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ガラン王国


 ☆


 目を閉じて少し待つと、周囲の空気が変わった気がした。うん、ミルダ大陸というのが臭いで分かる。

 とりあえず起き上がろうと思い、目を閉じたまま手を動かして起き上がるための準備を使用としたその時だった。


 なんか柔らかい物を押しつぶした気がするんだけど。


「ふむ、今後は移動した瞬間天井に張り付くように心がけよう。ところでカルマ殿、儂のお腹を押した手をどけてもらえぬか?」

「わー! ごめん!」


 全体重とは言わないけど、思いっきりぐっと力を入れた気がしたよ?

「殺意や下心が感じられなかった故に避けれなかった儂も悪い。気にしないで欲しいのじゃ」

 フブキが仰向けで隣に寝てた。わー、初めて女の子と添い寝したよ俺。

「お、おはよう。というか俺は寝た気分だけど、フブキは休めてるの?」

「今の状態になってから眠気は感じなくなった。疲労だけは残る故に、数十分ほど休憩は欲しいのう。食事の時間で事足りる故、許して欲しいのじゃ」

「許すも何も、休憩はしっかり取って。途中で倒れたら、それこそ大変じゃん?」

「うむ、助かる」

 そして起き上がると、


 目の前で店主さんが目を真っ赤にして立ってた。


「ぬあああああ!?」


「へ、わ、わああああああああああ!?」


 え、店主さんも驚いた?


「あ、す、すみません。この時間って結構忙しいので、一部のワタチは動かないようにしてるんです。同時に十人のワタチを動かしてるので、普段動かしていないワタチはぼーっとしている状態になっちゃうんですよね」

 そういうことか。てっきりフブキのお腹押しちゃった事件について怒ってるのかと思った。


『カルマー。起きたー?』


 と、外でシャトルの声が聞こえた。

「起きたー。今行くー」

『はーい。まもなく行商人も起きるから、来てねー』

 そう言えばずっとシャトルとパムレが見張りをしていたのかな。それはそれで悪い気がするな。


 ☆


「いやー、これほどぐっすり寝れた野宿は久しぶりでした。護衛費用も安くて体も休めて、色々と幸運続きです。この先の商売が不安になるくらいですよ」

 行商人の人は笑いながら朝食を食べつつ俺たちに話しかけていた。

「日頃の行いじゃないかしら。ね、パムレちゃん」

「……そだねー」 

 なんとも気の抜けた返事。


(実際パムレがずっと何かしてたとか?)

(……一応。魔獣の群れは退治した。盗賊はいなかった)


 やっぱり何かしてたみたい。パムレさまさまだね。

「あれ、フブちゃんは?」

「あ、ちょっと休憩するってさ」

「そう。あ、店主殿から話は聞いたわ」

 そう言って俺にぐっと近づいた。

(フブちゃんも半透明状態になってたみたい。寝るときは気を付けないといけないかもね)

(お、おう。それは重要な情報だ。ありがとう)

 俺自身半透明状態を見たことはないけど、あまり他言できることではないよね。


 ☆


 しばらく進むと、巨大な門が見えた。行商人と俺たちの簡単な持ち物検査を終えた後、その中に入ると、巨大な町が広がっていた。

「いやー、冒険者の皆様ありがとうございました。またどこかでご縁があればと思います」

 そう言って行商人たちは全員頭を下げ、それぞれの場所へと行った。

「くーっ。馬車もさすがに乗りっぱなしは疲れるわね。そして久々の地元ー。何も変わってないわねー」

「そうか。普通に考えたらここはシャトルの地元だもんな」

「そうよ。あ、一応言っておこうかしら。ようこそガラン王国へ。作物と武術が自慢の国よ」

 フェルリアル貿易国はゲイルド魔術国家とガラン王国の中間だから、色々な物が売っていた。と言っても、工芸品や武器等が多かった印象。 

 一方でガラン王国は新鮮な野菜や魚が売ってる店が多い。やはり気温とかが関係しているのかな。

「軽く案内するわ。まず正面に見えるお城がガラン王国の象徴、ガラン王国城よ」

 そびえたつ巨大な城。


「象徴の左半分が破壊されてるねー」

「シャトラの家出の時の爆破ね。ここまで大きいとは思わなかったわー」


 すげー。地球でそんな規模の爆破があったら、大騒ぎどころの話じゃ無いよ?

 普通に商店街は店開いてるし、もしかして定期的に爆破してるんじゃね?

「そしてあそこにいるのがガラン王国の軍隊長でライフ隊長。どうやら町を見て回ってるみたいね」

「へー。フェルリアル貿易国では兵士の姿は少なかったけど、こっちは普通にいるんだ」

「そうね。あ、ちょうどこっちに来てるし、城まで送ってもらいましょう」

 そう言ってシャトルはライフ隊長の前に立って話しかけた。

「ライフ隊長。悪いんだけど、ガラン王国城まで同行してもらえる?」

 そしてライフ隊長はしばらくきょとんとした。


「悪いがお嬢さん、私は現在任務中故に、遊びに付き合えない」


 ……。


「私よ?」

「は? え、シャトル様!? し、失礼しましたー!!!!」


 いや、今のは完全にシャトルが悪いと思うな―。突然その辺の人と変わらない雰囲気で急に話しかけるんだもん。

「え、お帰りはもう少し先では?」

「馬車が早く到着したのよ。今のは聞かなかったことにするから、連れてってもらえる?」

「はい。そちらの方々も?」

「そうよ。母上が呼び出した客人のカルマと、三大魔術師のマオ様。それと……フブちゃん」

「ぬおい! せめて本名を言って欲しいのう!」

 フブキってツッコミキャラなのかな。

「かしこまりまし……三大!? え、そちらの方が?」

「……ああ、いつも認識阻害を使ってこっちに来てたから、こうして姿を見られるのは初めてかも」

「今すぐ馬車を用意しますので、少々お待ちを」

「歩くわよこれくらい。ね、皆良いでしょ?」

 シャトルの言葉に皆が頷いた。

「わ、わかりました。せめて門をすぐに通れるように別の兵を先回りさせます。おいそこの兵、伝言を頼む!」

 少し離れたガラン王国兵を呼び出し、事情を聞いた後、驚いた様子で走ってガラン王国城へと走って行った。

「で、ではこちらになります。足元に気を付けてください」


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