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193 嫉妬狂いの生徒会長と逆光で(2)

「ん、ふ、」


意識がもうろうとする。


「ちゅ、ぇおぅ」


もう深夜になってしまったのだろうか……昏くて、星みたいにきらきらするものが私を見ている。


「れる」


心臓の音が耳障りで、ほかに聞こえるのは彼女の吐息だけ。


「はぷ、」


震えるほどに寒いのに吹き出る汗が止まらなくて不快で、だからやわらかく湿った暖かいものに拭われる心地よさが際立つように感じた。


「―――ふふ。大丈夫ですか?」

「……ぇ、ぁ、ごめ、さぃ……、なんですか、せんぱ、ぃ……」

「大丈夫ですか、と聞いたのです」

「だいじょう……ぶ……」


だいじょうぶ……なんだろうか。

分からない。

……いや、たぶん大丈夫じゃない。

大丈夫な人が脂汗とかかかない。

さすがにこれは……っていうか出血……


あれ……もしかして私って、死ぬのかな……?


「……少し、多すぎましたね」

「お、すぎ……?」

「うふふ。なんでもありません」


にっこりと。

笑う。


多すぎる?

なんでもないとはちょっと思えない不穏すぎる言葉だ。

なにが多いんだろう。

出血は多いだろうけど……あれ、いつの間に布が巻かれているんだろう。

血も、止まってる……?

っていうかいつの間にかもう乾いてる、し、……


……彼女は、なんて言ってたっけ……?


…………ど、く……?


ああ。


めまいが、する―――……


「ぁ、う、」

「ふふ。そうですか」


差し出したリルカがあっさりと受け入れられる。

これで最低限―――なんだ?

これで、どうなる……どうす、る……?

彼女を拒むなんて私にできるわけがないのに。

リルカは望むままに相手を操れる、だけど、望まないのならなにも叶わない。


彼女は。

そして。

当たり前のように。

その指先で喉を犯して。


ためらいも、迷いも、なにもなく。


「ぉ、ぇお、ぁ、」


喉奥から湧き出る粘性の唾液がだらだらと彼女の手を汚す。

赤が溶けてにじむ。

抜け出た指先が首をつかんで、そのまま強引に押し倒された。


「あなたは、こうされるのもお好きなのですね」


リルカの効果を正しく理解する彼女は、だからそうして私を知る。

実際にそれが私の好みであるかどうかなんて関係はない。

彼女が言えばそれが正しい。

それだけのことだ。

それだけの。


「嫉妬、暴力、征服、汚物、苦痛―――マゾヒストなのでしょう、あなたは」


ぐうの音も出ない。

サディストかマゾヒストかでいえば確かにマゾい気がするし。


「ああ。それとも、だから、なのですか?」

「え」

「あなたはこうしてほしくて、気の多いフリをしているのかしら」

「そんなわけ、」

「―――憎しみでも、いいのではないですか」


ずぃ、と。

触れるほどに近づいた彼女の顔。

暗い瞳が、私を捕えて離さない。


「ようは強い感情を向けられたいだけなのではないですか、あなたは」


動揺、する。

図星だから―――ではない。


だけど、全く違うだなんて言えない。


そう、理解してしまう。


嫉妬は、だって、きっと、憎しみに似たなにかで、だから、


「いいのですよ? それでも。うふふ。望むのなら(わたくし)は、殺したいほどあなたを憎んで(あいして)さしあげましょうか」

「それ、は、」


彼女から向けられる憎しみ―――きっと煮えたぎるほどに熱烈で、痛ましくて、そして、だから、だけど、


あ、れ、


えっと、


なにがだめで、わたしは、え、


「あら」


うまくあたまがまわらない、


あい、だとか、にくしみ、だとか、


かのじょからむけられるものを、こばむりゆうなんてどこに……?


「―――おやすみなさい」


……―――

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― 新着の感想 ―
[良い点] マゾヒスト、良く言えば総受け…まあ、ピッタリですよね、ええ…。 そして…まさか盛りましたか?会長さん…。想いをわからせるターンが来てしまうのでは…。
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