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友人の自宅訪問


 ☆


 マリー先生は大学へ行き、俺と尾竹先輩と音葉は俺の家に来ることになった。

 尾竹先輩はともかく、音葉はどうして? と思った。いや、別に嫌では無い。その、男の家に女の子を入れるのは……と思っただけだ。実家ならともかく一人暮らしだよ?

「おじゃましまーす」

「おじゃまするでござるー」

 そう言って二人は入ってきた。

「へー、結構シンプルなのね。男の子って漫画とかゲームとか沢山あるんだと思ってた」

「棚の中にゲームはあるよ。漫画は最近電子コミックだから持たないかな」

 そう言って棚を開くとゲーム機がいくつか出てきた。懐かしのゲーム機から新しいゲーム機まで色とりどり……とまではいかないが、数種類はある。

「あ、これ知ってるー。親戚のお兄ちゃんが遊んでた」

「ふむ、なかなかマニアックなゲームでござるぞ。ふむふむ、まさか狩真氏はおかたんの素質だけではなくこちら側の素質もあったとは」

 素質とは!?

「そ、それはそうと洗面台の修理をお願いします!」

「うむ、任された」

 そう言って洗面台を見て音葉は一言。


「強盗でも入った?」

「普通そう思うよね。えっと、俺がやった」

「え……」


 あー、俺が完全に暴力を振るう人っていう目で見てくるじょ。同年代女性の冷たい視線って突き刺さるな。

「えっと、夢の中で得た能力がこっちでも使えるかなーと思って使ったら、バンって」

「尾竹先輩。ウチの同級生は歩くロケットランチャーなのかもしれないですね」

「ご安心よ。何事もポジティブに考えるでござる。音葉氏は最高のボディーガードが近くにいると思えば良いでござる。武器と言うのは脅威であるが、同時に味方にもなりうるのでござる」

 尾竹先輩のフォローに音葉は「そっか」と言って普通に話しかけてきた。

「と言うかこんな力が使えるって、やばくない? 警察とかに事情聴取されたらすぐにどこかの研究所に連れていかれるよ?」

「とりあえず普段は使わないように心がけるよ。使おうとする時って、かなり集中しないといけないから不意に使うという事は無いと思う」

 名前を当てる能力や氷の球を発射させる魔術はかなり集中しないといけないし、一度使ったら変な疲労感が襲ってくる。ゲームではマジックポイントと言う数字で表現されているけど、なんとなくその数字が消費されているのが分かる。

「パパっとパテで直すでござるから、お二人はのんびりしているでござるよ」

 そう言って尾竹先輩は洗面台の修理を始めた。何もやることが無い俺と音葉はとりあえず部屋の椅子に座る。


「「……」」


 うん。さっきまで色々話してたし、今更話題なんて無いよ!

「そそそそう言えば」

 すげー緊張して嚙んじゃった。

「こほん、えっと、そう言えば音葉の親って博物館で働いてるんだっけ?」

「うん。よく小さい頃から遊びに行って歴史的な物を見て、そして調べたりしていたかな。だから『グールの首飾り』みたいな歴史的な物品に関しては自信があったのに、答えられないのが結構悔しいかな」

 苦笑する音葉。自信があったからこそ、悔しいのだろう。

「お、俺なんか全然知らないから音葉の方が凄いよ! まさかこんなことになるなんて思わなかったし、昔の物とかに少しは興味出てきたかな」

「本当!?」

 そう言って机に手をついてグイっと顔を近づいて来る。

「じゃあウチの博物館に来てみる?」

「え、え?」

「あ、もちろん入場料はお願いしてタダにしてもらうよ。高校までは見学の一環で友人がウチの博物館に来ることはあっても、遊び感覚で来る人っていなかったんだよね」

「なるほど……」

 これって音葉と……デートという奴だろうか!?


