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新たな部員

「ともかく! この地球では暴力は駄目!」

「うむ、じゃがカルマ殿が危険な目に遭った場合はどうする?」

「行動不能するくらいで留める事!」

「うむ、難しい注文じゃが、郷に入っては郷に従えとも言う。承知した」

 フブキを膝の上に乗せて教育をしている音葉。どっちも黒髪だし、姉妹みたいだなー。


「あと、今日からウチの妹ね。分かった?」

「うむ、ワシハオトハドノノイモウト」

「おい待て、何いらんこと吹き込んでる!?」


 危ない。危うく音葉シスターズが増えるところだった。今の所セレンだけだけど。

「というか音葉、どちらかと言えばフブキの方が年齢的に姉だぞ」

「へ? この見た目でウチより年上なわけないじゃん」

「じゃあ質問。フブキ、今何歳?」

 俺の質問に天井を見上げて考えた。


「封印されていた時間は止まっていると考えても、二百は超えているのう」


「あーあー聞こえないー。フブキちゃんはウチのいもうとー」


 あ、これは現実を受け入れないタイプだ。

 そして尾竹先輩は右手に持つティーカップを震わせながらブツブツ言ってるよ。

「黒髪のじゃロリ精霊年長殺し屋忍者って、どんな属性の塊りでござる。恨めしい」

「尾竹先輩、フブキは尾竹先輩の性癖を狙ったキャラクターではなく、元人間なので、普通に話せば話し返してくれますよ」

「駄目でござる。それでは汚してしまうでござる!」

 いや、意味が分からない。

「尾竹殿とやら。儂を褒めてくれるのは嬉しいが、一方で儂を拒否している。受け入れたいのか、それとも迫害したいのか、どうも儂にはわからぬのじゃが」

「迫害は決してしないでござるよ! むしろずっと拝めたいでござる!」

「じゃが、先ほどからどうも遠ざけているような……その、お主は『何がしたいんじゃ』?」


 その言葉に尾竹先輩は固まった。


「せ、拙者は……何がしたい……といわれても……」

「行動に一貫性が無く、儂を受け入れていると思いきや、否定的な意見もある。戦場では多少性格に難ありでも、使わねばならぬ場合もあり、答えは出す。じゃが、今の尾竹殿の発言は、答えが見えぬ」

「うぐぐ、それは……」

 なんか尾竹先輩が説教を受けてるように見えるな。

「せ、拙者は別にフブキ氏を拒絶したいわけでは無いでござる。これは本心でござる。むしろ別世界の人間との交流は我々オタクにとって夢のような状況。拙者が持っていない物を全て持っているように見えるのが、憎い。それだけでござる」

「ふむ、今の説明でようやく理解できた。つまり儂に嫉妬していると?」

「そうでござる。拙者はこの世界のあらゆる理不尽を憎んでいるでござる。『世界の理』を見つけ、この世界を作り出した神に一言文句を言う。可能ならば殴ってやりたいでござるよ」

 先輩も色々と悩みがあるんだよね。俺は見慣れたから普通に話せるし、音葉のような綺麗な人も普通に尾竹先輩と話しているところを見ると、そこまで気にすることは無いと思うけどな。

 もちろん容姿にコンプレックスを持つ人は沢山いるけど、やっぱり中身を見る人も世の中にはいると思うんだよね。


「でも尾竹先輩って変な行動はするけど、紳士的だから、後は少しだけ運動とかすれば良いのでは?」

「そう言えば木戸と早朝ランニングをどうするかという話しは結局どうなったんですか?」

「それは、拙者から断ったでござる。あはは」

 苦笑する尾竹先輩。

「木戸氏やセレン嬢はとても優しいでござった。拙者も必死に木戸氏に追いつこうと走ってたでござるが、道中で出会う人の視線が気になったでござる。当然、木戸氏が有名ということもあったでござるが、このままでは迷惑がかかると思い、四日目以降は断ったのでござるよ」

 三日は一緒に走ったんだ。

「むしろ拙者は不思議でならないでござる。セレン嬢や音葉氏のような綺麗な女性が拙者のような者に話しかけること自体、許されるのかと疑問でござるよ」

「綺麗かどうかはわかりませんが、ありがとうございます。あはは」

「ともかく、フブキ氏は色々な事情故に狩真氏の近くにいないといけないというのは理解したでござる。学生の名簿上は記入されぬが、フブキ氏もおかたんの一員として向かい入れたいでござる」

「うむ? この集まりに拙者もということか?」

「そうでござる。拙者の持つ『運命の切札』がそう言っているでござる」

 そう言って尾竹先輩はタロットカードを出した。


「それは原初の……うむ、それが言っているのであれば儂もこのブカツドウとやらの一員として頑張るのじゃ」

「やったね! じゃあフブキちゃんの定位置はウチの膝上ね!」

 夏場は暑そうだなー。

「そうと決まればこれからオカルトショップへ行くでござる。フブキ氏のアイテムを貰うでござるよ」


 ☆


 ビルの間を抜けた先の『オカルトショップ寒がり』。いつ来ても不気味で絶対に一人では来たくない場所……と思っていたけど、ミルダ大陸での経験が役立っているのか、あまり怖くない。

 一方で、いつもは音葉が俺の服の裾を握っていたのに、フブキの登場により、二人が仲良く手を繋いでいる。うん、全然寂しくないからね!


