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1.いきなりの襲撃

「よっ……と。今回は珍しく意識が連続してたな」


 俺は独り言を呟きながら、異世界の大地に降りたつ。あたりは森で、ってまた森スタートかよ。さて、早速青龍達を──、


「キシシシシ!」


 思ったら、横あいから生物の気配。俺はすぐさま前方にジャンプしてその場を離れる。


「な、なんだ!?」


 すぐさま反転して、襲ってきた生物を見やる。それは巨大な蜘蛛だった。中型犬ぐらいの大きさはあろうかと言う巨大蜘蛛だ。それが、歯をキシキシと鳴らしながらこちらに近づいてきていた。


「でかっ! これ蜘蛛!? 流石異世界ってことか! 悪いがすぐに終わらせる! 『マジックミサイル』!」


 別に舐めプをしているわけではない、モンスターが相手ならともかく、虫が相手なら第一位階でも十分だと考えたのだ。

 しかし、それは流石に相手を舐めすぎていたようで──、


「キ!」


 蜘蛛はマジックミサイルが直撃し、悲鳴をあげたが、倒れる様子はなかった。チッ、意外としぶといなこいつ。

 そして、俺が一撃で仕留めなかったことで、蜘蛛はどうやら俺を獲物ではなく、対等の敵と認識したようで、蜘蛛が持っている雰囲気が変わった。

 まずいな、相手が蜘蛛となると絶対糸吐き攻撃とかしてくるだろ。この大きさなら間違いない、ならば──、


「キシ!」


 巨大蜘蛛がカチカチと前足を鳴らし始める、何かの前兆か? ここは一つ──、


「『リフレクター』!」


 相手の攻撃を反射する障壁を展開する第五位階魔法だ。それを展開すると同時に、蜘蛛から糸攻撃が飛んできた。よし、予想通り!

 そして、反射した自分の蜘蛛糸に囚われ身動きが取れなくなる蜘蛛。

 よし、今だ。


「『ライトニング』!」


 ホブゴブリンも屠った第四位階の一撃だ。蜘蛛は一瞬ビクッと大きく跳ねると動かなくなった。


「ふぅ、なんとかなったか……」


 転移してきていきなり襲撃とか超焦ったぞおい。

 アドミンめ、転移させるときは安全な場所にしてくれないと困るぞ。今度会ったらそれをちゃんと言っておこう。

 ともあれ、青龍達をさっさと呼んでしまわなければ。


「青龍、白虎、トウコツ。こい」


 呼晶を使って、三人を呼ぶ。前と同じように三本の光の柱が立ち、光がおさまった後には、三人の姿があった。


「ここが新たな異世界ですか」


「よっしゃ、異世界キターーー! ってなんでトウコツがいるのさ! しっしっ、あっち行った! 私の楽しい時間に水を差さないでよ!」


「随分な言い草だなぁ、白虎よ。俺もお前も今はこいつの召喚獣ってわけだ。仲良くしようや。ま、とりあえず俺は実体化してる趣味はねーんで姿消しとくがな」


 三者三様の反応を示す三人。ていうか、白虎とトウコツ知り合いだったのか。まぁ、同じ中国の神格だし、知り合いだったとしても驚かないが。そして、トウコツは相変わらず戦闘以外に興味がないようで。


「ちょっとご主人! なんでトウコツがいるのさ! 聞いてないんだけど!」


 白虎が小さな体を膨らしながら、こちらに迫る。


「すまん、言ってなかったな。だがまぁ、召喚契約してるのはこの三人で全部だ。それ以上はいないから安心してくれ」


「うぅー、せっかくの楽しい気分に水を差されたよ。まさか四凶がいるなんて……。ご主人、友人として忠告しておくけど、あいつに決して心を許しちゃダメだかんね! あいつは邪神なんだ。私らみたいなヒトに信仰されてる善神じゃないんだ。契約で縛ってるかもしれないけど、あいつは契約のスキをついて、あくどいことをやりかねない。常にあいつには注意すること! いいね!」


 ずずいっと、こちらを指差しながら顔を近づけてくる白虎。近い近い。


「だ、大丈夫だ。俺もあいつにはちゃんと警戒してる。基本戦闘にしか使わないし、使うつもりもない。使う時もちゃんと命令をして、だ」


「わかってるんならいいけどさ」


 白虎は納得したのか、顔を引っ込める。


「しかし、この空気。なにやら懐かしい感じがします。いえ、私が懐かしいというのも変なのですが、懐かしい感じがします」


 青龍が辺りを見渡しながら、ポツリと呟く。空気が懐かしいってそんなのあるのか。


「確かに、私らに懐かしいってのは変な言葉だね。過去にも存在できるんだから。でも、確かにこの空気は懐かしいって言っていいような空気だね。ご主人。ここは本当に異世界なの?」


 白虎もどうやら同じ感想のようで、俺に真偽を問うてくる。


「俺の意識が連続してるから間違いないはずだ。ただ、アドミンは和風Ⅲ型世界と言ってたな。和風ファンタジーの世界だ、とも」


 俺がそう言うと、白虎のテンションがみるみるうちに減少していく。


「あー……、異世界って言ってもいろんなのあるもんねー……。そうか、中世ファンタジーだけとは限らない、か。この分だとVRゲー世界とか、現代ファンタジー世界とか、乙女ゲー世界とかもありそうだ」


 現代ファンタジー世界とか、俺たちのいる地球と何が違うのかとツッコミたいが、今気落ちしている白虎にツッコミを入れるのは憚られた。


「ま、しゃあない、切り替えて行こう! そのうち、また中世ファンタジー世界が来る可能性もあるもんね! 前は勇者召喚編だったらしいから、今度は神様転生編とかが来るの期待!」


「神様転生って今まさに俺がしてることなんだが」


「気にしない、気にしない! それじゃ張り切って行こう!」


 白虎は空元気を出すと、えいえいおーと自分を元気付ける。


「白虎、勇人様。誰か来ます」


 出たな、青龍の謎センサー。誰か、ってことはモンスターや獣の類じゃなくて人ってことだよな? 俺は非殺傷の魔法をいくつか頭に思い浮かべながら、その人物を待ち構える。


「やーっとみつけたでござるよ、若様。全く、試しの儀をサボるのも大概にして欲しいでござる。見つける某の身にもなって欲しいでござる」


 そう言って、森の奥から出てきたのは、時代錯誤な和服に身を包んだ少女だった。

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