2.王都へ
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丁度いいというべきなのか、タイミングが悪いというべきなのか、王都への護衛依頼はばっちり存在していて、俺たちはそれを受けて王都を目指すことにした。
ちなみに、白虎は冒険者証の発効一つにも大はしゃぎしていたことをつけ加えておく。パーティー名は、別に被ってても問題はないらしいので、あの時と同じワンダラーズとしておいた。
まぁ、俺が抜けた前島さんたちが同じパーティー名を使っているとは限らないので、被っているとは限らないのだが。
「今回はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
そう言って挨拶するのは、今回護衛をする、ジーナさんという魔法研究者だ。白虎は商人あたりを護衛して馬車に相乗りしたかったようだが、その護衛依頼は定員オーバーらしく、護衛依頼に空き員がいたのが、こっちのジーナさんの方の依頼だったのだ。ジーナさんはただの魔法研究者なので、移動は徒歩である。
「それにしてもBランクの人が護衛依頼を受けてくれるなんてラッキーだわ。本当に護衛料はあのままでいいの?」
「あぁ、王都に移動するついでで受けた依頼だからな。護衛料に関してはついででしかない」
本当は、俺自身護衛の経験がないから多くもらうのは恐縮するという理由なのだが、それを馬鹿正直に言っては相手を不安がらせるだけなので黙っておく。
「それにしても、あなたのパーティーメンバーの人はすごいわね。まるで魔力が服を着て歩いているみたいな濃密な魔力を纏っているわ。とても、DランクとFランクとは思えないわ」
そりゃ、こいつら精神体だから、例えのその通り魔力が服着て歩いてる状態だわな。
「そういうのわかるのか?」
「えぇ、私は魔力感知がとても得意なの。それを任されて遺跡の魔力調査とかも何度もしたこともあるのよ」
そう言って得意げに胸を張るジーナさん。割と胸がでかいから、胸が強調されることになって目のやり場に困る。
「とりあえず、出発するか。途中、トルトリを経由して王都に向かう道程だ。時間にして4日ぐらいになるな」
「4日はちょっと早くないかなー……。私は5日ぐらいかけて行きたいんだけど……」
「まぁ、そのあたりは旅しながら調整しよう。じゃあ、行くぞ」
本音を言えば、夏休みが終わる前にせめて合流だけはしたいから、俺としては早く進みたいのだが、依頼者を蔑ろにするわけにはいかないからな。
ていうか、護衛依頼受けたのは失敗かもしれん。いや、今さら言うことではないが。
※ ※ ※ ※
「平和だねー」
「平和だな」
王都までの道程1日目。2時間ぐらい歩いたところで白虎が唐突にそう口にした。
「ここはいっちょ、ゴブリンやら盗賊やらが襲撃してくるところでしょ」
「そんな物騒なこと口にしないでください。平和でいいじゃないですか」
白虎の不平に対してジーナさんが常識的なツッコミを入れる。
まぁ、正直俺も白虎に同意なところはある。何事もなくただ歩くだけと言うのは軽くストレスだ。ここで、モンスターやら盗賊やらが出てきてストレス発散したいという気持ちはある。あ、やっぱ盗賊は遠慮して欲しいかな。まだ殺すのは慣れない。
「そうは言ってもさー」
白虎が退屈そうにブツブツと呟く。
「ところで、ビャッコさん、とおっしゃいましたっけ? 貴女のその濃密な魔力はどこで身につけたのですか? Fランクとは思えない魔力量なんですけど。師匠はどなたですか?」
ジーナさんも退屈になってきたのか、それからしばらく歩いてから白虎に対して雑談を持ちかける。
「師匠なんていないよ、全部独学。むしろ私たちがご主人の師匠だよ」
「え? でも、ハヤトさんはBランクですよね?」
「冒険者ランクで強さを判断するのは愚かなことだよ。私はこの年まで冒険者にならなかった。ご主人は早くになった。それだけの違いさ」
「そのご主人という呼び方も気になるのですけど……。一体ご三方はどう言った関係なんですか?」
「ご主人と下僕。もしくは弟子と師匠」
「おい」
自分のことを下僕と呼んだ白虎に思わずツッコミを入れる。
「下僕なのに師匠ってどういう関係ですか。ますます分からないんですけど……」
「読んでその通りなんだけどねぇ……」
確かに読んでその通りではあるんだが、聞いてる方はわけわかめだよな。
下僕で師匠ってどう言う関係だよ、と
「日も高くなってまいりました。そろそろ休憩と食事にいたしましょう」
青龍が天を仰ぎながら、そう提案する。確かにそろそろ腹が減ってきた頃合いだ。
「はぁー、このひたすらに硬くて塩辛いジャーキーと石みたいに硬いパン苦手なんですよねー。贅沢は言ってられませんが」
ジーナさんは適当に腰を下ろすと、荷物ぶくろから保存食と思しきものを取り出す。さて、こっちも保存食を食うわけだが──、
「ほら、ご主人早く出して」
「わかったわかった」
こっちの保存食は地球で買い込んだ水だけで食べれるアルファ米に、インスタントの味噌汁だ。熱湯は魔法で出せるから沸かすために鍋を出す必要もない。
「では、いただきます」
「「いただきます」」
準備ができたので、三人で食べ始める。そして、背中から感じる視線。うん、分かってるよ。こっちの保存食気になるよな。だが、ここは心を鬼にして無視する。
どう考えてもこの保存食はオーバーテクノロジーだからな。おいそれと広めるわけにはいかない。じゃあ、そもそも食べるなと言いたいだろうが、それはそれである。やっぱ食う以上は美味しいもんが食いたい。
「ちょっと、ハヤトさんなんですかそれ?」
好奇心を抑えられなかったのか、ジーナさんが俺に尋ねてくる。
「保存食だが?」
「いやいや、水でふやかして食べれるそっちの穀物はともかく、そっちの汁物はどう考えても保存食じゃないでしょ! お湯を入れるだけで食べれるってそんなの聞いたこともないですよ!」
うーん、やっぱりめんどくさいことになった。これだったら、アイテムボックスを利用して、温かい食事を作って入れてた方がマシだったか?
でもなぁ、まだこの世界にアイテムボックスの技能があるかどうか判明してないんだよなぁ。その状況でいきなり温かい飯を出すのはリスクが高い。
レトルトだったら嵩張らないし、擬態した袋から出しても違和感ないから、そうしているのだが。
「まぁまぁ、そんなことより食べてみます? ジーナさんの分も用意できますよ?」
俺が取った作戦はとりあえずご馳走して誤魔化そう作戦だ。
「いただきます!」
ジーナさんは食い入るようにレトルトを見ていたので、食いつくとは思っていた。
すぐにアルファ米とインスタント味噌汁を用意して、ジーナさんに振る舞う。
「うぅ……汁物は初めて食べる味ですけど、とても美味しいです。この穀物も汁物によくあって美味しいです」
そりゃ、日本企業の変態とも言える企業努力の結果生み出された保存食だからな、不味いわけがない。まぁ、俺的にはやっぱりちゃんと作ったご飯や味噌汁の方が美味いとは思うのだが。
「そりゃよかった。備蓄も余裕がありますし、今後道中でも食べます?」
「ご馳走になります!」
目を輝かせて光速で頷くジーナさん。うん、なんとか誤魔化せたかな?




