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脅迫の質問


 ☆


 三十分後。

 クアンは本当にプルーを拉致して来た。というかクアンって結構力あるんだね。首根っこ掴んで引きずって来たよ。

「一応プルーはそこそこ偉いぞ?」

「この国ではクーがプルー修道女よりも上だ。ということで頼みがある」

「それが神に頼む態度か!?」

 うん、俺もそう思う。

「時間はたっぷりあるが結果は早く知りたい。ということで、そこのフーリエ上司の魔力とプルー修道女の魔力を混ぜて、何かを作ってくれ」

「できるかー!」

 わー、凄い光った。

 同時に店主さんが俺の後ろに隠れた。なんか小さな女の子が陰に隠れた感じになってるんだけど。

「あの、一応ワタチ、神の魔力は超弱点なので、光らないでください」

「お前の部下が変なことを言ったからだろう。プルーの魔力と神の魔力を合わせるなんて、それは不可能だ」

「不可能か。クーが納得できる理由を言いたまえ」

「悪魔の魔力は神の魔力を前に溶ける。そして混ざり合わない。これは『世界の理』だ」

「ほう、では今一度そこのクーちゃん小悪魔に聞こう。地球のマリー女史とフーリエ上司はどうやって通信をした?」

 その質問にクーちゃんは答えた。


『カミノマリョクト、アクマノマリョクヲコンドウサセタ』


「ありえない! プルーですら知らないぞ、そんな方法」

「事実としてそのような現象は起こっている。論より証拠という言葉はクーが一番嫌いな言葉で、同時にクーが言い返せない状況を作り出す言葉だ」

「待て待て、そうだとしても、神の魔力と悪魔の魔力を混ぜ合わせるなんて芸が仮にも存在した所で、何ができるかわからない。貴様達は一体何をしようとしている?」

「目的はまだ決めていない。悪魔の魔力と神の魔力を混ぜ合わせてできる現象を分析し、そこから何ができるかを考えるのだよ」

「そんな理由で不可能と言われている神の魔力と悪魔の魔力を合わせるなんて、プルーは協力できないぞ!」

 そう言うとプルーは腕を組んだ。


「地球の人間はやったぞ? 良いのか? 『神』」


「!?」


 プルーは固まった。

「人間……という分類に入るかは怪しい部分もあるが、それでもマリー女史は人間だ。そしてフーリエ上司も悪魔ではあるが、元々は人間だ。人間ができたのだよ?」

「だからそれは……」

 プルーが……怯えている?

「人間ができて神ができないと言いたいのか?」

「だから……」

「ま、待ってクアン」

 俺はプルーに詰め寄るクアンの腕を引いた。

「邪魔をするな狩真少年。これは君を地球へ戻すための交渉だ」

「これは交渉じゃなくて脅しじゃないのかな? プルーは怯えてるよ?」

「神が怯えるなんてことは……」


 クアンはプルーを見た。そこには完全に顔を青くしたプルーの姿があり、クアンはその様子にようやく気が付いた。


「わ、悪い……クアン。プルーが唯一恐れているのは、人間に何かで超えられることだ。どんな手段も問わず、とにかくプルーは人間に劣らない。だが、現時点でプルーは答えが出せない壁に当たっている。悪いが、時間をくれ。今は答えが出せない」

「お……うむ、悪かった。クーが焦りすぎた」

「分かってくれればいい。では」

 そう言ってプルーは館長室から出て行った。

「……はあ、パムレが一緒について行くよ。あそこまで凹んだプルーは見たこと無い」

「しゃ、シャトラも!」

 そう言ってシャトラとパムレも部屋を出て行った。


「クアン様、さすがにプルー様相手だからって容赦なさすぎですね。カルマ様の言う通り、今のは交渉では無く脅迫ですよ」

「そうだな。はあ、駄目だな。『この姿に』なってからクーは少し、感情を抑えられないようだ」

 この姿?

