最大施設であり、世界最先端を誇る研究所、イグノタム研究所の所長も務めている。

オリヴァーシルブの両親は既に他界しており、前まではオリヴァーシルブの祖父が当主を務めていた。

魔術師にはレベルがあり低い順から、初等、初級、中等、中級、高等、高位、特位。


「十五歳で特位だなんて、凄いですね。そんな天才会ってみたい…。」


俺は思わず感嘆の思いを滲ませた声を発した。

そうしたらカルネリアス兄様は不思議そうに俺を見て言葉を発した。


「お前は同じくらいの天才と会っているだろう。」

「え?兄様達ですか?」

「え?まあ王族もずば抜けて優秀だが、オリヴァーシルブと同じ様に有名な公爵家がいるぞ。あと私のことはカルネでいい。」

「…カルネ兄様、誰ですか?」

「オーウェン・ジェルディアだ。会っただろう?ルーカス兄様の従者なのだから。」


オーウェン・ジェルディア

オーウェンさんには勿論何回も会った。

小豆色の綺麗に切り揃えられたおかっぱの様なショートカットに右サイドを伸ばしゆったり笑う、可愛らしい美少年でありながらばりばりの戦闘好きの腹黒。

珍しい固有スキル持ちだが、オリヴァーシルブ程の功績など聞いた事がない。


「オーウェンは国家騎士団班長に最年少でなった。オリヴァーシルブと同じ十五歳だ。」


『国家騎士団』

いくつかの班があり、王族の護衛から国民の護衛、各地への調査なども行う防犯、政治の要。

この国の最高権力者たちが集まる『最高国議会』という会議に騎士団団長や副団長は参加出来る。各班の班長もたまに参加が認められる。例外的に第一班から第三班の班長は常時参加可能だ。つまり、団長や班長クラスは相当の実力者。


しかし、おかしな事になる。オーウェンさんは確か十四歳と言っていた。カルネリアス兄様は十五歳といった。


「オーウェンさんは十四歳では?」

「ああ。オーウェンは学園の準備があって、十五歳に授与してもらうようルーカス兄様から申し出があった。厳密には十四歳での授与だった。」


なんと。

オーウェンさんは思った以上に凄い人だったらしい。オリヴァーシルブの十五歳をも凌ぐ功績だ。オーウェンさんは剣技と魔法、両立した戦闘方法を主にする二刀流の天才児らしい。


「まあそれは置いといて、ノア、スキエンティア学園に入らないか?」


『スキエンティア学園』

ルエディア王国にある二つの学園のうちの一つで、各国から留学生を多数受け入れている大きな学園。初等部、中等部、高等部がある。

初等部は主に平民が一般教育を受ける。初等部の内容を貴族はすでにこなしている状態なため、中等部から入る貴族も多くいるらしい。

中等部から各科に分かれて学習する。中等部では生徒それぞれにランクが与えられるらしい。中等部は主に十五歳からの入学が多いが、年齢制限はなくいつでもテストをパスしたら入れる。

高等部は中等部より専門的に学ぶもので、日本で言うところの大学に近い。


「俺まだ五歳です。入りたくない。ベンキョー好きなわけではないので。」

「まて、楽しいぞ!絶対。だから入ろう。な?」


俺はまだ将来やりたい事を決めていない。決めてから学園には入りたい。決めてなくても五歳で入学は悪目立ちしてしまうだろう。


「絶対いやです!」

「ノアぁぁ!頼むー!!」

「いやです!」


そして冒頭に戻る。

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