「パテで修復終わったでござる。水もきちんと流れるでござるよー。あとそのうちおかたんの活動の一環で音葉氏の博物館に全員で行くでござる。二人だけでいきなり行くというのは拙者がいない時に約束するでござる」

「尾竹先輩、あの……目から血の涙を流す人、俺初めて見たんですけど……」


 服の所々に白いパテの塊りが付いている尾竹先輩。その瞳は真っ赤に染まっていた。

「あ、もちろん皆さんもお誘いしますよ。そもそもオカルト探求部って名前ですし、一度もウチに来ない方が変ですよ」

「ふふ、拙者の解釈違いに危うく部員を一人、このパテで生き埋めにするところでござった。あ、別に狩真氏と音葉氏が二人きりでどこかに行くことに文句は言わないでござる。ただ、その予定の打合せを拙者の近くで行われたことに殺意が湧いただけでござるよ」

 殺意って言って来たよ!

「ふ、二人!? お、尾竹先輩、何を言っているんですか!」

 情況に気が付いたのか、音葉は顔を真っ赤にして尾竹先輩に文句を言っていた。

「それよりも洗面台を見て欲しいでござる。多少の微調整なら可能でござるよ」

「あ、それが本題でしたね。というか早いですね」

 そう言って俺は洗面台を見た。


「新品同様じゃん! え、パテだけでここまで行くの?」


 キラキラに輝いた洗面台がそこにあった。


 ☆


 用事も終わって二人は帰って行った。

 それにしても女の子(とおっさんっぽい先輩)がここに来たんだなーと思うと少し頭がポーっとする。

 いやいや、ただ家に遊びに来るくらい大学生なら普通だろう。しかも友人だし!

 それに明日は木戸の家に行く予定だ。友人の自宅に遊びに行くのは普通だ普通。

 頭の中がゴチャゴチャとし始めたので、とりあえず頭をブンブンと振り回し、そして深呼吸。


 目の前にオカルトショップ寒がりの店主さんが正座して座っていた。


「ぎゃああああああああああああ!」

 思わず悲鳴を上げてしまった。

「驚きすぎですよ。それに一人暮らしは初めてですか? 大丈夫だと過信しすぎて鍵を閉め忘れては駄目ですよ」

「へ!? か、鍵?」

 開いていたのか?

「もしかしてインターホンを押しました?」


「いえ、勝手に入りました」

「不法侵入じゃん。俺悪くないじゃん!」


 夢の中の店主さんはいつもニコニコで優しいけど、瓜二つのこっちの店主さんは無表情というか、ちょっと怖いんだよな。

「お詫びついでに多く作った肉じゃがを持ってきたので許してください。一人分を作るのは逆に手間ですし、貰い物の野菜の消費を手伝うという意味でも受け取ってください」

「あ、ありがとうございます。これは普通に助かります」

 そう言って肉じゃがを貰い、それを冷蔵庫に入れた。

「それで、一体何の用で?」

「狩真様の『夢』の話をワタチが知っている限りの話をしようと思ったのです」

「俺の夢の話?」

「薄々気が付いていると思いますが、その夢の世界は紛れもなく現実です。睡眠や夢という現象を使って別の世界に狩真様は転移しているだけに過ぎません」

 転移。よくゲームや漫画で見かける単語だ。

「夢の世界にワタチと似ている存在がいるということは、そこの名前は『ミルダ大陸』という名前です。面積だけで言えば北海道くらいしかありません」

 北海道くらいの大きさの大陸か。そういえばあっちの世界で『星』ではなく『大陸』とか『国』という単語しか聞いたことが無いな。

「狩真様がまず行うべきことは三つ。一つはあっちの世界のワタチの依頼を成功させること」

「時が来たらーって言ってたから、いずれは来ると思うけど」

「はい。おそらく色々と準備をしていると思います。残念ながらあっちのワタチとこっちのワタチは姿かたちは一緒でも、連絡を取り合っている等は無いため憶測ですけどね」

 そして店主さんは人差し指と中指を立てた。

「二つ目はもちろん、こっちの世界でそのグールの首飾りを取る方法を見つけること。これは一つ目よりも重要です」

「あっちの店主さんの依頼よりも?」

「最悪、あっちのワタチの依頼を無視してでもこれを終わらせてください。これは狩真様の命にかかわります」

 俺の命?

「えっと、どういうこと?」

「それは三つ目に関係します」

 そう言って店主さんは薬指を立てた。

「三つ目は、何が何でもレイジという男に見つからない。もしくはレイジという男に倒されない事です」

 三つ目を離す時だけ、なんとなくだけど声のトーンが下がった気がした。

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