188 仲睦まじい双子ロリと一方的で(3)
誤字報告ありがとうございます。
「……ぁ」
30分が終わるのが体感として分かる。
それは彼女もまた同じだったようで、ぱちぱちと瞬いて残念そうに口を尖らせた。
「つまらないです」
今日の終わりを察知した少女のような仏頂面。
そして彼女は私の腕を拘束する縄跳びをはらりと解く。
縄跳びというのは不思議なもので、捕らわれた側がああだこうだと抵抗しても驚くほど解けなかったり、逆に外からは案外あっさりと解けてしまったりする。摩擦力の神秘。
解放されたところで、なんとかかんとか呼吸と服装を整える。
一足先にリルカの効果がなくなったはずなのに『おあずけ』っぱなしだったおねえちゃんもぷはっと息を吐きだして、ようやくいもうとちゃん空間による緊張感が霧散した。
途中から個室トイレという密閉空間にやってきてからさらに加速した責め苦は、おねえちゃんにとっても恐ろしいものだったらしい。
そんな私たちとは裏腹にいもうとちゃんはあっさりと気を取り直して、にっぱぁ。
「でもかわいかったからゆるしてあげます♡」
「それはありがとう……」
なんともすがすがしそうな彼女に苦笑して、ポンポンと頭をなでてあげる。
上機嫌にすりすりしてくる彼女に誘われるようにおねえちゃんもやってきてなでなでなでなで。
「これにこりたらもうにどとヘンなことはいわないでくださいね?」
「それは……まあ善処するけど」
「ゼンショじゃなくて『ハイ』です」
「はい……」
幼女に圧殺される女子高生の図。
我がことながら悲惨すぎる。
というか『ヘンなこと』ってね。
「あんまりおかしなことを言ってるつもりはないんだけどねぇ」
「『ふたりとも』だなんていみがわかりません」
「『ふたり』でゆみのおよめさんになるんだよ? わたしたち」
「そ、そうだね」
お嫁さん、というのはいったんさておいて。
ふたりにとって『ふたり』であることはそれだけ重要なことらしい。
彼女たちにはそもそも相談にあたっての前提条件が当てはまらなさそうだ。
というか。
「あのさ。ふたりって、ほかの人のことはどう思ってるの?」
「どうとも?」
「どうでもいいです♪」
尋ねてみればあまりにもあっさりと返ってきた無関心。
もっと詳しく訊いてみることにする。
「どうでもいいって言うけどさ。その、ほかの人と一緒にいるのは嫌だとか、そういうのも思わないの?」
「おもわないよ」
「ゆみかちゃんはわたしたちをすてないんですよね?」
「そりゃあそうだけど」
そもそも捨てるだのどうだのと図に乗るつもりもない。
だけどふたりが望む限りふたりを求め続けることに違いはない。
いやもちろん、ふたりが拒んだからと言って簡単に諦められるとも思わないし、そもふたりに本気で拒まれてあげるつもりもないけど。
いずれにせよ、どうやら彼女たちは本気らしい。
自分たちさえよければそれでいい、という感じだろうか。
それとも単に幼さ故なのか……都合がいいのか悪いのかも分からない。
少なくとも相談できそうもないということだけはわかる。いや、まあこんなふたりに頼るというのも大人げない話ではあるけど。
「ほかのかたたちはそうではないんですか?」
「まあ、そうだね」
「ゆみ、こまってるの?」
「というか悩んでるんだ」
「あらあら♡ だったらいっそそんなひとたちなんてぜんいんすててしまえばいいじゃないですか♪」
「ぼ、暴論だね」
それも本当に全く関心も興味もないがゆえの暴論だ。
悩むくらいなら切り捨てろ、だなんて彼女らしくはあるけど―――
「そんなことより、ゆみかちゃん♪」
ぐい、と引き寄せられて笑みに喰らわれる。
かと思えば今度は反対から、
「いま、わたしたちといるんだよ?」
矢継ぎ早に次々と、
「どうでもいいですけど、でも、よそみをするのはいけませんよ♡」
まるで競い合うように、ふたりの幼女が私にささやく。
そのうえぐいぐいと押し付けられるカード……もしかしてこれ延長戦を期待されているんだろうか。
なんて。
「ねぇねぇ、つぎはふたりで、だよね?」
「ゆみかちゃん、はやくおなかをくくってください♡」
まったく考えるまでもなく、彼女たちはそれを求めているのだ。
ヘタに刺激してしまったのが悪かったのかもしれない。
いつもよりずっと積極的で、そして一方的にぐいぐいくる。
なるほどこの様子を見ると、『ふたりとも』よりも『ふたり』というのも理解できる。
タッグというか一心同体というか、ふたりで揃っているのがどこまでも自然に思えるのだ。
相乗効果で破壊力も二乗倍だよ。
なにか少しでも油断したら首をくくることになりそうだよ。
はぁ……とりあえず、腹をくくるとしようかな……ッ!




