167 賢い姉とズルで(3)
毎日更新が途切れた……だと……!?(突然でごめんなさい)
今日もう一話更新するかもしれません。
しないかもしれません。
ユミカちゃん食べ放題コース30分2,500円~
なんてねははは。
笑い事じゃないんだよなぁ……
「―――ごちそうさま」
ぺろりと唇を舐めて姉さんは笑う。
……ご満足いただけようで。
なにせ本当に一時間したんだもの。
今から眠るはずだったのに、むしろ目が冴えて眠れる気がしない。
「なぁにゆみ。あなたはまだ足りないのかしら」
「い、いやもう満足ですはい」
「そんなことないんじゃないかしら」
そんなことないことないんだけどなぁ……
むぎゅっと抱きしめてくる腕の中で縮こまっていると、姉さんはくすくすとからかうように笑う。
「冗談よ」
ちゅ、と耳の後ろに触れるキス。
それからごろんとベッドに一緒に寝転んで、姉さんははぁと吐息した。
「やっぱり、ゆみのしたいことは無理だと思うわね」
「えぇ……」
そんな風に改まって言われるとさすがに落ち込む。
しょんぼりするけど、姉さんは結構本気らしく真剣な表情をしている。
「だって、一時間じゃ全く物足りないんだもの」
「ううむ……」
実体験に基づいているっぽい姉さんの言葉はさすがに無視できない。
姉さんは姉さんだからもちろん私を独り占めしたいと思ってくれているわけで、その当事者の口から物足りないと言われればそうなんだろう。
……あ。
「じゃあ、姉さんはどうすればいいと思う?」
「あら。早速実践ね」
「うん。えへへ」
えらいでしょ、と笑みを向ければにこにこと笑顔で頭を撫でられる。
そして姉さんは言った。
「ゆみが私だけのものになればいいと思うわ」
審議拒否。
もはやそこに相談の余地はなかった。
「だ、だめじゃん……?」
「うふふ。そうね」
そうね、って。
思いっきりはしご外されたんだけどあきれればいいんだろうかこれ。
「言っているじゃない最初から。無理よ」
「うぐぅ」
これは……なんだろう。
絵に描いたはしごじゃないか。
相談するべきだと言った姉さん自身が失敗例を提示してくれて親切だなぁ、とかのんきに思えるわけもない。
「そこをなんとか、こう、考えてみたりとか」
「そうねぇ……じゃあ他の子は見学までならいいわよ」
「うーん」
じゃあ、じゃないんだよ。
それはもうほぼ宣戦布告なんだよ。
「けれど、だからといってすぐにどうこうするつもりはないわよ」
「そう、なの?」
「どうせゆみとは一生一緒にいるんだもの。いろいろなことがあって、嫉妬も喧嘩もするだろうけれど、それも楽しそうじゃない」
そう言って笑う姉さんに、なるほどな、とそう思う。
一見強硬派というか過激派な思想に見える姉さんも、案外穏健だったりするわけだ。
サクラちゃんや先輩とも、私はもっと腰を据えて話すべきだったのかもしれない。
「だからゆみもたくさん悩むといいんじゃないかしら。それはきっと、とても普通のことなのよ」
「うん」
ありがとう、と。
言葉の代わりにキスをする。
姉さんは私の頭をなでて、それから身体を起こした。
「だめね。目が冴えちゃって眠れないわ」
「あ、実は私も」
「うふふ。ホットミルクでも飲みましょうか」
姉さんに手を引かれてベッドを降りる。
「……今日は、夜更かししたいな」
「いいわね。付き合うわ、ゆみ」
一時間で物足りないのは、私も同じだった。
みんなともそうだ。
それはひどくシンプルな感情で、あれこれと言葉を重ねる必要もなかった。
どんなに考えても、悩んでも、これを忘れてはいけないんだろうと、そう思う。
どんな結論になったとしても、これだけは何度だって伝えよう。




