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21.勇者育成計画

 次の朝、俺たちはパーティーでクエストボードの前に立っていた。

 ちなみに、クエストを受けるにあたってアンジェ王女とアンナリーナさんには普通の服に着替えてもらった。流石にあの見るからに上級階級ですと言わんばかりの服とメイド服は問題があった。

 というか、今まで誰もツッコミがなかったのはなぜなのだろうか。ギルマスもガン無視だったしな。まぁ、ツッコまれないほうがこちらとしてはありがたいのだが。

 そして、昨日のオーガ討伐報酬とスタンピードの報酬で金に余裕ができたので、防具の方を買おうとしたのだが、どうも防具というのは基本的に体にフィットするようにオーダーメイドで作るようなものらしく、注文してすぐにできると言った代物ではなかった。

 というわけで、防具は注文中でノーマンさん以外は防具なしである。

 まぁ、俺とアンジェ王女は後衛だし、青龍はそもそも攻撃が当たらないので防具の優先度は低いのだが、他の前衛二人とその他一人が不安である。

 前述したとおりノーマンさんは防具があるので大丈夫だが、前島さんとアンナリーナさんが不安要素だ。そこらへんを考えるとできるだけ安全マージンを確保した依頼を受けるのがいいか。

 幸い俺のランクに引っ張られて、パーティーランクがBあるので受ける依頼には困らないのが救いだ。


「ま、さしあたってはこれだな」


 そう言って俺は一つの依頼書を指差す。そこにあるのは以前も受けた常時依頼のランクEのゴブリン退治だ。


「またゴブリン退治? もうちょっと上の方がいいんじゃ?」


 前島さんが横からのぞき込みながらそう言うが、俺としてはこれ以外ないと思ってる。


「そうは言うがこれより上となるとオーク退治になるし、初見の敵をいきなり相手するのは危険がある。前島さんもまだゴブリンは楽勝ってレベルじゃないし、何よりアンジェやアンナリーナさんがいるからな。ノーマンさんもそれでいいか?」


 俺はそう言いながらノーマンさんの方を見やる。


「まぁ、ひ……お嬢様がいる以上。無理に背伸びした依頼を受けるわけにもいかないからな」


 この人相変わらず姫様って言いかけるな。まぁ、それが言い慣れてるからだろうし、その気持ちは俺にもわかるが。


「じゃ、早速出かけるか」



    ※ ※ ※ ※ ※


「勇人様、10時の方向です」


 相変わらず便利すぎる青龍の索敵でゴブリンを見つけ出す。しかし、今回青龍は見つけるだけで手出しは一切しないと宣言している。

 まぁ、鍛えるのが目的だからな。青龍が手出ししたら意味がない。

 俺? 俺も基本的には手を出すつもりはないな。今回は他の面子がどれだけ戦えるから見る目的もあるからな。まぁ、危ない時は遠慮なく手を出すつもりだが。


「確かにゴブリンだ……。どうしてあの距離から分かるんだ」


 青龍の言うとおりにゴブリンが3体いたことに驚くノーマンさん。

 うん驚くよな。俺も驚いた。気配察知とかそんなレベルの索敵術じゃないだろ。絶対なんかの魔法使ってると思うんだけど、俺が教えてもらった魔法の中にそう言うのってないんだよな。サーチアラームは敵意を感知するからこっちを認識してない存在には効果ないし。


「まぁ、その不思議は置いておいて。どういう陣形でいく?」


 この中で一番戦闘経験がありそうなノーマンさんに尋ねる。まぁ、この人も騎士だから冒険者的な戦いは出来ないかもしれないが、戦闘の経験があると言うだけでだいぶ違う。俺もそんなに実戦経験あるわけじゃないしな。こう言うのはできる人に任せるに限る。


