固有スキル発動
魔法制限魔法発動中 術師の状態により弱体化
出た。これが原因だ。
魔法制御魔法
相手よりも魔法技術もしくは魔力が上回っている場合発動可能な、相手の魔法技術を制限する魔法。人の体全てを対象とする高難度魔法で沢山の魔力と体力を必要とする。生まれつきエルフの血筋が人間の体に合わずに病弱な体になってしまったスフアリフィル様が常時、この魔法を発動させていたらそれだけでとてつも無く負担がかかる。それだけではなく今は固有スキルをも発動している。固有スキルは独特な魔力を発生させるため、普通の魔力を使わないと思われがちらしいが固有スキルは普通の魔力をもとに独特な魔力を作り出し発動させる。そのため固有スキルも普通の魔力を使用する。つまりスフアリフィル様は固有スキルに変換される魔力と魔法制御魔法に使う魔力を合わせて同時に操っている。並大抵な反動では無いだろう。
鑑定スキルで見ると術師、スフアリフィル様の状態悪化によって魔法制御魔法は弱体化している。恐らく魔法制御魔法対象はリフ兄様だろう。リフ兄様はさっきスフアリフィル様が倒れる度に魔法が上手く使えると口走っていた。スフアリフィル様がリフ兄様に魔法をかけていたら全ての辻褄が合う。
「スフアリフィル様。貴方、魔法制御魔法をリフ兄様にかけていますね。それを解いて下さい。その魔法が一番反動が大きく、貴方の体を蝕んでいます。」
スフアリフィル様はとてつも無く驚いていた。僅か五歳の俺なんかに言われると思わなかったのだろう。そしてひどく怒った表情を浮かべた。それに伴い室内の温度が下がる。雪がより強く降ってきた。スフアリフィル様の固有スキルは雪に関するものだろう。
「僕がっ!リフにそんな、魔法かけるわけないだろっ!」
「フィル?どういうこと?」
「スフアリフィル様はリフ兄様に魔法制御魔法をかけていたんです。いつでも。」
「魔法制御魔法って相手の魔法を制限する魔法…」
「ええ。リフ兄様が固有スキルを上手く使用できないのもこのせいですし、スフアリフィル様の発作もこのせいです。」
「どういうこと?ねえ、フィル?」
「僕はそんな魔法っ…」
「かけていない、ですか?だったら王宮の医者か鑑定士を呼びましょうか。」
「ねえフィルっ!どういうことなのっ!」
リフ兄様が泣きながらスフアリフィル様に詰め寄る。スフアリフィル様は苦悶の表情を浮かべた後、諦めたようでポツリと話し出した。
「俺はリフに魔法制御魔法をかけていた。リフは俺と違って健康体だ。そして魔法の才能に長けている。つまり、貴族達の権力争いに巻き込まれるのは僕よりリフだ。俺の分までリフが巻き込まれる。それは避けたかった。だからリフが魔法の才能がないように偽ろうとした。魔法の才能がない健康な人と、魔法の才能がある不健康な人。貴族達は後者を選ぶだろうと思って。僕の勝手な行動でリフを長い間苦しめてごめんね。」
スフアリフィル様は真実を話した。リフ兄様は傷ついたように顔を歪めた。
「つまり、フィルの発作は俺のせいで、フィルは俺の為に辛い事をしていたの?全部全部俺のせいで?なんでよっ…なんでそんな事をっ…」
リフ兄様は泣きながらスフアリフィル様に抱きついている。
「それが真実です。だけれどもスフアリフィル様はリフ兄様の為に頑張ってきたんです。長い間ずっとずっと一人で抱えて苦しんでリフ兄様を守ってきたんです。それをリフ兄様は否定するんですかっ!?」
それでも許せなかった。自分の命を賭けてまでリフ兄様を守ろうとしたスフアリフィル様の行動をそれもリフ兄様が否定するなんて許せなかった。誰かにそんなに大切にされているなんて、そうそう無い。リフ兄様が心底羨ましい。
リフ兄様はハッと気づいたようにスフアリフィル様の顔を見上げた。そして頷きながらお礼を言った。
「そうだね。そうだよね。フィル、長い間俺のためにありがとう。ずっとずっとありがとう。大好きだよ。ずっと大好き。ノアもありがとう。酷いこと言ってごめんね。大好きだよ。」
「…ノア。ありがとう。君のおかげでリフにちゃんと話せた。ありがとう。さっきはひどい事を言ってしまいすまなかった。」
スフアリフィル様も俺を名前で呼び、柔らかく話しかけてくれた。スフアリフィル様は悪い人では無いようだ。あくまでリフ兄様を守るために毒舌で周りを切り離してきた人なのだ。
「いえ。よかったです。」
「ノア。僕のことはフィルと読んでいいよ。スフアリフィル様だなんて兄弟で堅苦しいからね。」
「!はいっ!フィル兄様!」
「よかったねー。ふふ。」
フィル兄様と打ち解け、会話をした後フィル兄様は倒れた。パタリと軽く。
「「フィル(兄様)!!」」
慌ててフィル兄様に駆け寄った。そうだ、フィル兄様の体調が魔法を解除したからといってよくなるわけでは無いのだ。悪化を止めただけなのだ。
慌てて鑑定スキルを起動して悪い部分を探る。そうしたら心臓に近い部分に魔力痕があった。無理に魔力を吸収したため魔力が肉体を削ったのだ。
俺は肉体が欠けた部分をまふで透視しているようにくっきりと見つめながら魔法を発動した。俺の固有スキルで魔法があった。魔法の能力を底上げする能力なら治癒魔法も多少は使えるだろう。俺はかけた部分を魔力で埋めるように意識しながら魔法を展開させた。そしたら白い光とともに不思議な紋様の魔法陣がフィル兄様の心臓の上に発生し、俺の魔力を吸収してフィル兄様のかけた部分に流れていった。これが治癒魔法だろう。俺も使えたのだ。フィル兄様はみるみるうちに顔色に血の気が戻ってきて薄らと目を開けた。
「…リフ?ノア?」
「フィルー!!よかった〜。」
「ふう。よかった。」
俺は安心して近くの椅子に倒れ込むように座った。
「ノア、ありがとう。大好き。凄い僕の弟だ。これからもよろしくね。たまに僕とも遊ぼう?体も治すよう努力するし。ダメかな。」
「もちろんいいですよ!これからよろしくお願いしますフィル兄様!」
俺たち三人は笑いながら話をした。後に護衛たちが来て俺はフレディ将軍とアージェンティ宮殿に戻ったが浮かれた心境が収まることはなかった。
10話!




