6.白虎加入
「嘘だ……。きっとセンスライをごまかす何かが……」
「あると思います? それは貴方自身がよーく知っているでしょうに」
「うぅーー」
次には唸り出す白虎さん。俺たちの一連の会話が全て真実と知って項垂れているようだが、ふとがばっと起きて捲し立てる。
「いや、待っておかしい! 百歩譲って勇人君が異世界転移するのはいい! いやよくないけど、そこは納得しよう! でも、青龍! お前が転移するのは不可能だ! 知っているはずだ。我らガイアの化身は単独での次元跳躍は不可能だと! ははは、見破ったぞ。やはり嘘だったんだ! やっぱりセンスライを誤魔化してたな!」
白虎さんは勝ち誇ったように笑うが、青龍は慌てず騒がず俺に一言、
「勇人様」
「おう」
俺もこの状況でなにをすればいいかというのは分かっている。アイテムボックスから呼晶を取り出すと、白虎さんの前に出す。
「白虎。これを鑑定してみなさい」
「鑑定~? 随分と古臭い魔法を使わせるんだね。まぁ、それで君らの気が済むならしてやるよー。『アプレイザル』。っっっっっっっっっ!!!!??」
鑑定魔法を唱えるとほぼ同時、両手でガシッと呼晶を掴んで食い入るようにみる。
「こ、ここここここここれは!?」
「まぁ、それを説明するには長いんだが……」
「そ、その呼晶とやら、くれ! い、いや売ってくれ! 是非とも研究して同じものを開発したい! ってはっ! そうか、そういうことか! これで青龍は次元を渡ったんだな!?」
青龍の方をきっと睨んで、早口で言葉を捲し立てる。さっきからテンションずっと上がりっぱなしで疲れないのだろうかこの人。
「はい、そういうことです。納得しましたか、白虎?」
「……ということは、異世界行きってマジもんのマジ……?」
「はい、マジモンのマジです」
「……」
「……」
「異世界転移キターーーーーーーー!!」
そういうや否や、拳を振り上げガッツポーズをとる白虎さん。またしてもテンション上がってるなこの人。血管切れたりしないか心配。
「異世界転移だよ、異世界転移! まさか自分がそれを体験できるとは! あ、さっきはごめんね馬鹿にしたりして。でもさ、しょうがないじゃん。私が切望してた異世界転移を軽々しく出来るかのように語られちゃったらさ。辛辣にもなっちゃうよね。うん、私は悪くない。いやー、それにしても異世界行きかー。やっぱ定番のナーロッパあたりなのかな? いやはや楽しみだ。生ゴブリンとかも見れるんだよね。途中で襲われてる馬車があって助けるって定番だよね。助ける相手が貴族か商人か王族かで色々パターンがあるけど、私的には商人が一番安パイかなーって思うわけよ。王族や貴族は面倒だし、商人だったら金銭的な援助が一番後腐れなく得られそうだしね。あと、冒険者ギルド、冒険者ギルドね。定番中の定番のランク制と新人に絡む先輩冒険者。定番だよねー。いいなー、そのイベントとかも消化済みなんでしょ。私もリアルに体験したい! そんでもって、魔力量を計る水晶を壊しちゃったりなんかして。あーあと、冒険者といえばドラゴンもみてみたいな、地裏にいるドラゴンはなんか違うんだよねー。やっぱマジもんのファンタジードラゴンを見てみたいというか。あと、エルフに獣人! こっちは地裏にもいないから是非ともお目にかかりたい。あとねあとね──」
「落ち着きなさい白虎。それ以上騒ぐとサニティをかけますよ」
今まで以上のテンションでマシンガントークをかます白虎さん。その熱意に思わず引いてしまった俺は悪くないだろう。その白虎さんに冷や水を浴びせかけるかのように、冷静に突っ込む青龍。
「あ、ごめん。思わず興奮しちゃった。いや、しかし私もついに異世界行きか。興奮でどうにかなっちゃいそうだよ」
そういうが、白虎さんの顔は笑顔で満ち溢れとても嬉しそうだった。
「えーっと、それじゃ俺について来てくれるってことでいいのか?」
「勿論だよ! こっちからお願いしたいぐらいだ! じゃあ、早速契約しようか契約!」
そう言うなり、白虎さんは自分の持ってた可愛らしいポーチからカッターナイフを取り出す。ってこの流れはもしかして。
「さぁ、血を! 血を寄越すんだ! それで契約は完了だ。あ、私は青龍と同じ従属契約でいいよ。異世界に行けるんだったらそれぐらい安いものさ!」
「白虎、落ち着きなさいと言ったはずです。その物言いではまるで吸血鬼ですよ。では、勇人様失礼しますね」
青龍が白虎さんからカッターナイフを取り上げると、俺の指をちょっと刺す。そして、あふれた血を白虎さんがパクッと加える。
うおっ、びっくりした。ていうか、中学生ぐらいの見た目の女の子に指を加えてもらうってなんか背徳感が……。
「よーし、これで契約完了! これからよろしくねご主人!」
「あぁ、こちらこそよろしく白虎」
お互い、ご主人、白虎、と呼び合って契約はここに完了した。




