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行方不明のシスター


 ☆


「これに関しては別に隠しているわけでもなく、そして言ってもどうしようも無い内容だったので、言わなかっただけですね」

 意外とあっさりと答える店主さん。

 ということは店主さんとガラン王国は親戚って事?

「というかお二人と仮契約をしている精霊は元々リエンが契約した精霊ですよ。歴史を辿ればこれはわかります」

「そうかもしれませんが、かと言ってあえて言わない理由がわかりません。精霊もそうですが、パムレも言わないということは、何か理由があるのでは?」

 俺の問いかけに店主さんは黙った。そして数秒考え、そして口を開いた。


「リエンとシャルロット様の間に子が生まれた後、事件が起こったのです。ワタチや三大魔術師、それにクアン様も加えて色々と知恵を絞りましたが、解決方法は一つしかありませんでした」

「一体何が?」

「詳しい話はクアン様が説明できます。ワタチはただ一つ、リエンやシャルロット様が犠牲にならない方法を模索し、結果助けることができなかった。それだけですよ」

 目を閉じる店主さん。そこには涙が一滴流れていた。

「犠牲って……でも俺たちってそのリエンって人を探しているんだよね?」

「……詳しくは分からない。でも、クアンの話では、精霊が存在している以上、生きているらしい。この世界では目に見えるものが全てでは無いとも言っていた」

 つまり、どこかには存在している……そういうことか。

「というかシャトルはリエンって名前を聞いて何も気が付かなかったの?」

「ギクっ!」

 あからさまに「やばい!」って顔をしたな。

「カルマ様。それには深いわけが」

「ほうほう、それは?」


「姉様は勉強が嫌いです」

「うん、俺、改めて勉強の大切さを学んだよ。ありがとうシャトル」

「ぶん殴るわよ!」


 おおー、コワイコワイ。

「こほん、とりあえず店主殿はもう少し私達に色々と打ち明けて良いと思います。三大魔術師というのもカルマと出会ってから知ったし、その昔から色々とやってたりとか。一応私はガラン王国の姫なんですよ?」

「それもそうですが、一応ガラン王国の先代王の『超面倒な決まり事』を順守しているので、好き勝手話せないんです」

 超面倒な決まり事?

「……トスカが決めた『三大魔術師は国政に関わらない』ってやつ。あれの所為でパムレは国が運営するギルドに加入できず、一時期無職だった」

 こんな無職いてたまるか。見た目十歳児だぞ。


「ワタチの息子がガラン王国の王族である以上、親であるワタチは切れない縁です。ですが、同時に三大魔術師である以上はかなり複雑なんです。お二人はまだ姫という立場ですが、女王となった場合は気軽にワタチ達とお話ができないと思った方が良いですよ」

