神の使者
☆
タプル村からガラン王国城へ向かう途中、今までの出来事を少し整理しようと思い、フブキに相談をした。
まず、地球に来てしまったクアンに関しては特段問題は無いだろうという結論に至った。というのも、こっちに予備……というと、色々と語弊はあるが、とりあえずこっちにもクアンがいるから大丈夫ということである。
今考えるべき問題は、直接俺に話しかけてきたレイジについて。
この件についてはあのパムレですら少し真剣な表情を浮かべた。
「……『あのパムレ』ってのが気に食わない。一応パムレは強いよ?」
「うん、心を読まれているって常に考えないといけないってヤバイね!」
心にゆとりが欲しい。
「じゃが、問題としてグールの首飾りの解呪。そしてリエン殿の救出という任務を与えられてしまった今、次は何をすれば良いのじゃ?」
「……プルーがリエンと一緒にいたのは事実。そこからどうやってかわからないけど、抜け出せた。つまり、今リエンはシャルロットと一緒か、リエンだけが取り残されている状態だと思う」
ガラン王国先代王のリエン。そして店主さんの養子。色々と複雑な事情はあるのだろうけど、これから元王様を助けるって思うとなかなか荷が重い。
「止まれ!」
と、道中声をかけられた。
何やらバンダナを着けた集団。ざっと見て六人くらい。
「何か?」
「男に用は無い。子は売れるからな。しかも女か」
あからさまに盗賊じゃん!
「ずいぶんと荷物は少ないが、まあ多少の金くらいはあるだろ?」
「あはは、ちょっと少ないかな。見逃してくれないかな?」
「面白いねー。じゃあそこの二人をこっちに渡せよ」
「それはできないかな。俺の仲間だからね」
ジリジリと迫る盗賊たち。
パムレはあくびをしている。
フブキは目をつむっている。
「待ちなさい」
と、盗賊の後ろの方から綺麗な女性の声が聞こえた。
「ああ?」
「待ちなさいと言いました。聞こえませんでしたか?」
盗賊の仲間だろうか。
綺麗な銀髪にすらっとした体系。そして白く綺麗な肌に凛とした表情。
頭には鉄の兜とつけていて、羽のようなものがつけられていた。
「誰だお前は」
「ワタシはキューレ。ある者に救われ、世を旅する者です」
まるで女神様である。
シャトルは元気な少女って感じで、音葉は同級生の気軽に話せるお嬢様ーって感じだけど、この人は芸能人って感じだ。
と、パムレが俺の服を引っ張った。
「どうしたの?」
「……あれはヤバイ。パムレが言葉を理解できない。今、あの女の人は何を言っている。もし敵意があるなら言って。それか、パムレの肩を叩いてすぐに後ろに逃げて」
言葉を理解できない?
パムレって確か、相手の言葉を耳で聴かずに、心を覗いて聞くんだっけ?
しかも、規格外の神や精霊すらそれで会話ができるって言ってたけど、それすら理解できないって……。
「……フブキ、もしもの時はどっちかが狩真を抱えて逃げる。シャムロエにこの事を相談」
「じゃのう。あれはヤバイ。悪魔店主なら知っているかのう?」
フブキが刀を構えていた。
「えっと、もしもし。キューレさん……だっけ?」
とりあえず話しかけてみた。
「……馬鹿。少し黙る」
「死ぬ気か!」
「大丈夫。クアン的に考えてみた。きっと彼女がここに来たのは、理由がある。それを聞こう」
そう言って、俺は再度キューレさんに話しかけてみた。
「キューレさんは味方ですか?」
「それはわかりません。それを確かめたく、尋ねました。ところで……この人間は貴方達の敵ですか?」
「ああ? 俺達が仲間に見えるのかよ。ちょうど商品も増える算段がついたし、今夜は宴会だな!」
そう言って盗賊の一人がキューレさんに襲い掛かった。
が。
男はその場で倒れた。
「え?」
「一体何が?」
周囲の盗賊が全員驚いていると、次々と倒れて行った。
そして最後の盗賊が尻をついて、後ろに下がった。
「ひ、ひい!」
そして、そのまま男は昼寝をするように倒れた。
「さて、邪魔は減りました。次は貴方達です」
「パムレは知らない人なの?」
「……知らない。フーリエなら知っているかも」
店主さんの名前を聞いたキューレさんは反応した。
「フーリエ……あの青い髪の?」
どうやら店主さんの事を知っているらしい。それと、パムレの言った言葉はキューレさんは理解できるのかな。
「お、俺達はフーリエさんの友人です。貴女は何者ですか?」
「ワタシは女神より生まれし使者。と言っても、今は繋がりが切れてしまい、無を歩む者。気が付いたらここにいました」
「儂らは戦いを好まぬ。お主を理由なく襲う事は無い。それだけは信じて欲しい」
「では問います。そこの男。カンパネを知っていますか?」
カンパネ。
確か、一度だけ夢っぽい場所に出てきた、少年っぽい神様……。
知っているかと問われたら、一部知っている。そんなあやふやな答えで良いのか?
ええ、ままよ!
「夢の世界で一度だけ会いました。手には本を持っていて、身動きが取れないみたいです」
「理解。信じます」
そう言うと、キューレさんは目を閉じた。そして深い深呼吸をして、再度目を開けた。
「すみません。ワタシは少し記憶を失っていて、数少ない情報を集め回っています。カンパネを知っているなら、ワタシが神の使者だと言っても信じてくれますか?」
パッと言って来たけど、全然信じられないんだけど!
「……すげー言葉わかんね。狩真に前乗っかり。がんばえー」
「いつもは頼れるパムレもといマオが全然頼りないよ!」
「儂もこれほどの強者は久しい。いや、強者とかそういう次元では無い。神の使者というなら、本当なのじゃろう」
「えっと、とりあえずこれからガラン王国へ向かうのですが、一緒に行きますか?」
☆
ガラン王国に到着し、そのまま『寒がり店主の休憩所』へ向かった。
扉を開けて、いつも通り店主さんが笑顔でお出迎えをしてくれた。
「おかえりなさいまぎゃあああああああああああ!」
わー、笑顔が一転しちゃった。
「なんで悪魔の天敵みたいな存在と一緒にいるんですか! 言っておきますが今のワタチは平凡な宿の店主で、貴女を倒すことはできませんから勘弁してくださいね。と言うかフブキ様はよく隣を歩けますね。ワタチは頭や足腰が痛くて仕方がありませんよ!」
大声の割に弱気な店主さん。よほどキューレさんは凄い人なのかな。
「久しいですね。大丈夫です。ワタシに敵意はありません。むしろ……やっと帰って来れました」
「やっと?」
そしてキューレさんは続けて話した。
「レイジという男が作った世界からようやく知っている世界に来れました。ワタシの知る全てを話しましょう」




