3.魔導協会登録
「はい、承りました。では、勇人さんの位階など詳しいことは本部の通達を待ってと言うことで。ではようこそ真宮寺勇人さん、魔法使いの世界へ」
あの後、白石に連れられるまま白石の家にお邪魔して、宗玄さんに事情を話した。宗玄さんはネチネチとたっぷり嫌味を言われたが、登録自体はすんなりと受け入れられた。と言うか、宗玄さんのやったことって台帳らしきものに名前書いただけなんだがそれでいいのだろうか? それともなんか特殊なスクロールだったりするのか?
「あぁ、よろしく頼む」
「それにしてももう少し早く決断して欲しかったですねぇ。でしたら、もう少しあなたに便宜を図ってあげることも出来たのですが」
「うっ、それはもう謝っただろ……」
「分かっていますよ。ただの愚痴です。おかげで、私もようやく本部に本当のことを報告出来ますよ。ただ、問題は──」
「問題? 何かあるのか? トウコツの死体がないのが問題とか?」
「いえ、そっちの方はどうとでもなるので問題ありません。召喚術で使役しているのでしたっけ。前例は一切ありませんが、召喚術の大家として知られる青木さんのお弟子さんと言うことであれば、トウコツを使役していることにそれほど不思議がられないでしょう。問題は別のことです」
青木って、青龍のことだよな? アイツ召喚術の大家だったのか。白石は召喚術なんてニッチなとか言ってたけど。と言うか、アイツの専門って召喚術だったのか。そう言えば、俺青龍のこといまだにあんまりよく知らないな。ちょっと一度じっくり話し合った方がいいのかもしれん。
「別のことって?」
「問題は、勇人君。君が第七位階の古代魔法を使えると言うことですよ。私も妹の報告が嘘とは思いませんが、正直信じられない思いです。ここ数百年、第六位階を超えて古代魔法を行使した例はありません。ゆえに、勇人君の魔導協会での扱いがどうなるのか未知数なのです」
いや、第十位階まで使えるぞ、とは言えないのでそこは黙っておく。
「第六位階を超えるって、そんなに難しい物なのか?」
「難しいとかそう言うレベルではありませんよ。大昔には人間にも使えていた技術だから習得が不可能とまでは言いませんが、本来ならすでに遺失している技術なのです。誰か第七以上の魔法を知っている存在に教えてもらわなければ習得は不可能なのです」
そういって、こちらをじっと見る宗玄さん。これは……、この物言いは気づいているな。
「ま、ご安心ください。そこのあたりの詳細は私は追求しません。藪を突いて蛇を出したくないですしね。ただ、魔導協会からはその追求がくるかもしれません。追求が来たとき、あなたはどうしますかね?」
草原さんにそう言われ身を固くする俺。しかし、そんな俺を見て宗玄さんはふっと笑う。
「とまぁ、少し脅しましたが多分大丈夫でしょう」
「は?」
「今の魔導協会に本気で古代魔法を研究してる一派なんていませんしね。いても相当の変わり者です。その変わり者があなたに接触するかも知れませんが、魔導協会全体としてはあなたへの追求は限りなく少なくなるでしょう。ま、それにこの地域の魔法使いの世話は私の役目です。私の目の届くところで下手な騒ぎは起こさせませんよ」
「脅かすなよ。ちょっとまじで警戒したぞ」
「すいません。これも一つの意趣返しということで」
そういって、宗玄さんはにこやかに笑う。この人の笑顔ってなんていうか胡散臭いんだよなぁ。この笑顔の裏に何があるやら。
「ま、何にせよ。登録ありがとうございます。これで私も大手を振ってあなたに仕事を割り当てれますよ」
「あー、やっぱり最近仕事がなかったのって、トウコツ絡みの関係?」
「ですね。報告からこっち、ちょっと本部の方の監視の目が強かったのもので。あなたに不用意に接触してはあなたの存在を勘繰られかねないと思ったのです」
「重ね重ね迷惑を……」
「ま、そのかけた迷惑分だけ働いてもらいましょうかね。とは言え、今はあなたに回せる仕事はないんですけどね。また、仕事が入ったら連絡しますよ。というわけで番号とアドレスの交換をしましょうか」
「あぁ、分かった」
そう言われ、携帯を取り出すと番号とアドレスを互いに交換する。
「はい、確かに。では、今日はこれまでですね。またお会いしましょう勇人君」
そういって宗玄さんと別れ、家路についた。
残りは青葉かー。まぁ、アイツが一番安パイだろうからそこは安心だが。
取りあえず、登録の方は秒で終わってしまったが後はどうしよう。青龍からの連絡待ちでいいのかね?
やることもないし、型の練習でもしながらアイツを待つかな。




