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3.真宮寺家本邸

「ふぅ、やっとこさ本邸に連れ帰ってこれたでござるよ。あ、そこの二人はここで待ってるでござるよ。ここから先はただの町娘が入れる場所じゃないでござる」


 本邸とやらにつくと千代ちゃんがそう言って、青龍と白虎を排除しようとする。二人は抵抗するかと思ったのだが──、


「わかりました、適当にその辺で時間を潰しておきます」


「オッケー。じゃ、ご主人また後で」


 二人はあっさりと踵を返すと、本邸を後にする。えぇー、そこであっさり引き下がるのかよお前達。というか、一人になるとかちょっと心細──、


(ご安心を、勇人さま。お側にいますよ)


(ちゃーんと、精神体の状態で側にいるからね。安心していいよ)


 一人にされたかと思ったが、すぐに二人から念話が届く。おっと、すぐそばにいてくれてるのか、それなら少しは安心だ。


「さ、行くでござるよ、若様。まずは御母堂にお会いしなければ」


「母親……いるのか」


 そりゃ冷静に考えりゃいるに決まってるのだが、俺と同姓同名ということもあって正直、この真宮寺勇人を羨ましく思ってしまう。俺にはもう両親はいないからな。


「なにを当たり前のことを。本当に大丈夫でござるか、若様?」


「あぁ、大丈夫じゃないが、大丈夫だ」


「イマイチ不安なのでござるが」


 そんなやりとりをしながら本邸の中を歩くと、一つの部屋の前で止まる。


「御母堂。千代です。若様をお連れしました」


「入りなさい」


 言葉と共に、ふすまを開けて共に中に入る。


「来ましたね、三郎。全くこの大事な時に雲隠れするなど──、誰ですか貴方は?」


 その母親の顔を見てまず驚いた。なにせ俺の母親の顔と瓜二つなのだ。俺は母親の顔は記憶にないが、アルバムには載っていた。ゆえに知識として両親の顔は知っているのだが、その顔とそっくりだったのだ。俺と若様がそっくりだからって母親まで似るかね。どういう偶然だこりゃ。

 そして、やはり血の繋がった母親はごまかせなかったようで。


「言っておくけど、俺は無理やり連れてこられただけだからな。俺は最初っから若様じゃないって言ってるのに千代ちゃんが無理やり連れてきただけだからな」


「え? え? え?」


 俺と母親のやりとりを見て、俺と母親を交互に見る千代ちゃん。つーか、やっぱり今まで全部普通に気づいてなかったのか。やっぱこの子アホの子では?


「なるほど、あなたの事情は把握しました。しかし、これは……確かに間違っても無理はないですね。本当にそっくり」


 母親──いい加減名前を知りたい──は、ほぅとため息をつく。親に言わせるほどそんなに似てるのか俺と若様は。


「千代。今すぐもう一度三郎を探しに──、いえ間に合いませんね。ならばこの場は致し方ないでしょう。その方、名をなんと申します?」


「怒るなよ。いいか、怒るなよ? 真宮寺勇人、だ。それが俺の名前だ」


 俺がそう名乗ると、母親の体から怒気が立ち昇る、がそれもすぐに霧散する。


「ふざけて……いるわけではないようですね。顔も同じ、声も同じ、名前まで同じですか。一体あなたは何者なのですか?」


「それは俺も聞きたいね。なんで俺と若様がそんなに似通っているのか」


「ですが、この場は助かると言っていいでしょう。勇人なにがし、とこの場は呼びましょう。勇人なにがし。我が息子三郎の代わりに試しの儀を受けてはいただけないでしょうか」


「え? なんで?」


 確かに、この場に大人しく来たのはその試しの儀とやらに興味があったからだが、自分が受けれるとは思っていなかった。単純にどんなもんかなーとか見れればそれでよかったのだ。まぁ、正体バレしたら、その時点で見れなくなるからそこらへんガバガバ目算だったのは否めないが。


「今から三郎を探していては試しの儀に間に合わないからです。試しの儀は神聖な儀式。分家の者達も一堂に集まり行われる大々的なものです。そこで本家の嫡男が儀式を行わないとなると、分家の者達に示しがつきません。ですので、なんとしても三郎が試しの儀を行う必要があるのです。しかし、それは間に合わない。ならばちょうど良い代わりのものがここにいるではありませんか」


 なるほど、見た目同じ、声同じ。俺は若様の影武者にぴったりってことか。


「なるほど、受ける理由は把握した。しかし、俺が受けちゃっていいものなのか? 万が一認められちゃったりしたらどうするんだ? 代々受け継がれた魔剣なんだろ。 部外者の俺が選ばれたりしちゃったら大問題じゃないか?」


「ほぅ。認められる自信がある、と。それは結構。是非とも陰陽剣に選ばれると良いでしょう。私はそれを咎めませんよ」


「え。いいの?」


「選ばれれば、です。どちらにせよ開祖以来今まで誰も選ばれたことなどないのです。試しの儀、それ自体は儀式として重要な行事ですが、その内容についてはどうでもいいのですよ。むしろ、陰陽剣に選ばれないことを見るための儀式と言ってもいいでしょう。儀式の成否についてはどうでもいいのです」


 なんだろう。母親さんの言葉が凄まじいまでのフラグに聞こえるんだが。え、これ成功しちゃう流れじゃない? 儀式の成否についてはどうでもいいとは言ってるけど、実際に成功したらきっと大騒ぎだろこれ。今ままで成功してなかったってんだから。

 これは成功しないことを祈る儀式になりそうだ。


「では、時間も時間です。試しの儀に参りましょうか。千代。その勇人なにがしを逃してはなりませんよ」


 あれ、俺まだ了承してないんだが、と思う間もなく、千代ちゃんにガシッと腕を掴まれる。強制ですかそうですか。


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