表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/163

8.再び異世界へ

「ヤッホー! 来ちゃった!」


 盆も終わり、夏休みも後半に差しかかってきた頃、突然の来訪者が我が家にやってきた。白虎である。しかも、キャリーケース2つに大型のリュックにとかなりの大荷物である。


「なんだ、その荷物」


「あれ? 聞いてない? 部屋空いてるっていうから今借りてる家引き払ってこっち来ちゃった。別にいいよね、ご主人と下僕なんだから。まぁ私は電子書籍派だし、PCとタブレットがあれば生活できるから、どこで暮らしたっていいんだけどね。あ、部屋どこ? 荷解きしたいんだけど」


「いやいや、それ聞いてないんだが」


 いきなり家に入ろうとする白虎を止める。一体誰が部屋空いてるだなんてことを言い出したのか。って、そんなのは一人しかいないか。


「青龍ー!!」


「はい、お呼びになりましたか?」


「お前の仕業か」


 シュタッと俺の横に参上した青龍を横目で見て、白虎を指差す。


「はい。ですが、彩音様には許可をすでにいただいております。勇人様には事後承諾になってしまって申し訳ありませんが」


「なにそれ聞いてない。ていうか、姉ちゃん許可したのか」


「はい。「ハレムか。我が弟ながら度し難い……」と言っておりましたね。さぁ、白虎こちらです。部屋は用意してあります」


 姉ちゃんなに言ってんの。別に青龍とも白虎ともそういう関係じゃないんだが。俺の困惑をよそに、白虎は青龍と連れ立ってズカズカと家の中に入ってくる。いや、確かにうちの家、割と広くて部屋は余ってるよ? でも、それとこれとは別問題っていうか。


「あーもう。仕方ねぇな。好きにしろ!」


 とはいえ、姉ちゃんの許可まで得てる以上俺にどうこうできるはずもなく。渋々ながら認めるしかなかった。


「へー、机もあるしいいね。ま、今後はここにお世話になるからよろしくー。で、異世界転移はいつ? いつさ?」


 いつ机とかベッドとかが用意されたのかわからない空き部屋に荷物を置くと白虎はキラキラした目でこちらに質問してくる。


「前回の例を見るに準備期間が1ヶ月ぐらいだからそろそろだと思う。俺も異世界行きの準備はすでにしてるからいつでも行けるんだが……。ひょっとして今回もこいつを吹かなきゃならないのか?」


 そう言って、俺は異世界転移の笛をアイテムボックスから取り出す。まぁ、そろそろアドミンと連絡を取りたいとも思っていたし、これを吹くのもいいかもしれない。


「なにそれ?」


「俺に異世界行きを押し付けてきた、自称管理者とやらと連絡をとる笛だな。これを吹いて寝れば、夢の世界でそいつと会うことができる」


 と思う。と心の中で付け加えておく。


「へー。見たところ魔力もなにもないただの笛にしか見えないけど。まぁ、異世界転移なんてさせる存在の渡すものだ、なにかあるんだろうね。夢の世界ってことは夜寝るまでは間があるってことだ。じゃ、歓迎会しよう歓迎会。私が奢るから!」


 自分で自分の歓迎会を開くとかどういうアレなんだろうか。しかも自分のおごりって。まぁ、奢ってくれるといいうなら大人しく奢られてようか。

 その夜はそれはもう豪勢な歓迎会が開かれたと言っておこうか。4等級の牛肉美味しかったです。



   ※ ※ ※ ※ ※


 その夜、寝ついた俺を待っていたのは、例の白い空間だった。


「やぁ、久しぶり真宮寺勇人君」


「また会ったなアドミン。ここに来たってことはそっちの準備はできたってことでいいのか?」

 

 そう言いながら、用意された椅子に腰掛ける。


「あぁ、次に君を送る異世界の選定はすでに済んでいる。すぐにでも行ってもらうわけだが、ちょっと伝えることがあってね、君の夢に入り込ませてもらった」


「伝えること?」


「今から行く異世界のこと……。いや、違うなこれから行く様々な異世界について少し注意事項というか伝達事項をね」


 そこでアドミンは言葉を区切ると、いつものようにティーカップを傾ける。毎回思うが、そのティーカップにはなにが入ってるのか。なんで飲む必要があるのか、色々突っ込みたいことはある。


「君も前回の中世Ⅶ型世界の攻略で気付いたと思うけど。私が君を送る異世界には明確に、いわゆるところの主人公が存在している。君の役割はその主人公を補佐し、主人公の目的を達成することだ。それがひいては世界を救う一手となる」


 そうアドミンから聞いて、俺は真っ先に前島さんの顔を思い浮かべた。あの世界の主人公と言ったら間違いなく前島さんだろうからだ。今頃前島さんどうしてんだろうな。ちゃんとあの世界の言語は覚えられたのだろうか。なんか、思い出すと心配になってきた。


「まぁ、青龍も言ってたけど、前回のはいわゆる勇者召喚の世界ってことだったんだよな? それはわかったけど、それを伝えてどうするんだ? 別に伝えられなくても俺のやることは変わらないと思うが」


「あぁ、普通なら問題ない。主人公がいようと君がやることは変わらないだろう。その点は心配してない。問題は主人公がいない(・・・・・・・)世界の場合だ。これから君を送る世界はそういう世界になる」


「んー……、でもそれでもやることは変わらないような。俺の赴くままに動けばいいんだろ? まぁ、主人公がいないってなると指針を決めるのがちょっと大変かなと思うけど」


「まぁ、正確には……。あ、いやこれは伝えるべきではないか。まぁ、その言葉を聞けて安心したよ。一応注意喚起だけはしておこうと思った次第でね」


 なんか、言いかけられると気になるんだが。ともかく、次の世界はいわゆる主人公がいない世界で、そこで俺の赴くままに頑張ればいいってだけだな。

 あれ? それっていわゆる俺が主人公になるってことなのでは?


「なぁ、アドミン……」


「さ、では今から君を送るは和風Ⅲ型世界。妖怪や化生の跋扈する和風ファンタジーな世界だ。時代としては戦国時代になるな。では頑張ってくれたまえ」


「いや、ちょっとま……」


 言い終わるより前に、俺の世界は黒く塗りつぶされる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