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010 友達想いの親友と

甘さ控えめのときは二度更新することにしました。

これもあんま甘くねえですが。


誤字報告ありがとうございます。

闇を抱えていそうな保健室登校少女と床を同じくしたせいか、なんだかあまり気分が乗らない。

まだ何人か買いたいと目星をつけている人はいるんだけど、すこしお休みにしようかなとそんなことを思っていた。


ら。


下校時間になって早々、私は親友に人気(ひとけ)のない校舎裏に連れてこられていた。

なにがどうしたのかと問いかけてもまったく答えてくれなかった彼女は、校舎裏につくなり私を睨みつけてくる。


「ユミ。アンタには幻滅したわ!」

「とつぜんどうしたの」


まったく本当にとつぜんだ。

これまで品行方正とはいかないまでもそこそこ善人として生きてきた自負がある。

唯一無二と言ってもいいくらいの親友に幻滅される心当たりなんて―――


「どうしたのー?じゃ、ないッ!アンタが手当たり次第に女の子と援交してるってワタシ知ってるんだから!」


―――まあ、あるよね。

ほんと、どこからバレてるんだろう。

頭を抱えていると、彼女はダンッ!と足を踏み鳴らした。


「ほんとキモい!サイテー!親友だと思ってたのにそんなヘンタイだったなんて!」


ひどい言われようだった。

さすがにちょっと傷つく。


けど、ねえ。


「キモチワルイ!もうアンタなんて顔も」

「あのさあ」


彼女の腕を掴んで校舎の壁に押しつければ、びくっと身体を震わせながらもギンッ!と私を睨みつけてくる。

『アンタなんかに負けないっ(キリッ)』みたいな副音声が聞こえてきそうな感じだけど、抵抗という抵抗はあんまりしてこない。ソフトテニスやってるんだから私よりは筋力ありそうなものだけど。


そんなことを思いつつ、なんだか面白いから悪ノリしてみる。

私より少しだけ背の高い彼女を強引に跪かせる。

ぎり、と歯噛みする彼女を、私はにやぁと悪役っぽい笑みを浮かべて見下すように見下ろす。


「そんなこと言って、そっちも期待してるんじゃないの」

「はあ!?だれがッ」

「じゃあなんでこんなところに呼び出したわけ?」

「それは、」


案の定彼女はいとも簡単に言葉を失って視線を逸らす。

これくらいは反論してくれた方が面白いのに。

そんなところが直情的な彼女らしくて、かわいい。


にやにやを深めて、私は彼女に顔を近づけた。

がんばって顔を背けようとする彼女だけど、ちらちらと視線が向くのは抑えられないみたいだった。


「それにわざわざ放課後まで待ってさあ。これってただ私を責めるだけなら別にいらないよね」

「ちがう、べつに、ワタシは、」


嫌々と逃れようとする彼女の下顎を掴みぐいっとこちらを向かせた。

そしてもう片方の手でリルカをちらつかせれば、彼女の目線は面白いように食いついた。


「わざわざこんな人気(ひとけ)のないところで、しかも途中で時間切れにならないように放課後まで待って……どっちが変態なのかなぁ、ねえ」

「だからっ、そんなんじゃ、」

「いいよ?べつに。親友とヤるのも面白そうだし―――買ってあげよっか?」


リルカを差し出せば、彼女はごくりと唾を飲み込んだ。

はくはくと空気を噛んで、それから震える手でポケットからスマホを取り出す。


「わ、ワタシはただ、アンタがこれ以上他の女の子に手を出したりしないようにって、だから、」

「あはは。そういう(てい)ね」

「テイなんかじゃっ」

「いいから。ヤるの?ヤらないの?早く決めないと、後輩ちゃんにでも頼んじゃおうかなー」

「ッ!」


後輩ちゃんを引き合いに出したとたんに彼女はスマホをリルカに押し当ててきた。

これも嫉妬というんだろうか。

おろかわいい。


ぴぴ、と鳴ったところで、とりあえず悪ノリ終了。

顔を真っ赤に瞳はうるうるとやる気満々らしい彼女には悪いけど、さすがに友達を金で買ってあんなことやこんなことをやろうとは思わない。


私はにっこり笑って彼女を立たせた。

さっきまでの雰囲気とあまりにも違うからか戸惑っている彼女の背をぽんぽんと叩く。


「なんちゃって。私べつにそんな手を出したりしないから」

「え、え、」

「後輩ちゃんともねるねるねっただけだし」

「それなんかの隠語……?」

「いやそのまま文字通り」


すっかり脳みそがピンク色に染まっているらしい親友に、私はお金で人を買っても(今のところは)手を出したりなんてしていないということを伝える。

すると彼女はとんでもない勘違いに真っ赤になってうずくまってしまう。

ぽんぽんと頭をなでると恨みがましい視線で睨み上げられたので、私はからかうように彼女にささやいた。


「そんなにシたかった?」

「~~~~ッ!ばかぁ!ばーか!へんたい!もうしらない!」


小学生みたいな捨て台詞を残して逃げていく彼女を見送る。

彼女は足が速いから追いつけないんだ。


それにしても、もともと買うつもりはなかったんだけど、あんがい面白い展開になってしまった。

これはまた今度シチュエーション考えて話を持ち掛けてみたいかもしれない。


そんなふうに思っていたら、またリルカを使うモチベーションが湧いてきた。

さすが親友は、私のツボっていうのをよく抑えている。


またいつかお礼でもしてあげよう。

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