 そして少し進むとようやくオカルトショップ寒がりに到着。

「こんにちはー」

「はーい。って、狩真様たちですか。何用ですか?」

「ここは部長の拙者が。今日からフブキ氏がおかたんに入部したので、アイテムを貰いに来たでござる」

「なるほどなるほど。理解しました」

 そう言って店主さんはレジの下にある箱の中をゴソゴソとあさり、ピタリと止まった。


「フブキ様、本気ですか?」

「仕方がないであろう。郷に入りては……じゃ」


 呆れる店主さんに苦笑するフブキ。

「えっと、何か不都合があるんですか?」

「そういうわけでは無いんですけど……いえ、深くは考えないようにしましょう。尾竹様が選んだのであれば、それに従うまでです。さて、適正があるのは……ふむ、これですか」

 そう言って店主さんは二本の棒をフブキに渡した。

「それは『創造の編み棒』と言う物です。今は魔力が尽きて、ただの棒になってますが、フブキ様ならそれを必要とする日が来るでしょう」

「ふむ、承知したのじゃ」 

 すんなりと受け取るフブキ。

「一応気を付けてください。この場所はレイジに見つかっていないので何とかなってますが、いずれそれらを奪いに来ます。分散しているものの、狩真様とフブキ様は常に一緒であればレイジは来ます」

「あの初老か。儂の刀もギリギリで避ける厄介な奴じゃ。心得たぞ」

「フブキもレイジを知っているんだ」

「うむ、二度と会いたく無いがな」

 と、レイジという名前を聞いて音葉が少し苦い顔をした。

「あ、ごめん。嫌な事を思い出させて」

「うん、大丈夫」

「うむ? 音葉殿はレイジに襲われたことがあるのかのう?」

「うん。お父さんに化けてて、それで突然ね。今もちょっとトラウマかな」

「うむ、トラウマは簡単に払拭できぬからのう。まあ、気休めになるのであれば儂の手を握ってても良いぞ」

「わー! ありがとう。フブキちゃん!」

 そう言って音葉はフブキの手をにぎにぎし始めた。


「それにしても悪魔店主、儂が言うのも変じゃが、ずいぶんと良い趣味をしているな」

 フブキは片方の手は音葉に握られているため、もう片方の手で空腹の小悪魔ちゃんキーホルダーを持ち上げた。

「これでも最低限の生活費は稼がないと、路上で寝ることになりますからね。自分の事は自分でやらないと、人間としての感覚を忘れてしまうんですよ。あっちのワタチは気楽に生きていますが、こっちは法律が邪魔をして不自由なんです」

 そういえば店主さんって考えられないくらい長生きしてるんだよね。それでもこうして何かをしているのには理由があるのかな。

 そんなことを考えながら俺は周囲の商品をなんとなく見た。


『ニホンオオカミのはく製』

『コウモリのツバサ』

『エルフの涙』


 うん、色々ある。というかエルフの涙って何?

「店主さん、このエルフの涙って何?」

「はい? そんな商品置いた記憶は無いですけど……」

 俺が棚から持ち上げたのは、小さな石だった。確かに商品名には『綺麗な石』と書いてある。

「狩真氏もなかなか面白い事を言うでござるな。ただの石をファンタジー満載な名前をつけるなんて、小学生のやる事でござるよ」

「いや、でも俺の能力で見たから、これって本当に『エルフの涙』って名前なのでは?」

「ふむ、ちょっと見せて欲しいでござる」

 そう言って尾竹先輩は手を出したので、俺はその手に石を乗せた。

「ふむ、中にヒスイがあるようにも見えるでござるな。店主氏、これはどこで入手した物でござる?」

「覚えてませんよ。綺麗な石だなーと思って拾ったかもしれませんし、何かの抱き合わせで売られた物かもしれません。忘れているということは、かなり昔ということになりますね」

「ふむ、では拙者が一応購入するでござる。狩真氏の心眼を信じて拙者はこの石を調べるでござるよ」

 そう言って尾竹先輩はレジに石を置いた。


「二十万円です」

「超ぼったくりでござるな!」

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