「私が前に出る。姫様は後衛から援護を。サクラ殿はどういう戦い方をするのか私にはわからない。ゆえに遊撃として動いてくれ」


「えっと、それはつまり自由にやれってこと? そう言うの逆に困るんだけど」


 前島さんがノーマンさんに対して文句を垂れる。


「とりあえず剣技スキルを鍛える感じで動けばいいんじゃないか? 光魔法の方は使えるなら使ってもいいと思うけど」


 俺がそう言った瞬間、アンジェ王女一行の視線が一斉に前島さんに集中する。それはもう、ギロッて擬音がするかのように一斉に。


「な、なんだ? 俺変なこと言ったか?」


「いえ、なんでもありません……。なんでも」


 アンジェ王女がそう言うが、今の反応はどう見てもなんでもなくはないだろ。どういうことか気になるが、今は目の前のゴブリンだ。


「えっと、じゃあ剣技スキル上げる感じで動くとするわ。光魔法の方はまだ使えるか分からないから保留で」


 前島さんはそう言うと腰から剣を抜き準備をする。うん、前よりは多少様になってるな。少なくともへっぴり腰ではなくなってる。


「いくぞ!」


 ノーマンさんが掛け声をかけて飛び出す。続いて前島さんも飛び出しゴブリンに肉薄する。


「すべての力の源よ。燃え盛る赤き炎よ。我が手に集いて矢となせ! ファイヤーアロー!」


 そして、後方からアンジェ王女の魔法が炸裂する。ファイヤーアローか、俺にはないレパートリーの魔法だな。四属性魔法ってことは他の属性のアロー魔法も使えるのかな。

 ファイヤーアローがゴブリンに着弾すると同時に、ノーマンさんがゴブリンに一太刀を浴びせる。ゴブリンは血を吹き出して絶命する。その横で、前島さんも剣による一撃でゴブリンにダメージを与える。が、浅い。やっぱ思い切りがまだちゃんと出来てない感じか。王女様護衛してた時はちゃんとできてたと思うんだが、自分から攻撃しにいくのとではまた違うのだろうか。


「ふっ!」


 しかし、前島さんは慌てず第二撃を繰り出す。丁度最初斬ったのと合わせてX字になるようにゴブリンを切り裂き、ゴブリンは絶命する。おぉーやるじゃん。


「すべての力の源よ。猛き力の大地よ。我が手に集いて矢となせ! ストーンアロー!」


 そして、最後の一体にアンジェ王女の魔法がクリーンヒットし戦闘は終了した。詠唱ってある程度パターンが決まってるんだな。同じ系統の魔法だからかな。


「お疲れ様。ゴブリンレベルならどうとでもなる感じだな」


「でも、これこっちが先制できてるからってのもあると思う。不意打ちみたいな感じになってるし」


 前島さんがそう指摘してくる。


「なるほど、そう言われればそうだな。じゃあ、今度は発見からやってみるか?」


「いや、そうは言ったけどしばらくはこのままで行きたいかなーって……。ほら、光魔法の練習もしないとだし」


「まぁ、それも一理あるか。じゃあ、次は光魔法練習しつつやる感じで行くか」


「それでお願い」


 そんな感じで、ひたすらゴブリンを見つけては狩りを繰り返し、なんとなく連携も取れ始めたあたりで時間も時間になってきた。

 前島さんもある程度光魔法がサマになってきたようで、今は魔法と剣とを組み合わせて使うやり方を考えてきているようだ。

 ある程度訓練できたところで、帰路に着くが帰路に着くところで問題が起こった。

 街道を歩いていると、突然青龍が俺たち全員の前に出て魔法を唱える。


「『ミサイルプロテクション』!」


 同時に、脇の林から一斉に矢が飛び出す。が、それらは俺たちに届く前にすべて推力を失って地面にバラバラと落ちる。

 ミサイルプロテクション、第六位階の飛び道具を無効化する古代魔法だ。

 これは盗賊の類か? しかし、こうなるなら俺がサーチアラーム使っておくべきだったな。青龍に魔法を使わせてしまった。


「何者です」


 青龍が誰何すると、林から10人ぐらいの人数が出てくる。


「なんだぁ今のは? なんで矢が途中で落ちてやがる?」


 出てきたのは、いかにもな山賊という風体、ではなく小綺麗にした山賊風の男たちだった。

 山賊の格好をしているが明らかに山賊ではない。身綺麗すぎるのだ。山賊だったらもっと汚い格好をしてしかるべきだ。とするとこいつらは──、


「刺客か」


 俺がそう一言呟くと、王女一行と前島さんが身を固くする。

 ま、これぐらいの展開は覚悟はしてたけどな。

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