「でもシャムロエさんは店主さんに話しかけてましたよね?」

「あの人は一応女王を引退してます。暇な日が続くと連日ワタチの店でお茶を飲んでますよ」

「大叔母様が時々城下町に行って店主様の店でお茶……シャトラは部屋から出れなかったのに……ますます文句を言いたいですね」

 話せば話す程シャトラの怒りゲージが溜まってきているな。

「しゃ、シャトラは部屋の中では基本的に何をしていたの?」

「へ!? きゅ、急にどうしました?」

「いや、そう言えばシャトルとは一時期二人だけだったし、それこそ会話をしていたけど、シャトラが来てからシャトラについて聞いたことは無かったな―と」

「そうですね。基本的にはガラン王国やミルダ大陸の歴史の勉強や算術を勉強していました」

 なるほど。シャトラと比べて賢そうだもんな。

 と、突然目の前にフェリーがポンっと音を立てて登場。


『うそー。勉強はしてたけど、それ以外は詩を書いてたー。『鳥の翼がもしも人にあるのなら、この牢獄からでる


「ぬあああああああああああ!」


 シャトラはフェリーを掴んで、遠くに投げた。

「パムレ様。今の話を無かったことにできる魔術を教えてください」

「……頭をぶっ壊す『心情偽装』しか知らない。えっと、あきらめよう?」

「違うんですカルマ様。姉様。つい空を眺めていたら、口に出していただけなんです!」


 シャトラはポエマーだったのか。意外な一面を知れてちょっと良かった。


 ☆


 テントを二つ作って、片方は俺、もう片方に女性達が寝ることになった。

 店主さんは少し離れた場所に小屋があるらしく、そこで寝るらしい。

「では皆さま、夜は冷えるので風邪をひかないように温かくしてくださいね」

「「「はーい」」」 

 そう言って店主さんはその場から去っていった。

「じゃあ俺も寝るよ。お休みー」

「おやすみー」

「おやすみなさい」

「……みー」

 テントに入るとそこには布団が一つ。本当なら寝れば地球に帰れるのに、それができないと思うと不安が押し寄せてくる。

 鞄の中に入れていたカプセルに入っているクーちゃんを見ると、すやすやと寝ていた。唯一地球から持ってきた物がクーちゃんというのもなんだか不思議だ。

「せめて地球と通信ができたら良いんだけどな」


『無理では無いわよ。多少の無茶をすれば、短時間だけの会話はできる……ギャ』


 え、今のって。

 突然クーちゃんが瞼を開いて話し始めた?

「て、店主さん!?」

『違うわよ。フーリエは隣で踏ん張っているわ。マリーよ……ギャ』

「マリー先生!? どうして」

『教え子がピンチなら助けるわよ……ギャ。でも長時間は無理ね、貴方の体だけど、一応持ち上げることはできたからフーリエの部屋に持ってきたわ……ギャ』

 そっか。半透明のまま地球にいるのか。

「マリー先生、俺はどうすれば良いですか?」

『こっちも探しているわ。見つかり次第、引っ張る感じで呼び込むわ。だから貴方は貴方で探してちょうだい。クアンならきっと何か考えてくれるわ……ギャ』

「あ、ちょうど今クアンの場所に向っています」

『それならちょうど良いわね。っと、そろそろフーリエが限界だから、今日はここまでね』

「はい。ありがとうございます」

 そう言うと、クーちゃんはまた瞼を閉じて寝始めた。


 ☆


 翌朝。

 地球の店主さんが頑張れば会話ができることを知ったおかげか、思ったより安心して寝れた気がする。 

 何を頑張ったのかわからないが、めっちゃ力を入れた感じなのかな。

 テントを出ると、外は少しだけ曇っていた。うーん、地味に寒いな。


「そこの旅人。ちょっと良いか?」


 突然呼ばれた。

 振り返ると、そこには黒服のシスターが一人、立っていた。

 色白で、またしてもパムレと同じ身長。うん、すっごく怪しい。

「何ですか?」

「うむ、一つ訪ねたいのだが、君はゲイルド魔術国家に行くのか?」

「そうですが、それが何か?」

「おお、だったら一緒に乗せて欲しい。理由があって馬車と馬が盗まれたんだよ」


 すっごく怪しい。


 とりあえず俺はその少女をジッと見た。そうすれば名前くらいは分かるだろう。


『プルー』


「レイジ……では無いか」

「ぬ? 今貴様、何を見た?」

「あ、いや、突然話しかけてきたので、何者かと疑ってる最中です」

「そうじゃない。何故プルーをプルーだとわかった? それができるのは『魔力お化け』くらいだ!」

 魔力お化け……え、それってパムレの事だよね?

 黒服の少女の声に、もう一つのテントから三人が出てきた。全員目をこすっている。


「どうしたのよ朝から。ご近所さんと問題でも起こした?」

「おはようございます。うー、眠いです。寝心地は悪いですね」

「……ねむ」

「パムレ、この人は知り合い?」

 俺の質問にパムレは目をこすって、黒服の少女を見た。


「……は? どうしてここにいる?」

「ぬあ!? 魔力お化けじゃないか! つまり、プルーは『やっと帰れた!』」


 どっちも驚いていた。

「えっと、敵なの? 味方なの?」

「……どちらかと言えば味方。そしてパムレは個人的にその人を探していた」

 パムレが探していた?

「うむ、名乗り遅れた。プルーはプルーだ。『危篤者の代弁者』として大陸を巡る葬儀屋だ」


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