1.異変解決
ここで、書き溜め分は終了です。
以降は週2ぐらいのペースで投稿したいと思います。
一応月、木投稿を目標とするつもりですが、できない場合は割烹かここでお知らせします。
夢の中に入った俺は、いつものあの空間に来ていた。
テーブルがあり、椅子があり、アドミンがありのあの空間である。
「やぁ、よく来たね、真宮寺勇人君。ま、かけたまえ」
そういうアドミンの表情は明るい。以前のイライラした表情とは別物で晴れやかな顔をしている。
「その顔を見ればわかるけど、今回の世界修復は成功ってことでいいのか?」
「あぁ、もうこれ以上ないぐらいの解決だったよ真宮寺勇人君。あの一帯を騒がせていた女郎蜘蛛の退治はおろか、真宮寺家を苦しめていた陰陽剣の継承までするとはね。後者は別に必須ではなかったけど、点数で例えるなら100点満点中120点ってところだ。本当によくやってくれた」
そう言うアドミンはニッコニコだ。嬉しそうにカップを掲げ俺にまくし立てる。
「さて、では君のお待ちかねのご褒美だ。チート能力の付与を行おうか。前に言っていた、次元を渡る能力でいいのかい?」
「あぁ、それがいい。それでよろしく頼む」
「オッケー。それじゃちょっと失礼して」
アドミンはテーブルから身を乗り出すと俺に触れて何やらぶつぶつと呟き出す。
「これでよしっと。これで君は一度行った場所なら次元を無視して移動出来るようになった。具体的には、次元の門を出現させて、そこを通ることで目的の場所に移動することができるようになる。名付けるなら、ポータルという能力名になるか」
「待て、一度行った場所って言ったな? 俺が行ったことのない場所は無理なのか?」
アドミンの言で気になったのはそこだ。俺と前島さんの出身世界が同じならばいいが、別の地球という可能性もある。それを考えると一度行った場所しか行けないと言うのは非常に困る。俺と前島さんの世界が違ったら、前島さんは俺の世界で孤立してしまうことになる。それでは中世ファンタジーの世界にそのまま残すのとなんら変わりはない。
「正確には、記憶に残っている場所だね。つまるところ、君がその場所の記憶を持ってさえいればいいのさ。方法はあるだろう?」
アドミンにそう言われ俺は思い当たる節があった。古代魔法にメモリーリードという魔法がある。それを使って前島さんの記憶を読み取れば前島さんの世界に転移することも可能ということだろう。
「ちなみに、この能力を持ってしても、君の従者たちを転移させることは出来ないよ。彼女らの転移には変わらずあの水晶が必要だ。それを忘れないように」
アドミンはそう言って言葉を切ると、一つ咳払いをしてから言葉を続ける。
「さて、では次の話をするとしよう。君にも準備があるだろうし、次の異世界転移は1ヶ月後としようか」
「今回もそうだったが、割と期間空くんだな。準備なんてそれほど時間かかるわけでもないのに、そんなに長くなくても……」
「今回は、特に時間がかかるだろう? 私としてはあの世界は終わったものとして諦めてるが君はそうじゃないだろうしな。ま、そういう人間だからこそ、世界を救うのにふさわしいのだし。ぶっちゃけもう少し長くても私としては問題ないから、時間制限を気にする必要はないよ。全てが終わってから声をかけよう」
「──」
そう言われて俺は言葉に詰まった。完全に見透かされていた。
確かに、俺はあの世界に関しては不完全燃焼もいいとこだ。ノーマンさんは死に、前島さん、アンジェ王女は置いてけぼりだ。あの世界にいって成せたことは何一つない。
「完全にバレてるか」
「シミュレートの結果だよ、真宮寺勇人君。君の性格を考えればそうするだろう、とね。ま、やれるだけやってみたまえ。ひょっとしたら奇跡が起きるかも知れないぞ?」
「奇跡、ね」
奇跡と言いつつまるっきりそれを信じていなさそうなアドミン。出来ないことをやろうとしている俺を嘲笑しているという感じではない。本当にそんなことができるなら見てみたい、そんな期待を持った目だ。まぁ、アドミンとしてもダメ元での言葉なのだろう。俺も同じだ。ダメ元。ダメ元だ。出来たならよし、出来なくても仕方ない。そんな心持ちで行くしかない。
「分かった。それじゃ奇跡ってやつを起こしてみせるよ。もし起こせたならなんか特典でも欲しいところだな」
「あっはっは。言うねぇ君も。じゃあ、もしなし得たのなら、渡し損ねたチート能力をその時にもう一度あげようかな。ついでに、ボーナスとして何か物品もあげよう」
「おや、一度に二つはダメなんじゃなかったのか?」
「チート2つがダメなんであって物品ならギリギリセーフってところさ。というか、そうでもないと、君にアイテムボックスと水晶の2つを渡せてないよ」
なるほど、そういう手ならありなのか。最初はサービスかと思ったがあれでも割とキリギリだったのか。
「分かった。じゃあ期待しておいてくれよ」
「期待しないで待ってるさ。さて、それじゃそろそろ目覚めの時間だ。おはよう真宮寺勇人君」
毎度のそのアドミンのお決まりの台詞を聞きながら、俺の意識は覚醒していった。
第6回カクヨムWeb小説コンテストの方にエントリーしました。
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