プロローグ
あり得ないくらい張り詰め、凍りついている豪華な空間。
煌びやかに輝く黄金に、色取り取りの宝石。光を反射しみずみずしく煌めく柱型の水槽に、透明感のあるガラス張りの床。美しい形像のテーブルやふかふかの品質のあるチェアー。仰々しく飾られ、とても豪華な一室のチェアーには数人の人が座っていた。しかし、なにも違和感がない。それもそのはず、数人の男女はみな言葉では言い表せないくらい美しく、一眼見たら人間ではない
とわかるくらいの神々しいオーラを纏っていたからだ。しかし、その人間ではないであろう男女達はとても険しい顔で浮き出ている鏡のようなものに映っている映像を見ていた。
部屋が暗いのもあって一室はより一層この世のものとは思えない空間を作り出していた。
痛い、いたい、いたい、イタイ、イタイ…
いたいよ、もうやだよ ねえ、だから許して…
お父さん、もう喋らないから。
お母さん、もう何も食べないから。
お兄ちゃん、もう何も欲しがらないから。
本当にごめんなさい。
俺なんかが生まれてしまって。死にたいだなんてもう思えないから。もう、死にたいだなんて言わないから。
これ以上迷惑をかけないから、幸せについて教えて欲しいです。
高校2年生の男子が酷い虐待により亡くなったのは人間の世間を騒がせた事件となった。
男子の身体は痣や、みみず傷、切り傷、化膿した古傷、骨折など見るに耐えない状態だったと聞く。当然両親は逮捕され、男子の兄もカウンセリングや状況確認など、実質身柄を拘束されてる。
それにもっとも世間を騒がせたのはその男子の走り書きだった。男子が寝ていた物置に鉛筆や血でこう書かれていた。
『幸せについて教えてください。』
この男子は幸せを求めていたのだろうか。それとも幸せをくれなかった家族への皮肉だろうか。
私達にはこの子の気持ちは分からない。私達はこの子のような体験をしたことなどないからだ。しかし、私達が定めた不幸基準を遥かに上回った不幸であったし、こんなにも早く死ぬ予定では無かった。おそらくこの子には私達の定めが適用されなかったようだ。謝るだけでは済まされないくらいこの子は酷い思いをした。
だから私達はこの子を見守る義務がある。そして否定されても見守る意思もある。
神として
神々の意見が揃い、神々の加護を与えられる人間が新たに誕生した。
そう、これは人生が狂ってしまった不幸な少年が転生し、神や精霊に愛され守られながら。規格外の能力で異世界を楽しみ、家族と和み、幸せを手にして無双する異世界物語