「そう言えばクアンって魔術が使えない人間なのよね? それなのに、どうして凄く長生きしているの?」

「うむ、理由は単純。そこの館長と同じくクーも悪魔術を使っただけだ。ドッペルゲンガーを召喚し、人間のクーは冷凍保存。つまり、ここにいるクーは悪魔ということだ」

「じゃあさっきプルーが光った時、店主さんは俺の後ろに隠れたけど、クアンも結構痛かったの?」

「ああ。だが、それ以上にクーは答えが欲しかった。欲と言うのは痛みを忘れさせるな。はあ、それにしても狩真少年には二度もクーの意見を覆らせた。完敗だ」

 椅子に座るクアン。そしてどこから出したかわからないが、一本の棒に白いハンカチをつけて、横に振っている。白旗……ということか。


「それよりも私達は全然話しについていけなかったんだけど、ざっくりまとめるとプルーの魔力と店主殿の魔力を合わせると、カルマのグールの首飾りを修復できるの?」

 その質問にクアンは答えた。


「いや? そんな事一言も言って無いぞ?」

「「ええ!?」」


 てっきりそう言う流れだと思ったよ。

「とは言え、段階がある。今は情報が欲しいという意味も含めてマリー女史と話しができる通信網の確保。その上で首飾りの修復を考えている。クーは狩真少年の事を忘れてはいないよ」

「それならいいけど」

 日数的に今日は平日だから、授業休んでることになるんだよなー。両親にも連絡してないし、大丈夫かな?


『ギャギャ、困ってるみたいね。クアン……ギャ』


 と、突然クーちゃんが話し出した。

「なっ! 今のはマリー女史か!?」

『そうよギャ。一歩先に進んだワタクシを前に焦っているのかしらギャ?』

 ケラケラと笑うマリー先生。

「クーへの侮辱は後でゆっくりと受け付ける。今はその悪魔の魔力と神の魔力の混合方法を教えてくれ。ついでに文句を言おう。五分遅い!」

『混合? 違うわ、包むのよ。あ、フーリエがお腹を下しそうだからもう切るわよギャ』

 そう言ってクーちゃんはまた瞼を閉じ、そして普段のクーちゃんに戻った。

『ギャ?』

 うん、本当に見慣れてしまうと可愛く見える。もうあきらめようかな。


「クアン、今のマリー先生の言葉でわかった?」

「ああ、わかったよ。クーは単純な方法を思いつかないほど馬鹿だということも知らされた。それをすれば確かに短時間だが繋がる。クーちゃん小悪魔経由なのにマリー女史しか話していないという状況、そしてフーリエ上司が頑張っているという情報をもう少し考えるべきだった。ひとまず今日は……ふて寝をさせてくれ」


 ☆


 ゲイルド魔術国家の寒がり店主の休憩所に行くと、シグレットさんでは無く店主さんが向かい入れてくれた。

「いらっしゃいませー。と言ってもさっき振りですけどね」

「この町に店主さんは二人いることになるけど、大丈夫なの?」

 俺の質問に店主さんは苦笑した。


「一度だけ、ゲイルド魔術国家の大規模なパーティにこっちのワタチは料理人として呼ばれて、国賓として館長のワタチが呼ばれた時は生命の危機を感じました」

「確か目が合ったら戦闘が始まるんだよね。こわ……」


 笑えない冗談を聞いてしまった気分だ。まあ、店主さんはニコニコしてるし、俺も笑っておこう。

「店主殿、パムレとシャトラはまだプルーの所かしら?」

「こっちには来ていませんし、おそらくそうでしょう。パムレ様もいるので問題は無いと思います」

「そっか」

「あ、それとカルマ様は明日、ミルダの教会に来てください。呼ばれてますので」

「俺が?」

 何かしたのかな?

「以前ミルダにカルマ様の能力を少しだけ話したのです。そしたら、どうしても読めない書物があると言う事で、是非解読して欲しいとのことでした」

「え、クアンに渡せばよかったのでは?」

「それが、クアン様が無理と言った書物なのです。どうも、法則性が全く無くて、描いている本人すらその時思いついた文字を書いたんじゃないかーって言ってました」

「まあ、そう言う事なら」

 まあ、大きな用事も無いし、クアンは何か見つけたようだし、待つのは暇だから良いけどね。


「ただいまー」

「……まー」


 と、二人が帰ってきた。

「お帰りシャトラ。それとパムレ」

「……プルーって泣くと面倒くさい。あれがかつての破壊神だったとは思えない」

「その、軽く『神』だの『破壊神』だの言ってたけど、どういうレベルでの表現なの?」

 俺の質問にパムレがあっさりと答えた。


「……いや、マジの破壊神。星を一つ作って、飽きたら破壊。リエンのお陰で力を失ってここに住んでる」

「スケールが大きすぎて冗談にしか聞こえないよ」


 本当にわからなくなってきた。

「……あ、そうそう、ご飯食べた後、ちょっと話があるから狩真の部屋行くね」

「え?」

 パムレはそう言って、ご飯を食べずに自室へ行った。一体何の話があるのだろう?

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