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20.スタンピードの結果

「…………」


 俺たちはギルドに戻るなりギルドマスターの部屋に連行された。

 そこでギルマスと対面しているのだが、ギルマスは渋面を浮かべて黙っているだけで何もいう事はなかった。いい加減黙ったままの睨み合いは勘弁なのだが。


「あの。ギルドマスター。何か言ってくれないとこっちもわからないんだが」


 痺れを切らして俺から切り出す。


「あぁ、すまん。こちらとしてはよくもやってくれたなと言うべきか、よくぞやってくれたと言うべきなのか迷っていてな」


 よくもやってくれたとかひどいなおい。いや、言わんとすることは分かるが。強すぎる力を見せたせいで扱いに困ると言った感じだろう。


「とりあえず良い方から解決しようか。今回はスタンピードをほぼ被害なく収めてくれて助かった。ギルドマスターとして礼を言おう」


 そう言って頭を下げるギルマス。うんまぁ、それはいいんだが。


「で、悪い方は? 大方予想はつくけどな」


「……正直なところお前さんの扱いを決めかねてると言ったところだ。ぶっちゃけて聞くが、あの大魔法を街に当てて壊滅させる事はできるか?」


「いや、そんなもん可能か不可能かで聞かれたら可能だとしか言いようがないが。まぁ、あれは俺も多大な魔力を消費するんで打てて一発だ」


 本当は二発打てるが、二発打ったら魔力がスッカラカンになるので、安全マージンをとる意味でも一発のみだ。別にウソついてるわけじゃないぞ。


「そうか、一発だけか……」


 そう言って再び考え込むギルマス。まぁ、青龍にやらせたら一発どころか無限発打てるんだが、それは言わぬが花だろう。ていうか、言ったら確実にもっとややこしいことになる。


「とりあえず、お前さんはランクをBに上げる。ギルドマスター権限であげられるランクとしては最大だ」


 F、DときてBか。二階級特進が二連続とか俺は二度死んだのかな? どっかのスパイじゃあるまいし。


「だが、あげるのはハヤトだけだ。他のメンバーはそのままだ」


 青龍はあげてもいいんじゃねーかな、とは思うが青龍は今回全く活躍してないからな。前島さん達も残党狩りで大した活躍したわけじゃないし。


「まぁ、上げてくれるって言うなら遠慮なく受け取るが。それは縛り付けたいって意図でいいのか?」


「そう言う意図がないわけでもないが、純粋に功績を評価してのことだ。流石にあの規模のスタンピードを実質一人で解決してランクが上がらないとかありえないからな」


 まぁ、それもそうか。というかスタンピードを一人で解決ってそれ英雄の所業じゃね? 自分で言うのも何だが。勇者形無しだな。

 ていうか前島さんってあんまり勇者らしくないよな。まぁ、意に沿わぬ召喚された勇者だから仕方ない部分もあるが。


「最後に確認だが」


 ギルマスはいかつい顔をさらに厳つくして、俺の方を睨みつける。


「あの大魔法は一発しか打てない。その認識でいいんだな?」


「あぁ、今のところ(余力の関係を考えれば)一発だけだ」


 カッコ内は言ってないが、嘘は言ってない。二発打ったら一気にカカシになるからな。二発打つには青龍の介護が必須になる。俺自身余程のことがない限り第十位階魔法は二発撃たないだろう。そういう意味じゃ一発だけというのは決して嘘ではない。

 まぁ、今後魔力が成長すれば分からないから、予防線は張っているが。


「分かった。もう行っていいぞ。報酬はカウンターで受け取ってくれ」


 ギルマスはそれだけ言うと、手元の書類に目を通し始める。とりあえず、もういいとのことなので、ギルマスの部屋を辞去し、一階のカウンターで報酬を受け取ることにする。


「ワンダラーズのハヤトさんにはBランクカードをお渡しします。ワンダラーズの皆様には参加報酬と解決報酬として合わせて金貨18枚となっております」


 1000枚を山分けなのに、ずいぶんきっちりした額だな。まぁ、分割しやすくてこっちとしてはありがたいが。

 ていうか、都市壊滅の恐れがあった依頼なのに、ずいぶんとしょっぱい報酬だな。まぁ、他の冒険者としてはほとんど何もせずに金貨18枚だから美味しい依頼なのかもしれないが、俺としては魔力半分近く消費してこれだからな。ぶっちゃけあんまり割りに合ってない。オーガ二体倒したらあっという間に超える金額だしな。


「あの、金額にご不満があるような顔してらっしゃいますが、ハヤトさんが討伐したオーガなんてこの周辺ではほとんど出ませんし、山分けとはいえこれだけの報酬はそうそうないんですよ?」


 そんな俺の内心を見抜いたのか、受付嬢がたしなめるように言った。

 む。顔に出てたか。ていうか、この人よく見たら俺が最初に依頼報告したのと同じ人だな。そりゃオーガのことも覚えてるか。


「それはすまなかったな。冒険者にはなりたてで適正な報酬に関してはよく知らないからな」


「ええ、そうでしょうね。ですので、その辺りの金銭感覚はおいおい身につけてくださいね」


 受付嬢はそれだけ言うと、「次の方ー」と言い、次の受付作業に入り出した。向こうもこちらもこれ以上は用がないので、さっさとカウンターを去ってパーティーメンバーと合流することにする。


「で、こっからどうするの?」


 合流するなり、前島さんが聞いてくる。


「んー。路銀稼ぎは割と達成された感じはあるしな。あ、まずは今回の報酬の分配をしておくな」


「勇人様。私の分は不要ですよ。私の分はパーティーの共有資金にしてください」


 青龍はそう言って頑として受け取らなかった。まぁ今でこそこうして実体を持っているが、その実俺の使い魔だからな。使い魔に給料が発生するかは確かに微妙なところではある。

 とりあえず、青龍以外の4人に金貨3枚。共有資金として金貨3枚をプールしておくことにする。


「私たちはほぼ何もしていないのだがな……」


 ノーマンさん始め、王女一行は受け取る際微妙な顔をしていたが、やはり先立つ物は必要なのか不承不承受け取っていた。


「やたっ、これで金貨4枚。着実にお金が溜まっていくわー」


 そんな中、前島さんだけは嬉しそうだ。まぁ、まとまった金が入ればその分俺からの独立も早くなるだろうからな。前島さんの場合それにプラスして言語を覚えると言う障害が立ちはだかるが。


「で、次何するかだけど。とりあえずはみんなのランク上げと修行かな。俺だけランク高いってのもバランス悪いからな」


「うっ、修行……、修行かぁ」


 そう言って嫌そうな顔をする前島さん。


「言っておくけど、一番修行が必要なのは前島さんだからな? 俺も近接戦闘に関しては人のこと言えないが、近接スキル持ちなんだからそれ鍛えなきゃダメだろ」


「うっ……」


 俺が指摘するとさらに嫌そうな顔をしてこちらを睨む。睨んだって修行はキャンセルしてやんないぞ。


「修行、修行ですか。具体的にはどのような?」


 アンジェ王女が俺に尋ねる。


「ま、そりゃ実戦に勝る修行はないってね。討伐関係の依頼を中心にうけていくぞ。今日はもう遅いから明日からだけどな」


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