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16.女郎蜘蛛 1

「行くぞ」


 俺がそう言うと、全員で角を曲がり土蜘蛛たちと相対する。

 そこはかなり広けた場所になっていた。天井は見えないほど高く、広さは球場ぐらいはありそうな広大な広間だ。

 そこに埋め尽くさんばかりの蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛。そして、一番奥に一際でかい蜘蛛が巣を作ってそこに陣取っていた。

 というか、蜘蛛というのは正確じゃないな。上半身人間、下半身蜘蛛となっている。ぶっちゃけモンスターで例えるならアラクネだ。巨大なアラクネがそこにはいた。胴体の後ろの方は卵巣だろうか、それに類するものがくっついているのでメスの個体なのは間違い無いだろう。こいつが女郎蜘蛛か。


「よもや、人の子が妾を退治しに来ようとは」


 推定女郎蜘蛛を観察していると、やにわに喋り出す女郎蜘蛛。まぁ、偵察用の土蜘蛛も喋れたしこいつも喋れてもなんの不思議もないが。


「お前に恨みはないが、俺の目的のために死んでもらうぞ」


 俺はそう言い放つと、陰剣を抜き放つ。魔力消費してしまうから陰陽剣は温存だ。


「愚かな、オスの身で妾の前に立ちはだかろうとは」


 そう言って、女郎蜘蛛の瞳が妖しく真紅に光る。だが──、


「効くかよ! 『ファイヤーボール』」


 気合とともに駆け出し、火球の魔法を放つ。洞窟内ではあるがここは冗談抜きで広いし燃焼による酸素不足を考慮しなくても問題ないだろう。

 俺の放った火球は、蜘蛛の集団を焼き払い、それが戦闘開始の合図となった。


「トウコツ! 蜘蛛どもを蹂躙しろ。余力があったらデカブツを狩っても構わないぞ!」


「オーケーだ! 暴れさせてもらうぜ!」


「馬鹿な! 貴様らオスであろう!? なぜ妾の魅了が効かぬ!」


 そりゃ、俺は状態異常防止の魔法かけてるし、そもそもこいつら四凶とか四神は性別ないしな。そもそもからして効くはずがない。


「『アシッドクラウド』」


「『ワイドマジック』『トリプレットマジック』『ファイアボム』」


 青龍と白虎も魔法で土蜘蛛に打撃を与える。というか、青龍のやつアシッドクラウドとかえげつない魔法使うな。第六位階の古代魔法なんだが、酸の雲で相手を溶かすという見た目的にもグロテスクな技だ。あと、酸を撒き散らすので環境破壊著しい魔法だ。森とか平原とかではおいそれと使えないやつだ。

 とりあえず、数を減らさないことにはどうにもならない、広範囲魔法をバンバン打って土蜘蛛の数を減らしていく。千代ちゃんは千代ちゃんで刀で一体ずつ始末していっている。千代ちゃんは術とやら使えないのかな? まぁ、単に温存してるだけかもしれないが。


「ええい、忌々しい! 人間如きが、妾の子供たちを!」


 女郎蜘蛛がイラついたのか、動き始める。しかし、その巨体だ、こちらにくるまでは時間がかかる。その間にこちらは数を減らさせてもらう。


(ちょっと、どうして私たち(陰陽剣)を使わないのよ! ねぇ、(陰剣)


(妖怪どもが相手だというのに術ばかり。私たち(陰陽剣)もちゃんと使いなさい! ねぇ、(陽剣)


 俺が魔法ばっかり使ってたら、ご不満なのか悪霊剣どもが喚き立てる。


「そうは言ってもだな。この数を相手にするなら魔法の方がどう考えても効率いいんだよ。大ボス相手にだったら使ってやるよ。ま、大ボスがそれまで残ってればの話だがな」


 しかし、土蜘蛛は倒してはいってるのだが、一向に数が減る様子がない。そこまで大量にいたかな? これが屋外だったらメテオストライク辺りで一網打尽にできるのだが。

 俺はチラと女郎蜘蛛がいた奥の方に目をやる。すると、そこには大量の土蜘蛛の卵があった。今も観察していると卵から土蜘蛛が生まれてはこちらに向かってきていた。

 なるほど、数が減らないように見えたのはこのせいか。しかし、卵の数も有限とは言え、孵化されるのは面倒だな。


「白虎! 奥に土蜘蛛の卵がある、卵のうちに始末してくれ!」


「合点! 『ロングマジック』『ワイドマジック』『ファイアー』」


 白虎はすぐに俺の意を受け取ると、女郎蜘蛛の巣に向かって火炎魔法を放つ。それは女郎蜘蛛巣を焼き切り、そこにあった卵ももろともに焼き払う。


「お、おのれ! 妾の子供達を! 許さん! 許さんぞそこのメスめ!」


 巣を燃やされて怒り狂ったのか、女郎蜘蛛の対象が白虎に向く。

 距離がある状態だが、女郎蜘蛛は何やら人間の上半身の腕を掲げ何か唱え出す。


「妾の呪を受けよ! 『呪殺』」


 女郎蜘蛛の掲げた手の先から真っ黒なモヤのようなものが出現し、白虎に向かって飛びかかる。


「ふむ。『マジックリフレクション』と言いつつ、ヒラリ」


 白虎は魔法反射障壁を貼ったかと思えば、なんということもなしにその黒いもやを避ける。避けるんならなんで障壁貼った。と思ったが、相手のは術という魔法とは違う形態の技術系統だ。確実に反射できるとは思わなかったから避けたってことかな。


「愚かな! 妾の呪から逃れられると思うてか!」


 が、そうは問屋が下さなかったようだ。黒いもやは避けた白虎を確実に追尾してくる。


「おっと、こいつは厄介だね。リムーブカースは使えないし。『アナライズマジック』。ふむ、実態は指向性をもった魔力の塊、と。なら、こうしよっか」


 白虎は色々と呟きながら、黒いもやをひらりひらりとかわしていたが、呟きを終えると立ち止まり、黒いもやに大して右手をつきだす。


「『錬成』」


 白虎がそう唱えると、白虎の右手に触れた黒いもやは雲散霧消した。


「ま、魔力の塊なら無力化するのはワケないってね」


 何をやったのかわからないが、相手の呪殺とやらをこともなげに無効化した白虎。やっぱこいつもチートだな。


「ば、莫迦な! 妾の呪を無効化するだと!? き、貴様何者!?」


「さぁて、何者だろうねぇ」


 白虎は余裕綽々といった感じで、女郎蜘蛛の誰何をのらりくらりとかわす。

 おっと、俺も見てる場合じゃないな、土蜘蛛たちを始末しないと。


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